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新聞社で展覧会を作る仕事って?

こんにちは。採用Gの田中です。

読売新聞では、巨人戦を筆頭に長年、多数のスポーツ事業や、エンターテインメントなどを手がけてきました。近年は事業の多角化も進み、収益の面でもますます大事になってきています。

今回は、読売新聞のエンタメ分野を一手に引き受ける、「事業局」の代表的な仕事のひとつである、「展覧会」運営についてご紹介したいと思います。

特別展「毒」ができるまで

ミュージカルやアニメ、西洋絵画と趣味の引き出しが多い高橋さんです

 2021年に入社された事業局・ミュージアム事業部の高橋薫(たかはし・かおる)さんです。現在、展覧会の運営を手がける部署にいらっしゃいます。美術館はもちろんですが、元々ミュージカルが大好きで、大学時代もミュージカルのサークルで活動していたそうです。
 就職先として、読売新聞を選んだ理由は何でしょうか?

「野球部のマネジャーをしたり、ミュージカルのサークルでは、のこぎりで大道具を作っていたりと、人を楽しませる場を裏方として支えるのが好きだったんです。読売新聞が、いろんなジャンルのエンタメを手がけていると知って、志望しました」(高橋さん)

 現在は恐竜や昆虫などの科学系や、人気マンガや映画などをテーマとした展覧会の担当です。最近手がけた大きな仕事のひとつが、国立科学博物館、読売新聞、フジテレビジョンが主催する特別展「毒」(会期:2022年11月1日~23年2月19日、場所:国立科学博物館)です。実は、ひとつの展覧会の企画から、開催までは数年かかることもざらだそう。「毒展」も高橋さんの入社前から動き出していた企画です。博物館や研究者の皆さんがアイデアを温め、事業局の皆さんと協働して形にしていきました。

 茨城県つくば市で約2か月に一度のペースで行われる、研究者の皆さんとの展示内容の具体的な検討を行う打ち合わせに参加することから、高橋さんの仕事がスタートしました。当初は、「何を言ってるのか、さっぱり理解できない」という場面も多かったそうですが、発言を必死にメモし、追いついていきました。

「例えば、毒蛇だけを集めた展覧会などは、珍しくありません。しかし、人間って、思った以上に、毒物に囲まれているんです。利用方法や服用する量によって、体に有害だったり、むしろ良い効果があったり、毒物をめぐる意外な側面を知ってもらいたいと思いました。また、主なお客さんは、ファミリー層ですから、刺激的な内容になりすぎないような注意も必要です。」(高橋さん)

 実際に足を運んで頂きたいので、詳しい展示内容はご紹介しませんが、一口に「毒」と言っても、切り口は様々です。毒をもつ生物、生物の進化と毒、人間が毒を用いてきた歴史など、5つのコーナーにわけて展示を工夫することになりました。一瞬、ドキッとするようなテーマですが、必ずしも生命にとってマイナスの効果だけというわけではありません。時に有用ともなる毒の持つ様々な側面を紹介しています。また、「これも毒だったのか」という意外な発見もあると思います。

 展示内容が決まると、図面に配置を落とし、展示物の搬入です。一般に,
搬入の時期は、事業局の担当者は大忙し!で、夜中までかかることも多いそうなのですが、特別展「毒」に関してはスムーズに終了。ちなみに、時間がかかるときは、図面通りに配置してみた際に、順路が狭く感じたり、展示物が見にくい位置にあったり、といった理由で微調整に追われるからだそうです。

 ところで、プロとして展示のコツはありますか?

「私たちとしては、見やすさとか、展示内容の充実に目が行きますが、会場側としては『混雑させない』ということに気を配りますので、そのバランスを探っていくことになります。実は、展覧会が始まってからも、微調整を繰り返しているんですよ!」(高橋さん)

 確かに、展示が充実していても、混雑してよく見えなかったり、見終えて出るまでにあまりに時間がかかったり、ということがあれば、不満が残りますよね。こうした事態を避けるため、例えば、事前に解説映像の長さなど、人が足を止める時間を綿密に計算して編集しているほか、展覧会が始まってからも、展示物同士の距離など、滞留の状況をみながら、細かく調整しているのだそうです。

