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千葉真一さんと日本の武士──新田真剣佑さん、眞栄田郷敦さんのご結婚を祝して

千葉真一さんのご子息、新田真剣佑さんと眞栄田郷敦さんが、ほぼ同時にご結婚!
おめでたいことである。 そして、非常に感慨深い。

千葉さんといえば、柳生十兵衛や服部半蔵などを、気迫を込めて演じられ、多くの人の心をつかんだ、古今無双の名俳優だった。

私が千葉さんと直接、お目にかかったのは柳生新陰流を通してである。
千葉さんは、若い役者さん達に本物の日本の剣術を学んでもらいたい、という志をもち、柳生新陰流の兵法を知ろうとされていた。

ハリウッド映画にも出演された大スターの千葉さん。だが、アメリカで見た光景は意外なものだった。
剣をテーマにした映画を撮った時、ハリウッドのスター達は千葉さんの前で、慣れない正座などを試みながら、必死に教えをこうたという。日本の心、精神を学びたい、と。

千葉さんは、日本人こそが世界で一流の役者となり、日本の武士の心を伝えねばならない、と深く感じられたようだ。

しかし、その当時、真剣佑さんと郷敦さんはまだ小さな子供だった。
2006年くらいの話である。
千葉さんの高い志は、様々な事情でうまく形にはならなかった。

それでも、千葉さんの柳生新陰流や柳生十兵衛への思いは熱く、翌2007年には柳生十兵衛生誕400年祭を奈良の柳生で盛大に祝うこととなる。
千葉さんは、その春の柳生さくら祭というイベントに、東京から駆けつけて下さった。
ちょうどこの時、大河ドラマに出演されていて、かなりお忙しいご様子だったが、私がお願いすると、二つ返事で行きます!とおっしゃった。
予算も全く足りない中、よくお越しいただけたと思う。

お祭りでは、柳生新陰流の演武も行なった。大人の先生方や稽古者だけでなく、柳生中学の生徒達も袋竹刀で型を演じた。
千葉さんにはその後、トークショーのような形でお話いただいたが、中学生と話をされる時の表情やお姿から、本当に子どもや若者がお好きなのだなあ、と感じた。

イベントを観ていた一般の方も、少し話に参加するコーナーがあり、あるオジサマが語り出した。
昔の父親はもっと強かった。今の男達はどうかと思う。
かなり強い語気で主張されていたので、千葉さんのお話相手を務めていた私は、どうしようかと焦った。
ところが、千葉さんは全く動じない。

焦るどころか、マイクを持って大きな声で応えられた。
その通りですよ、お父さん。皆さん、そうですよね?
千葉さんは観客の皆さんにも呼びかけた。
父親というのは、子どもを守らなければならない。子どものために死ねる。そうですよね?

今思えば、千葉さんの心の中には幼い真剣佑さん、郷敦さんのことがあったのだと思う。そして、長女の樹里さんのこと。
すでに千葉さんは60代だったが、まだまだ元気に頑張って子ども達を一人前に育てなければならない。そういう強い意思をもっておられたのだろう。

千葉さんは本当に武士のような方だった。武士の中でも戦国武将のような人だった。
『影の軍団』などで服部半蔵を演じられていたが、できれば江戸時代のフィクションではなく、戦国時代の本物の服部半蔵を演じて欲しかった。今思えば、「鬼半蔵」と呼ばれた二代目服部半蔵正成が、ぴったりだ。

「鬼半蔵」はいつも命がけであった。主君のため、領民のため、妻子のためならば、いつでも死ねる。そういう武士だった。千葉さんも、普通では考えられないようなアクションにチャレンジし、命がけで仕事をされていた。

そんな千葉さんの熱い心と、いつも、何事にも真剣に取り組まれたご姿勢は、真剣佑さんと郷敦さんに受け継がれていると感じる。

「日本の武士の心」というのは、簡単に伝えられるものではない。日本人ですら忘れかけている中、世界の人々に広く理解される日など来るのだろうかと、気が遠くなる。
しかし、千葉真一さんは、日本の武士の何か本質的なもの、大事なものを表していた人物だったと思う。

いくら世代が変わっても、そうしたものが完全に失われることはない。
私達も、千葉さんのように勇気をもって、大胆に、真剣に人生を歩んでいきたいものである。

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