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夜な夜な文庫で買える本      ZINE「映画のなかの足下」by足下研

個人的な「好き」と豊かな専門知識が巧くクロスした上質のZINE


 巻末で作者が語ることですが、このZINEは作者の個人的な仮説から始まっています。その仮説とは「映画のなかに出てくる靴がキャラクターを補足していたり、心情などをも表現していたりするのではないか」というコト。ただ、この仮説「だけ」で文章を書いていしまうとただ単純に興味のある分野で映画を切り取るという作業に落ち着いてしまうのですが、このZINEはまったくそれだけでは終わりません。

 簡単に言えば、「作者のその映画に対する愛情」をもとに映画を選定し、「靴に対する深い知識」をもって靴のことを説明し、それらをベースに「映画の中の靴がでてくるシーンを考察」する。これらが素晴らしいのは、本当に好きな映画を選んでいるから言葉に嘘がなく面白そうな映画だな、から入ることが出来る。それから、靴に対する知識が本当に深くて広いから、なるほど靴の色々について新しいことが知れて楽しい。さらに、そこに考察が入るから、その映画を見たことがないひとは単純に映画がみたくなるし、見たことがある人は靴に注目してもう一回見てみたくなっちゃう。

映画の選択も、作者の雑食的な映画センスから繰り出される意外な並び。おなじ冊子に「裏切りのサーカス」と「舟を編む」と「ラ・ラ・ランド」が並びますか、フツー。笑 映画だけ見たら何の並びか全くわからないですよね。でも、その雑多なチョイスがまた巧くてくすぐられるし、説明してくれる靴の種類の豊富さにも繋がってるんですよねぇ。もちろんここに列挙していない映画も収録されております。

ではでは、最後に、このZINEから文章の引用をして紹介を締めたいと思います。映画は僕も大好きなウェス・アンダーソン監督の「ダージリン急行」。

「ともすればなにも変わっていないかのように見えるくらいのちいさな変化、しかし旅をはじめたときとは確実に異なる彼らの表情を、是非足元の変化にもご注目のうえ、おたのしみください」

作者は映画の中に出てくるインド独特の靴をその深い知識で説明し、とある靴のでてくるシーンを考察した後でこのように締めます。映画に対する新しい切り口を読者に提案しながらも、決してそれを押し付けず、映画視聴欲をくすぐるその表現。靴が好きな人、映画が好きな人はもちろん、誰かの強い「好き」に触れたい人、「好き」と何かを上手く掛け合わせた好例を見てみたい人、いろんな人へおすすめできるZINEです。

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