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高熱で苦しんだ後は

2月の頭から喉の様子がおかしくて、発熱もはじまり、「いよいよ、例のあれに罹ってしまったか」と思っていたのだけど…実際は違っていて。別のウイルスに感染していたせいで、3週間ずっと寝込むことになった。

私は子どもの頃から、扁桃腺を腫らすことがとても多くて(切除を勧められたこともある)、インフルエンザに罹るときも決まってひどく喉を腫らす。

今回も、最初はいつもの喉風邪だろうと思っていたのだけど『いつも』とは、全く違っていて、喉は赤いところが見えないほど真っ白になり、頭はガンガン痛み、なぜか瞼がパンパンに腫れて一重になり白目が古い卵の白身みたいにだらりと伸びて(しかも瞼が怠く、重い)、全身ものすごく怠くて重く起き上がるのも辛い。ほぼ3週間ずっとそういう状態だった。

白目に起きた異変が特に怖くて、このまま目がだらりと落ちてゾンビにでも変身するんじゃないかと思っていた。夜も昼も1時間半以上は続けて眠れなくて、たまたま短時間や数十分眠れた時でも、悪夢を何度も見た。黒い枝やどろどろの妖怪に追いかけられて逃げる夢、積み上げられた死体がいっぱい出てくる夢とか。(ホラー映画無理なのに、夢ではホラー映画以上に恐ろしい体験をよくしてる)

喉に違和感を感じた時点から、万が一の『あれ感染』を疑って、寝食を別の部屋にすることにして、どうにか彼にはダメージ0で済んだのだけは良かったと思ってる。(後になって、簡単にうつるような病気じゃなかったと分かったけど)

喉が痛いだけで死ぬほどの病気じゃないと思っていたので、病院に迷惑をかけたくなくて、平熱に戻って1週間経ってから事前に連絡して診察を受けることに。その時点でも全身の怠さと喉だけは全く良くなっていなくて、喉は真っ白、徒歩10分程度の病院まで歩くだけでもへろへろだった。

念のため別室診察で、お医者さんも完全防備の格好をされていたんだけど…私の首のリンパを触って喉を見た瞬間、着ていた防護服みたいなのを全部脱いで『これはコロナじゃないね』と。

一度目の血液検査の結果を見て、恐らくEBウイルスによる伝染性単核症だと思う、とのことだった。あまりに血液検査の結果と数値がおかしかったので、さらに細かい検査結果と合わせて、2週間経ったらもう一度診察を受けることに。

病院で診察を受けて「効かないかもしれないけど…」と言われながらも処方された抗生物質と薬と漢方薬が多分?効いたようで。診察から一週間の今、ほぼ元通りになった。

この悪夢のような一か月が嘘だったみたいに。

一度だけ、39.5度まで熱が上がった深夜、呼吸も苦しくて喉が痛すぎて声も出せなくて彼に助けを求めることもできなくて、意識ももうろうとして…「もしかすると、今、目をつむったらもう起きないかもしれない」と思った。

同時に、いつもそんな瞬間を待っていた私は、それならそれでいいと思ったけれど。念のため、スマホのパスワードを手近にあった紙に書いて、彼に感謝の言葉を書いた短文をスマホのメモ帳に入れた。そして、もし明日の朝、また起きることができたら「人を楽しませる物語を書こう」と思った。

眠れなくて、ひたすら怠く、喉が痛い時、『モモ』『はてしない物語』や『エルマーとりゅう』など児童文学の朗読動画をすがるように聞いて、物語に入り込むことで、どうにか痛みを紛らわそうとしていて。その時、私はずっと小さい頃からいつも辛い時、こうしていくつもの物語に救われてきたことを思い出した。

生きるとか、死ぬとか、家族との過去の暗く痛い思い出とか、最近は気づくとそんなことばかり書いていた。でも、本当に書きたかったものは、もっと単純で楽しくて、ワクワクする世界を描いた物語だったんじゃないかな、ということも続けて思った。

良かったのか悪かったのか、そんな最悪な体調の夜をなんとか越えて、私はまた目を覚ました。朝になってまだ体調は最悪だったけれど「遺書なんて大げさだったな」とちょっと笑いながら、自分のスマホのパスワードを握りつぶし、彼に書いたメッセージを消去した。

丈夫でもないのに、簡単に死ぬわけでもない。ほんと私の身体は分からない。

まだ本調子ではなく、同じ姿勢でパソコンに向かうのも少しきつくて、1日2、3時間程度仕事で使うだけなんだけど。寝込んでいた時、動画で読み聞かせてもらった物語を読みながら、自分が本当に書きたいものを考えていきたい。

高熱を出す病気に罹った後はいつも、生まれ変わったような、少し不思議な気持ちにさせられる。もう一度、なにかにチャンスを与えられたような。嬉しいような、嬉しくないような。

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