7:扁桃炎の話(2)

急性扁桃炎になったこの時はコロナ禍の入口に立った時で、耳鼻科もパーテーションやカーテンが付けられて受付スタッフさんも全員ゴーグルとマスクを着けており、吸入ネブライザーは中止されてた。
発熱するには最悪のタイミングだったけど、逆に発熱外来の制限等がかけられることもなかったのですぐに診てもらえた。
そして先生はサラッと
「今流行りのヘンな病気じゃないから大丈夫」
と安心もさせてくれた。

朝一番に行く気力なんてなかったので、1時間くらいかかる点滴を受けていたら昼休みに入ってしまった。患者が帰ってすっかり静かになったのに、診察を終えた先生が処置室まで様子を見に来てくれた。
「少し楽になりました〜」と言ったら
「あぁ、良かった…」

この場面は一生忘れない。
もう恋だよ…!

多少先生が年上かも知れないけど大して年齢差はなかったと思う、でもこちらはすっぴんで髪ボサボサでかろうじてシャワーだけ浴びて行ったボロッボロのおばさんで(あぁ恥ずかしい…)と思うくらいの気力はあった。
先生の言い方が、義務として見に来た人の棒読みとかむだに明るくて軽いとかではなく、心から「良かった」と言ってくれているようなジェントルな優しい言い方で、精神的には3割治った。

ただ、帰った瞬間から現実に引き戻されたどころか地獄だった。
痛みが激痛だった。
帰り道に何とかコンビニに寄って食糧を確保したけど、鎮痛剤が聞いていても痛みは完全には消えないし、薬が切れた途端に激痛が戻って来る。
食事どころか水分を飲んでも痛いから飲食は地獄だし、起きてるだけで唾を飲むから痛い。
薬を飲んで気を失うように寝るしかない。
目が覚めた瞬間に恐る恐る唾を飲んで激痛が走って絶望感に襲われる。
特に夜中は本気で気がふれそうになったし、
これならもうコロしてくれ
と本気で思った。
もっと苦痛な状況を体験している方には「甘い」と叱られるかも知れないけど、自分にはそれくらいキツかった。

なので翌日もフラフラで通院した。つづく。