Yomogi Ato

彼(夫)と大型猫と暮らすのおとめ座B型30代。小説家になりたいと思いながらも、小説が書…

Yomogi Ato

彼(夫)と大型猫と暮らすのおとめ座B型30代。小説家になりたいと思いながらも、小説が書けずにいる困った人。名前を気分で変えたり、過去記事の誤字、言い回しをたまに修正します。

最近の記事

猫日記 No.1 [命のこと]

小説も書けそうになく、仕事もろくに来なくなり、もうただただ毎日が猫猫猫なので。このまま、ここで猫日記のようなものを始めることにしようかと思う。 猫と暮らし始めてから、シンプルに命というものを身近に感じるようになった。 眠る猫のすぴんすぴんと鳴る鼻息、眠たい子どもの掌そっくりな熱い肉球に安心しきった寝顔。あたたかく信じられないほど柔らかな体。彼には、犬や人にはない、とろんとした甘い柔らかさがある。俊敏に跳んだかと思ったら、走っている途中でおもちゃにつまづいて、すてんと転ぶお

    • 血のつながりがない私たち

      約生後3か月で市松がうちに来たばかりの頃、いかにも子猫!という感じの ちいささや弱弱しさは感じなかったのだけど、今になって写真や動画を見返してみると、やっぱりちゃんとちいさかったのだと分かる。 好き嫌いなくなんでも出したものをよく食べる子だったので体重は倍になり、(最近は、前よりいろいろなことが分かってきて少し選り好みする日もあるけれど)頭の大きさも私の手のひらにちょうどよくおさまるサイズまで大きくなった。 大型猫の子猫というより、成猫に見えないこともないくらいの大きさ

      • 「良い子」じゃない僕のこと

        市松の性格が、ようやく分かってきた。好奇心旺盛だけれど少し遠慮がちで臆病なところがあって、甘え下手。そして、初対面の人間に不思議と物怖じせず、ご挨拶できる人間好きな猫。 大きな声で言わなくても落ち着いた声で「ダメ」と言えば、基本的に同じイタズラをしつこく繰り返すことはない。トイレも、これまで一度も失敗していない。好き嫌いもなく、出したものはなんでもガツガツ食べてくれる。 多分、市松はかなり飼いやすい猫だと思う。年齢を重ねると問題行動が出る場合もあると聞くから、あくまで「今

        • ちいさくて些細な奇跡

          猫というのは、クールで気ままな動物だと聞いていたし、確かに市松にもそういう一面はあるのだけど。その特色は、想像していたよりもずっと薄い。目にものすごくその時々の気持ちや感情が現れるし、鳴き声も場面ごとに違うので、そりゃあ100%正解ではないのだろうけれど、大まかな要求の内容やなにを考えているのかは分かるようになってきた。 こちらが「こう?」「こうじゃない?」と言いながら対応すると、「そうそう」という感じで応じてくれる。時に夫が分からず、私だけが分かったりすると「こいつは分か

        猫日記 No.1 [命のこと]

          世界の仕組みを超えて

          高校の時に、友だちからあるバンドのCDを借りた。今の時代の高校生は、漫画やDVD、CDの貸し借りなんてしないのだろうか。通っていた高校は女子高でかなり厳しくバイトが禁じられていて、さらに私の家は、本以外のものはほとんど「有害だから」という理由で買ってもらえなかったので、友だちがそうして貸してくれる色々がとても有難かった。 彼女に教えてもらったことがきっかけで、私は、そのバンドと出会った。物語のような歌詞、疾走感のあるサウンド、散りばめられた繊細な言葉、時に心の核を突くような

          世界の仕組みを超えて

          運命の呪い

          本気で死のうと思ったことが、過去に4回ある。ふと「死んでしまおうか」と思ったことは、日常的に何度もあるけれど、真剣に死を思って企てたこと、未遂であったけれど実行したのは、大体その4回かなと思う。 それらのいずれかの瞬間に確実に死んでいたら、今の私はいなかったのだと思うと、不思議な感じがする。 もしも私が死んでいたら、夫は別の女の人と暮らしていて、もしかしたら子どももいたかも知れない。市松は、私がネットで見つけたことがきっかけだったので、恐らく彼だけでは、市松と出会うことは

          運命の呪い

          イノセントブラック

           関東が梅雨開けして間もなく、依玲奈が残した鉢植えの薔薇の花が咲いた。つぼみがつき、ふくらみ始めた頃から、もしかして、とは思っていたけれど、その薔薇はベルベッドの布のように滑らかで、しっとりとした黒色の花を咲かせた。  生まれてからずっと気楽な実家暮らしの私と違い、依玲奈は、高校から実家を出て寮に入り、大学に入ってからはひとり暮らしをしていた。  私と依玲奈は、幼なじみ。彼女とは、共通点が少ないはずなのに不思議と気が合った。寮が休みのときや、大学の夏休みの間、依玲奈は、自

          イノセントブラック

          仲夏の大変化

          良い条件のペット可物件が急に空いてバタバタと引っ越しが決まり、同時期に特別な縁を感じた猫との出会いがあり、おまけにたまたま医師のすすめで血液検査を受けたところ、とんでもない異常値が出て、自分に遺伝性の病気が見つかり食事制限を開始した。 こんなにも慌ただしく、変化だらけの6月を過ごしたことは、今までになかった。変化がとても苦手なので、「変化は月に1個」というのが私の中の決まり事なのだけど、今年の6月は、そんなことを言っていられないスピードで、なにもかもがガンガン進んで決まって

