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ジョナサン・D・モレノ(Jonathan D. Moreno),ジェイ・シュルキン (Jay Schulkin)の「脳研究最前線〜世界では今,脳研究はここまで進んでいる〜(The Brain in Context A Pragmatic Guide to Neuroscience)」を読む

本書は通読するのにえらい難儀しました。読後「難しい」と一言つぶやいている人がいましたが、難解なのかと思っていたらそうではなくて読解できない難しさでありました。そっちかよ。と。

「脳」は,私たち人間にとってとても大切な器官です。では,脳とは何なのでしょうか? この質問に答えるのは,最先端の研究者でもそう簡単ではありません。

 本書は,脳研究によって何が明らかにされていて,何がわかっていないかを,歴史的な経緯を踏まえながら解説します。現代の医学や科学の発展に鑑みると,脳の理解もさぞ進んでいることだろうと思う方も多いでしょう。しかし驚くなかれ,脳に関しては「わからないことだらけ」なのです。しかし、その最新の知見について科学的な考え方だけでなく哲学的な観点を含めさまざまな観点で解説するとありました。

はじめに

第1章 電気と脳

第2章 脳をつくる

第3章 進化する脳

第4章 脳の画像化

第5章 脳の工学

第6章 セキュリティーと脳

第7章 脳を治療する

第8章 社会化する脳

あとがき「決定版ではありません」

第1章電気と脳では、脳が生み出している意識や体の反応・代謝の指示命令は神経回路における電気信号なのか化学伝達物質によるものなのか科学の進化に応じて我々の理解がどのように進んできたのかについて触れられていました。しかしでは結局どうだったのか。今はどう考えられているのか。という点になると急に靄がかかって話が拡散していくように見える。

脳は生命体を支える基本的な構造を持っていると同時に、ある環境や状況下で作動するものでもあるのです。たとえば、現実には私たちの脳は水槽のなかにある訳ではありませんが、もし水槽の中にあったとしたら、その水槽こそが考えるべき状況となるのです。

この一文で章が閉じられているのだけど、考えるべき対象ではなく状況と言っている意味もわからない。本書の全体のトーンとして生物が有している能力や機能は基本的に脳が司っていると考えられているが現実に「脳細胞」に閉じて機能が発出している訳ではなく、皮膚や五感のようなもの全身と繋がって一体となっているからこそ発揮されていると言いたいみたいなのだけど、だからそれでどうなのかという点についてはなんだか歯切れがとっても悪いというか悪すぎる。

脳オルガノイドは、脳の属性の一部を真似る細胞系です。脳オルガノイドの素晴らしいところは、適切な環境にある場合、細胞が自発的に組織化(自己組織化)し、皮膚などの組織となったり、人間に特徴的な細胞種や、前駆細胞領域を作り出したりすることです。幹細胞生物学の発展のおかげで、オルガノイドはどんな器官に対しても作り出すことができます。しかし、神経発達と脳機能をより深く知ると、とりわけ面白いことがわかるのです。特に外側放射状グリアは、最近まで直接近くで観察することがほぼ不可能でした。オルガノイドは小頭症に関連する因子やミエリンおよび神経細胞とグリア細胞間の相互作用に異常を示す統合失調症などの疾患のために研究されてきました。シナプス刈込みと呼ばれる、思春期に終わりを迎える正常な発達過程は、精神疾患を抱える人の多くのではうまくいきません。このオルガノイドによりモデル化できる可能性があるのです。

脳オルガノイドは倫理的な部分で最近非常に注目されているもの、のようなのだけど、説明がない。この文章の後半ででてくる「とりわけ面白いことがわかる」と書かれている部分の後ろを注意深く読みましたが、どこか面白い話なのかちっともわからない。

極めて素人ながら言いたいことを僕なりに解釈するに、この脳オルガノイドは人工的に小さな脳細胞を作り出すことができるようになったというもので事故や病気で欠損した脳細胞の再生を可能とするものになるのではないかと考えている一方で、この作り出した脳細胞に意識が宿っている可能性があるということで医療倫理に反するのではないかという議論を呼んでいるもの のようなのだ。

だから「一部を真似る細胞」だと書いている訳ね。

シナプス刈込みについても全然説明がない。公益社団法人日本生化学会のホームページにはこんな説明がありました。

生後発達期の神経系において,出生直後にいったん過剰にシナプスが形成された後,環境や経験に依存して必要なシナプスは強められて残り,不要なシナプスは除去されることが知られている.この現象は「シナプス刈り込み」と呼ばれており,機能的でむだの少ない神経回路を作るための基本的過程であると考えられている。

オルガノイドを使ってこの刈込み現象をモデル化することで神経疾患の人がうまくいかない理由や原因を探ることができるのではないかということを言いたいのかもしれない。

他の章というか本書は全編こんな感じで行間を読む力がよっぽどある方でないと読んでも理解できないのではないかと思います。専門知識があったとしてもこんな書き方じゃ解からないと思うが如何でしょうか。

百万年以上もの間、新しい生物学的な化学伝達物質が現れては多様化し、それらの遺伝子コードが書き換えられ、複製されてきました。大型動物と同様、化学伝達物質という種も、現れては絶滅していったのです。そのうち、原生生物やバクテリア、菌類、無脊椎動物などは、生命の起源に遡る古い歴史を持っています。チャールズ・ダーウィンが注目したように、進化においてはさまざまな生物で臓器や器官が保持され再利用される傾向にあります。まったく同じことがエンドルフィンやインスリン、チロキシン、エストロゲン、ドーパミンにもいえます。成長ホルモンを放出するゴナドトロピンのような分子は、無顎類が現れたと同じ頃と同じくらい古くから存在し、見た目もさまざまです。オキシトシンも古い分子群の中の一つで、対象と近づいたり触れ合ったりすることで分泌されるので「抱擁物質」とも呼ばれています。生物学的な進化において、このようなホルモンが有性生殖のために再利用されてきた理由はほとんど明らかでしょう。すべての生き物において同様に、進化は同じ分子をほかの役割に再利用したがるのです。生物学者たちの言葉を借りれば、オキシトシンは生殖の追求に加え、友情や子育てにおける乳の分泌などのプラトニックな目的にも「借りだされ」ます。どの器官のどこに発現するかによって、用途に違いが出るのです。

文句ばっかり書いてしまったけれども本書の情報量はかなりなもので、初めて接する言葉が沢山ありました。脳や意識の問題はわからいなことがたくさんある。それが故にもっともっといろいろな本を読み勉強すべきところがあることを改めて感じました。

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