なぜ、一青窈の「ハナミズキ」は平成で最も歌われたのか。

平成が終わる。そんな中、平成で最も歌われたランキングなるものが発表された。それは誰にとっても意外なランキングだった。(第一興商と通信カラオケDAM調べ)

なんと、安室奈美恵やモーニング娘。など並み居る人気アーティストを差し置いて一青窈(ひととよう)の「ハナミズキ」(2004年)が堂々のトップを獲得した。

他にトップテン入りした楽曲をみてみてもどうやら「売れた曲=歌われた曲」というわけではなさそうだ。たしかに一度聞いたら忘れないメロディーは歌い上げたくなるし、聴くと心が落ち着くような印象を受ける。それでも「ハナミズキ」が平成という時代で、こんなにも来る日も来る日も歌われ続けたのだろうか。なぜ他の歌ではなかったのか。

ここで歌詞をみてみよう。

歌詞へ(外部リンク

そう、歌詞のほとんどが意味不明なのである。「君と好きな人が100年先も続きますように」とサビにあるので、結婚式ソングの定番なんて言われてもいるが、歌詞を見ても、はっきりと理解しづらい部分も多い。

気になって過去の彼女のインタビュー記事を読んでみた。どうやらこの歌は、米国の史上最悪のテロ事件「9.11」の直後に書かれ、人類の平和への願いが込められたものらしい。そして、彼女の別離した両親(特に父親)への想いも含まれているとも示唆されている。実に複雑難解な歌詞である。

なぜここまでわかりづらい歌詞が平成で最も歌われることになったのだろうか。世界的にみてもよくわからない現象だろう。米国のカラオケランキングがあったらみてみたい。もっと愛だの恋だの私だのお金だのを歌った歌詞のオンパレードな気がする。はたして、カラオケで歌う彼女たちはどんな想いを乗せてハナミズキするのか。何に心が動かされるのだろうか。

その答えは、歌詞の「誤認」にある。そもそものつくられた歌詞の意図を越えて、曲が一人歩きをして「この歌は私のためかもしれない」という誤認こそが彼女たちの人生とクロスオーバーして、歌い続けられた。結婚式や子どもが生まれた時、自分の心が折れたり、傷ついたとき、大事なひとができたとき。大小様々なライフイベントのなかで、ハナミズキは彼女たちの心に咲き続けた。

一青窈さんに誤認を呼び起こすための戦略があったわけではないだろう。この歌詞のもつ余白性、余韻によって「私のための歌」という誤認を生み出すことになり、歌が歌われていった。おそらく、平成の後であってもこの平和を祈った歌は100年先も様々な人から愛され続けるだろう。僕も祈ろう。君と好きな歌が100年先も続きますように。

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