          仲夏の大変化

          いくつもの始まりと終わりの先にある選択

          4月の中旬、仕事面で急な契約変更があり猛烈に落ち込んでいたら、ゆっくり味わう間もなく、今年の春が終わってしまった。 1月は行く、2月は逃げる、3月は去るとかいうけれど、今年の私の4月は、幻のように現実味がなく。全体が薄ぼんやりとして、くもり色のフィルターがかかったようにワントーン暗かった。思考の焦点が合っていないような感じで、仕事で書いた文章の誤字脱字もひどく、何度も見直しをしてもミスに気づけず、クライアントにご迷惑をかけてしまい本当に申し訳なかった。 今、住んでいるとこ

          いくつもの始まりと終わりの先にある選択

          弟が、いた頃のことを思い出して

          漫画を読んでいたときに、ふと「こんな弟がいたら楽しそうだな」と、何の気なしに思って。その次の瞬間、背筋が冷たくなった。 私には、今も、この日本のどこかに、血がつながった実の弟がいるはずだ。戸籍上は。 冷酷なことに、私は弟がいたことをほとんど忘れていたのだ。 というのも、弟とは27か28歳頃に一度会ったきり、10年ほど会っていない。多分、この先も、お互い生きて会うことはないと思う。 私と弟が育った家は、表向きはそれなりの家だった。あくまで狭い田舎の世界では、という話。両

          弟が、いた頃のことを思い出して

          猫を飼う人生 

          私の母は、動物が全般嫌いで、というより怖く思っている人で、実家で犬を飼っていた時も、一度も触ったことはなかったし、1メートル以上近づくことすらしなかった。 中でも、母は特に猫を嫌っていて。犬はまだ見ていることができると言っていたけれど、猫はもう視界に入るだけでも悲鳴を上げ、失神しかねないほどだった。 そんな母がいたので、実家で猫を飼うことは、絶対に絶対に無理だった。大人になった今になって考えてみれば、実家はものすごい田舎で、敷地だけは無駄に広かったので、裏庭や農機具置き場

          猫を飼う人生 

          最近のこと

          年始に、3年ほど前から流行っている例の病気に夫婦そろってかかってしまい、良い感じに新しい年をスタートすることができなかった。どうせ始まりがどうであっても、月日が経つごとにうだうだになってしまう私なので、そんなのは言い訳に過ぎないのだけど。 症状は、軽症ながら本当にきつい思いをした。そして、いわゆる、後遺症というやつなのだろうか。ずっと車酔いしているような、なんとも言い難い気持ちの悪さが未だに続いていて、スッキリしない。仕事の依頼も、たまたまここ2週間は少なく、なんだか時間が

          最近のこと

          今日この頃は、当たり前の毎日がなんだか少し楽しい

          昨日の夕方、左を見れば大きな2重の虹が出ていて、右を見れば色づいた綿あめのような夕やけ雲がぽわぽわと空を覆っていた。冬の雨上がりの夕方は、大体決まって空気が冷たく寒い。そんなこと、これまで30年以上生きてきて、しかもその半分は長野県の山奥で育ったのだから、息をすることと同じくらい当たり前に知っていたはずなのに。今年は、あまりに暖かな日が続いていたので、すっかり忘れていて。頬に刺さるように冷たい空気に、つい驚かされてしまった。はきだした息は白く煙って。それもまた、なんだか不思議

          今日この頃は、当たり前の毎日がなんだか少し楽しい

          彼女は大事な友だち

          3年ぶり、くらいにある友だちから連絡がきた。私がまだ仕事を辞めると決める前の夏に大阪で会って、それから連絡もしていなかったし、こういうご時世に突入してしまったため、会うこともなかった。 住む場所も今や車で半日くらいかかる距離になってしまったし、もともと、お互いこまめに連絡を取り合う性格でもなく。けれど、一度会えば何時間でも話しが尽きないという、私にとってかけがえのない友だち。 彼女との出会いは、高校生の頃、同じクラスになったことだった。彼女は、当時から人付き合いが上手な愛

          彼女は大事な友だち

          彼のせいじゃない

          昨晩、彼がため息をつきながら帰って来た。私が何か聞く前に話しはじめたので、よっぽど吐き出したかったのだろう。 「20代の若いお客さんが亡くなった。これで、俺が店長になってから3人目だ」 前の私だったら、彼を積極的に慰めようとするあまり、しつこく優しくしたり、温かいお茶を淹れたり、無理に吐き出させようとして話を聞き出そうとしたり。とにかく、余計なことをあれこれしたと思う。彼のせいじゃないよ、と何度も言ったり。 でも、昨晩の私は、やりすぎないように我慢をした。彼が自分から話

          彼のせいじゃない

          後ろ向き気味に生きながらも、今日も少しだけ顔を上げて薄目で明日を見る

          大したことはないと高をくくっていたら、ぎっくり腰が割と笑えないレベルにまで悪化してしまい、昨日はほぼ一日寝ていた。 今日は、朝、少し無理をしてお弁当を作ってみたところ、痛みがまずいことになり。結局、昼間で横になり、昼から夕方までは休み休みデスクで仕事をした。パソコンデスク用のイスはしっかり固めなタイプなので、案外、横になっている時より痛みを感じない。 こちらは、老け込んだつもりなどあまりないのに。体の方は真面目にきっちり、抜かることなく着実に年を重ねて老化していて。ぼんや

          後ろ向き気味に生きながらも、今日も少しだけ顔を上げて薄目で明日を見る