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「記憶の仕方」百景

たぶんドラッカーだったと思うのだが、人の記憶の仕方には3通りあるのだということを本で知った。

「読んで覚える」人、「書いて覚える」人、「聞いて覚える」人とがおり、学習を効率よく成果をあげるには、自分がこの3つのうちどのタイプなのかを早く知ることだ、というようなこと。これを知ったとき、「私は断然書いて覚えるタイプだ」とすぐに自覚した。大抵メモを取っているが、あとで見返すために書いているのではなく、実際見返すことはほとんどない。書いていることで頭に強くインプットされるので、手を動かすのだった。

あるときからマネジメント研修などを主宰するようになり、最初にこのことを説いた。なぜなら、多くの人がこの点を知らなくて自分のもっとも覚えやすい手法ではなく、組織に強制されたやり方をしているからだ。ここ10年ほどで会議中にPCでカタカタとログをとることは一気に当たり前の光景になってしまった。しかし私はあるとき気づいた。「あの人があんなにがんばってログをとってくれているからいいや」と、大事なスケジュールや予算を記録しないでいて、あとからその人に尋ねるとまったくもって機能しないのだ。覚えていない。そして悪いことには、膨大なその「会議でカタカタ」したログをどこに保存しているかわからなくなっていることが多いので、すぐに知りたい答えが戻ってくることはほとんどなかった。

理由は簡単、カタカタしていることで会議への出席能動性が失われているからだ。むしろ、カタカタすることで存在意義を果たしている感があるので、心ここにあらずなことが多い。そしてやっぱり、その人にPCでカタカタがインプットとして合っていないこと。

残念なのが、私は業務委託としていろんな組織の仕事をしているが、打ち合わせ時に自分のためにメモをとろうとすると止められることが増えた。「Googleドキュメントでメモしてください。それで後で共有して」と言われるのだ。エーっ、自分の記憶用のメモなのに?と思うがものすごく強硬に断れるものでもない。大抵自分よりかなり年下の人たちがこうした要望をする。たぶん彼らの仕事人生においてそうやって教わってきたのだと思う。

実際、紙とデジタルで脳機能が違うことはさまざま証明されており、「デジタルで読む脳 X 紙の本で読む脳」という本でも書いてあるが、深い読みが適うのは紙なのだそう。ただ書籍では、これから圧倒的に電子書籍が増えるし、電子で教育を受けるのが必定になる世代もいるのだから、バイリテラシー脳にしていくべき、と説いている。ごもっとも。

私も抵抗むなしく、オンライン会議が増えたこともあって紙にメモすることが難しくなっている。画面に張り付いていないとならないので、手元にノートで記入していくことが難しいので、圧倒的にデジタル処理になってしまった。しかし、企画書を作る前など何かいったん深く思考する必要がある場合には、ノートを最大限に活用する。ピラミッドストラクチャーなどはノートなくして創れない。

研修で「あなたはどの記憶タイプ?」と聞くと、面白い答えがかえってきたりする。熟考の末、「僕は“書いて”それを“読んで”、レコーダーに吹き込んだものを“聞いて”覚えます」というフルコースタイプもいるし、「僕は“書いた”ものを人に“話す”ことで覚えます」という人もいた。それでいいのだ、大事なのは組織に無理やり強制されたやり方で力を発揮できないより、自分の記憶の仕方を知っている方が数倍強い。

私は新聞も絶対紙で読む。それは、デジタルで読むと流し読みが過ぎてまったく頭に残らないという理由の他に、もちろんのこと紙の新聞をことのほか愛しているからだ。

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