地道な作業も

 展覧会担当には、様々な仕事があります。例えば、音声ガイドの作成です。「毒」の音声ガイドには、人気声優の中村悠一さんにご登場頂きました。この起用にも狙いがあって、話題性があり、声優やアニメのファン層にも展覧会をアピールできます。ちなみに、有料のアプリをダウンロードすることで、会場外でも聞くことが可能です。

 会場で販売する図録についても、掲載するイラストの発注など、編集会社と一緒に制作をリード、時に執筆する先生方をサポートしたり、お尻を叩いてスケジュール管理をしたりするのが担当者の仕事です。凝った装丁の美しい図録ですが、掲載する資料も膨大なので、完成までには地道な作業が必要になります。

「毒」の図録。素敵な装丁ですが、確認作業は大変です

 「新聞社には豊富に資料が残っているので、図録に載せる研究者の写真を社内で用意することもあります。ただ、ご本人がお亡くなりになっていると、ご遺族を探して許可を頂いたりする必要があるんです」(高橋さん)

 時には、連絡先を探すのすら大変なケースも。家族連れでにぎわう展覧会も、支えているのは細かい事務作業や綿密な下準備のようです。

会場で初日を迎える


 22年11月の開幕初日。国立科学博物館には、開場前から約50人の行列ができました。もちろん、高橋さんも会場で初日を迎えました。やはり、直接、来場者の反応を目にすると、感動もひとしお。熱心に展示に見入る来場者の姿に、努力が報われた気持ちでいっぱいになったそうです。 最近は、SNSなどのチェックも欠かせません。ツイッターにも好意的な意見があふれていました。
 

会場内の様子です。実際の展示内容はぜひ会場でご覧ください!

「会場には、蛇が好きな人、キノコが好きな人、人類史が好きな人と、いろんな方がいらっしゃっています。色々な方にこの展覧会に関心を持って頂いたなと思います」(高橋さん)

高橋さん、事業局の仕事の醍醐味は、どんなところでしょう?

「どこに次の仕事のチャンスが落ちているか、分からないのが面白いところだと思います。自分の趣味や息抜きが、仕事のアイデアにつながることも多いです」(高橋さん)

 ところで、コロナ禍で停滞していたマティスの展覧会の企画も動き出して、高橋さんも担当することになりました。西洋絵画のご担当は、初めてなので、高橋さんも気合が入っているようです。
 フランスの巨匠、アンリ・マティスの展覧会は、2024年2月から、国立新美術館で開催予定です。たくさんのお客さんの来場が予想されます。ご期待ください!

漫画の「原画展」、広がっています

 最後に、展覧会の最近のトレンドも、ちょっとご紹介します。それは、出版社さんと協力して実現する、人気漫画の原画展です。原画そのもの管理に関しては、出版社さんが担当しますが、新聞社ならでは強みを生かせる場面があります。たとえば、現在、全国巡回中の「連載完結記念 ゴールデンカムイ展」では、展覧会のタイミングに併せて、読売新聞文化部の記者が、作者の野田サトルさんにインタビュー。前、中、後編と3回に分けた長尺記事では、野田さんが作品を描いたきっかけやキャラクターへの思い入れを熱く語り、ファンの間で大きな話題となりました。

「原画自体は、西洋絵画などと比べ、サイズが小さいので、全国に巡回がしやすいことが特徴の一つです。そして、圧倒的に若いお客さんが多いです。また収益面でも、関連グッズなどの物販が伸びています」(高橋さん)

 例えば、「ALL TIME BEST 矢沢あい展」も、リアルタイムで読んでいた世代は30~40歳代と見られますが、会場には20代の女性もたくさん訪れているそうです。冨樫義博展 -PUZZLE-も大盛況ですし、こうした漫画の原画展は、今後、ますます増えていきそうですね。   
 読売新聞が関わる展覧会では、皆さんがスムーズに、楽しく展示をみることができるように、高橋さんのような社員たちが、表からは見えない努力を続けています。今回は、普段、あまり表に出ない展覧会の裏側をお見せしました。エンタメ関連の業界で就職を目指す学生さんに、仕事の一端が少しでも伝われば幸いです。
 また、事業局ではスポーツや展覧会に限らず、今後、どんどん新たなエンタメに取り組んでいきますので、機会があれば、またご紹介したいと思います。読売新聞の取り組みをぜひお楽しみに!

#若手のシゴト
                  
                     (取材・文 田中洋一郎)

※肩書は、執筆当時のものです。