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いくつもの始まりと終わりの先にある選択

4月の中旬、仕事面で急な契約変更があり猛烈に落ち込んでいたら、ゆっくり味わう間もなく、今年の春が終わってしまった。

1月は行く、2月は逃げる、3月は去るとかいうけれど、今年の私の4月は、幻のように現実味がなく。全体が薄ぼんやりとして、くもり色のフィルターがかかったようにワントーン暗かった。思考の焦点が合っていないような感じで、仕事で書いた文章の誤字脱字もひどく、何度も見直しをしてもミスに気づけず、クライアントにご迷惑をかけてしまい本当に申し訳なかった。

今、住んでいるところは、ちょうど大きな桜の木が近くにあって、窓ガラスいっぱいに映る。ベランダから手を目いっぱい伸ばせば、木の先に触れるくらいの距離。けれど、今年は見事な満開の桜も、瑞々しい碧さを放つ葉桜も、あまり心に響いてこなかった。

先日、引っ越しが決まって、夫と一緒にいよいよ契約という話をするとき、そんなパッとしなかった4月のことを思って、すこし胸が痛んだ。ぼんやりした顔で、なんとなく窓越しに見つめたあの桜が、この部屋で見る最後の桜だったのだと、はっきり気づいた後で、その痛みはさらに強くなった。

もう引退してしまったけど、女優の堀北真希さんのことを私は、かなり好きだった。彼女があるインタビューで話した「始まったら終わる」という言葉が、とにかく全身にぐっと来たのだ。映画やドラマを全部チェックするというタイプのファンではないけれど、彼女のすっとした佇まいと、静かなまなざしは、今でもとても良いものだったなと思い出す。

「始まったら終わる」は、私を納得させたり、支えたり、安心させることが多い。時には、どうしようもなく切なくさせたり、大事なものを手放す日がいつか来ることを怖く感じる原因になることもある。でも、困った時には、1番頼りになる言葉。

全部、いつか終わる。何もかも一度始まったら最後、終わりに向かう。仕事の契約が急に終わったり、好きな人と別れたり、好きだった味のお菓子が終売になったり。そんな大小の始まりと終わりを繰り返すのが、人生なのだろう。生きている意味や価値なんて見当もつかないけれど、それだけは確かに分かる。

住む場所だけでなく、これから仕事の仕方も変えなくてはいけないし、夢に向かう方法も恐らく変えなくてはいけない。ロケットのように飛び出すほどの元気もエネルギーもないけれど。静かに変化の時を感じていて、覚悟を決めなくてはなと思う気持ちと、奇妙な形の落ち着きはある。

目の前で、色々な小さなことが終わっていく中で、自分が次に始めるものを選ぶため、引っ越し準備をしながら考えなくては。それがいつか、自分の思っていない形で、終わるのだとしても。

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