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「いつサイコロをふるか問題」アウトプットランダムネスとインプットランダムネス

TRPGの熱心なプレイヤーじゃない人が、「TRPGの良くないところはダイスロールだ」って発言していて話題になっていた。
ツイートの断片的な発言なので詳しい心情は分からない。
たしかに、ダイスでアクションの成功失敗が決まってしまってどうしようもない感じは、ぱっと見、無情なように思える。
ボードゲーム的な感覚だと、ふったダイスの目を操作してどうにかするところが楽しいのに!
だが、これは運命に対する信条の違いでしかない(つまり何を楽しむかの違いでしかない)ので、どちらが良くてどちらが悪いということではない。

というわけで「いつサイコロをふるか問題」。以前に書いたテキストを整えて掲載。

サイコロをふるゲームは大きく2つに分けられる。
最後にサイコロをふるか、最初にサイコロをふるか、だ。


最後にサイコロをふるパタン。アウトプットランダムネス(出力時の偶然)の代表例は、テーブルトークRPG
冒険者が、椅子の脚をつかんでモンスターを殴るとアクションを決定する。その後、そのアクションが成功するか失敗するかをダイスをふる。
ウォーゲームも同様。この駒でこの駒を攻撃するとプレイヤーがまず決定し、その後にサイコロをふる。サイコロのランダムで攻撃がどうなるか決まるのだ。
つまり、プレイヤーがアクションを選択して、それが成功するかどうか、最後に運命が決まる

いっぽう最初にサイコロをふるパタン。インプットランダムネス(出力時の偶然)は、(いわゆる)ボードゲームに多くみられる。

たとえば『バックギャモン』。自分の駒が15個もある。最初にダイスを2つ降る。だが、その目で何をするかはプレイヤーが決める。目を1個ずつバラバラで使うか、合計値で使うかを選べるうえに、15個の駒のどれを動かすかは自由に決められる。

もうひとつ。たとえばシド・サクソンの名作『キャントストップ』

『 キャント・ストップ』ニューゲームオーダー

2~12まで11本のルートを登っていくゲームだ。
まずサイコロを4個ふる。この時点でプレイヤーは自分のアクションを選択していない。まず最初にサイコロをふる。
4個のサイコロの目を見て、2個ずつに分ける。たとえば、1と2と4と5が出た場合、プレイヤーは、「1と2」「4と5」に分けてもよいし、「1と5」「2と4」に分けてもよい。
「1と2(合計値3)」「4と5(合計値9)」に分けた場合は、3のルートと9のルートの駒を進めることができる。
「1と5(合計値6)」「2と4(合計値6)」に分けた場合は、6のルートの駒を2つ進めることができる。
進めた後に、またサイコロをふることができる。
だが、登るルートは3つまで。つまり3つしか自分の駒を置けないので、どう組み合わせても進められないことがある。そうなるとバーストで、いままで進んできたぶんも戻らなければならない。
そうならないように、自分の番を終了させて、進んだことを確定する(ビバークするのだ)。どんどん進めるために何度もサイコロをふりたい(これがタイトル「キャントストップ:やめられない!」の由来だ)が、調子にのると進んだぶんがおじゃんになる。

まずサイコロをふって、それをどう使うか。プレイヤーがあとからアクションを判断するのだ。

物語やナラティブを楽しむゲームにアウトプットランダムネスが多く使われる。無謀な行動だろうと、突飛な行動であろうと、選択できる状況にあり、選んだ結果どうなるかは運を天に任せる楽しみ方だ。

いっぽうゲームのメカニクスを楽しむゲームにインプットランダムネスが多く使われている。出てしまった状況、運命を、どうコントロールするか。運を人知で操作する楽しみ方だ。


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