語彙力を増やす方法

「語彙力を増やすにはどうしたらいいですか」と質問される。

【追記】「語彙力を増やす」じゃなくて、「語彙を増やす」もしくは「語彙力を鍛える」だな。このあと「言葉の自然な結びつき方」のミスについて苦言を呈しているのに自分がミスっている!

これ、聞かれたら多くのライターや編集者が、「語彙を増やすために特別なことをやるより、たくさん読んでたくさん書いていくなかで増やしたほうがいい」と答える。実際、そう返答している場を見たこともあるし、ぼくも、そう答えていた。

これねー、プロのライターや編集者は、やっぱり、ほんとうにたくさん読んで、たくさん書いている。
広告系以外のライターだと、本当に毎日1本は書いているという人もたくさんいる。そのためのインプットも膨大だ。「走り込み」が違う。そして、実際に、そういう「走り込み」のなかで自然に増やしていくほうがいい。
「語彙力を増やすぞ」と無理して何かやっても使いこなす語彙力にはなかなかならない。

そもそも「語彙力が足りない」と思っている人にあれこれ聞いてみたり、書いた原稿を読んでみたりすると、原因は語彙力ではなく、考えがまとまっていないだけというケースも多い(→「書きたいことはあるけど途中で手が止まってしまう、どうしたらいいの?」への返事)。

でも、たまに本当に語彙力がもうちょっとあれば書きやすくなるかも、という人がいる。
それは、知ってる言葉の数ということではなく、どこでどの言葉をどう使うかというコントロールがうまくいってないのだ。コロケーション(言葉の自然な結びつき方)がチグハグだったり、短く書けることを迂回するように書いていたり。
たくさん書いて、たくさん読んでいても、ふだんの言葉を気にするパワーがちょっと足りないというタイプの人もいる。

そういう人のための「語彙力を増やす裏技ショートカット」を伝えよう。
ぼく自身、この数年やっていることだ。
「たくさん読んで、たくさん書く」という基本は揺らがない。可能な限り、たくさん読んで、たくさん書いてください。
でも、「たくさん読む」だけで語彙力を増やそうとするよりも、たくさん読みながら、語彙を気にしてみる。

やることはシンプル。
読んだり、話を聞いたりするなかで「気になった言葉」があったら、必ずメモを取る。
メモ帳を持ち歩いている人はメモ帳に。スマホ使いの人はスマホで。ぼくはスマホでメモって、PCのテキストにうつしている。

「気になった言葉」はどんな言葉でもいい。知らなかった言葉でもいいし、知っているけど使ったことがない言葉でもいい。難しい言葉じゃなくても、あんまり自分では言わないなー書かないなーという言葉であればすぐメモるといい。いつか自分で使ってみたい言葉をメモする。言葉でなくても、短いフレーズでもいい。

本を読んでいるとき、読むのを止めてメモをするのが嫌な人は(はーい、ぼくです)、付箋が有効。半透明の付箋があるので、気になった言葉やフレーズが出てきた(ページではなく)行に貼って、後からまとめてメモする。

1日に5つ以上は収集すると決めてしまう。無理矢理でもいいので5つ。
5つメモするためには、「気になった」の閾値を下げることが大切だ。どんな言葉でもいいし、フレーズでもいい。言葉をメモするときもフレーズごとメモるといい。
5つメモができない日は、インプットが足りないのか、「気になった」の閾値を高くしすぎているか、だ。
どちらかを見直そう。

メモは、ときどき見返す(やっていると楽しくなって、ついつい見返すようになる)。メモした言葉を使うチャンスをつねにうかがっていること。書くときでもいいし、話してるときでもいい。
使うことで修得する。強引にでもいいので使うこと。(TV番組「セブンルール」で学研の辞書編集者が登場して「気に入った言葉を使う」というルールが紹介された。彼女がメールに「滂沱の涙」「気淑く風和らぎ」とか使っていて受け取った側が「読めーん」とか言ってた)

メモるだけでは、すぐ忘れてしまう。使うチャンスをうかがうことが大切(うかがっているうちに記憶してしまう)。そして、ここぞ!というときに使えると、その言葉と親しくなれる。

もう1つ語彙力を増やす方法があるので、それはまた別の機会に。

つい先日あった「宣伝会議の編集ライター講座」の総合コースのワークショップで参加者が喋った中で、気になってメモした言葉は、「絶起(ぜっき)」「齲蝕(うしょく)」「よる蜘蛛を殺す」だ。

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