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哲学講座の振り返りと来年の抱負めいたもの

こんにちは!
とうとう哲学講座が終わってしまいました。悲しいです。まだ課題エッセイが残っていますが、まあそれはどうにかなりそうです。

受けて本当に良かったです。毎週の授業はもちろん頭の筋トレみたいで楽しかったのですが、最終日の内容は違った点で特に心に残りました。本来のトピックからちょっと脱線して、話題が文化相対主義のことになったのです。私のクラスは私をのぞいて講師含め7人全てが白人だったので議論が活発になったのだと思いますが、白人が持つ植民地主義の歴史に対する罪悪感が文化相対主義に対する健全な批判や議論をさえ妨げているように見える現状や、また、ブラック・ライブズ・マター運動で盛んになった奴隷制度や人種差別を支持したと考えられる過去の人物を「キャンセル」する行為はどこまで正当と言えるのか、などについて熱の入った意見交換がなされました。(奴隷商人の銅像が撤去されたのはまだ理解できますが、エディンバラ大学の講義棟群「デビッド・ヒューム・タワー」が「40ジョージ・スクエア」に改名されたのは、私はとても残念に思います。)

私はこの日は部外者の気分でほとんど発言しなかったのですが、普段、あまり知ることのできないイギリスの白人の葛藤に触れることができて、得難い経験になりました。彼らの多くは、たぶん日本人の多くが考えているほど歴史認識に関して傲慢ではないのかもしれないと思いました。もちろん、一日の仕事が終わった後にわざわざお金を払って哲学クラスに来るぐらいの「意識の高い」人たちだから、一般の意見を代表しているとは言い難いとは思いますが、それでも物質的あるいは文化的侵略者としての過去が意外なほど深い負い目をイギリス白人に与えているのは確かであるように思いました。

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さて、実は、私には哲学講座受講にあたって少々自分勝手な目的を設定していました。それは講師の方に私が書いた(アカデミックとはとても言えない)エッセイを読んでもらってフィードバックをもらうこと。
このエッセイというのは、以前にこのnoteで書いたことをちょっと先に進めたもので、生物としての人間の生存戦略として生まれたと考えられる宗教が将来においても存続する意義、それから多文化共生を認めつつ普遍的な倫理規範を獲得する方法の提案といった内容です。

講師の方に「プライベートで思索したものを読んでいただけませんか?」と尋ねたのは、まだ講座が始まって間もない頃。図々しいことは重々承知していましたが、どうしても専門家のフィードバックがもらえるチャンスを逃したくなかったのです。尋ねたときに、私が震えるぐらい緊張していたからだと思うのですが(私、すごいあがり症なんです。今まで繋げて考えたことなかったのですが、昔から病的に心配性な子供で、恐らくあがり症も不安障害の一症状なんだということにこの講座受講中に突然気づきました。我ながら鈍い。😆)、わざわざ「メール受け取ったよ」というお知らせメールをくださり、その中でこんな感じのことを書いてくださっていたのです。

「自分の考えを他者に開示するのは時に恐怖感を伴う。けれど、他者による批判だけが自分の考えをより洗練させ、深化させる唯一の方法なんだ。その批判者として私を信頼してエッセイを託してくれてありがとう。」

温かい励ましにも胸がいっぱいになりましたし、おそらく多くの学者に共通する静かな情熱みたいなものを感じて、それにもちょっぴり感動しました。

この後、約束通りに講師の方はとても丁寧なフィードバックを送ってくださいました。エッセイの構成や議論の精度、それから内容についても。私にとって幸運だったのは、彼の関心が似た方向だったこと。カントの義務論を用いて普遍的倫理則の獲得や文化相対主義の克服を目指す内容が含まれた著書を最近出版されたばかりで、私たち受講生は皆、その電子書籍を送っていただきました。課題のエッセイが終わったら読もうと楽しみにしています。(すごく難解そうで、理解できるかどうかは不明ですが…)

実は正直に言うと、私の興味が本当に哲学なのかどうか、受講申し込みをした頃はよくわかりませんでした。進化心理学者や脳科学者、物理学者の書いたものに興味を惹かれることが最近は多かったので。でも、こうして受講を終えて思ったのは、私は人と人が生きる宇宙を可能な限り俯瞰の目で見たいという欲求がある人間なんだということ。それに加えて、過去の哲学者たちの著作を読んでいると、レベルの差はあれど私も同じ種族だ、同類だ、と感じることが多々ありました。だから、きっと哲学で合っているんですね。

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さて、これでアカデミックな思索の進め方の初歩ぐらいは身についたと思うので、それを元に来年からは自分のペースで自分の思索テーマを深めていきたいと思います。滞っていた物理の勉強も再開したいです。(そういえば、講師の方もここ数年、量子論を理解しようと頑張っているとおっしゃっていて、そういう点でも親近感を覚えました。)

後は、来年の目標は、創作系全般! クラシックの曲に歌詞をつけたり、童謡をアレンジしたものを演奏するユニットみたいなのをここイギリスで誰かと作るのと、それから、絵本を何冊か作ることを目標にしたいと思います。来年の抱負を語るにはちょっと早すぎて鬼に笑われてしまいそうですが、それならそれで、大いに笑ってもらいましょう。

ありがたくいただきます。