【世界競争力ランキング35位でやべえ?いや、それが何か?】後半

引退した外資系の元・部長です。
前半で、日本の強みであったモーレツに働く「人の力」について、また、モーレツに働くことが「正義」というような感覚が強かったのではないかということを申し上げさせて頂きました。
この考え方が今、方向修正されているように思いますので、以下の後半で述べさせて頂きます。
楽しくご覧頂けましたら嬉しいです(^^ 

さて、働き方を考え直すという点では、法整備も行われてきている状況だと思いますが、そこに至るまでには痛ましい事件もありました。

過労死された方、指導と見せかけたいじめ、過大過ぎる会社の要求に心を病んだ方等々。生きるために仕事をして、それなのに仕事が起因となり命を絶つ(絶たれる)ということは、言うまでもなく最大の悲劇です。

従って、罰則を伴う「法」としてこうした面が整備されることは、抑止力にもなりますし、良いことだと思います。
そして、同時にこれは日本人が長年考えてきた「よく働く人は正義」という考えからは一歩離れることになります。
つまり日本の「人の力」という長年の最大の武器が変形しようとしているわけです。
 
この面の整備で真っ先に思い浮かぶ身近な事の一つが、「働き方改革」です。若手社員さん(一定のタイトル以下)の労働時間は制限され、タイトルにより労働時間の上限が上がる制度です。
 
心無い・質の悪い先輩社員や管理職というのは残念ながら存在します。そして、本当に残念ながら「コイツらはいなくならないだろう」という前提で“最大の悲劇”を防ぐために、一つの方法として労働時間の管理強化、法整備というのは、されてしかるべきです。
 
しかし、現場で体感してきた身として、これは若手社員の成長の妨げに物凄く繋がっています。この「働き方改革」の労働時間の管理(時間外労働の制限etc)というのが大変厳しく、違反した会社への罰則も厳しいものがあります。
 
従って夕方、日中の業務が一巡した後、若手社員さんが「今から練習するぞ!」「今日教わったことをもう一度おさらいしよう」なんて思っても上司さん達は「ダメダメ。若手君はもう帰って」という指導をしなければいけないルールになっているのですね。
 
上司サイドも、時間的制約で経験もなかなか積ませられず、少ない時間で十分に教えたという自信も持てず、結果、チャレンジングな仕事を任せるタイミングが後ろずれしていく、というサイクルに陥ります。
若者さん達は初期の基礎的な業務からなかなか抜け出せずに「仕事にやりがいが持てない」という感情を抱くようになります。短期間で退職をする若手社員の退職理由上位だというのもよく分かります。
 
敢えて「今」と「昔」という言葉を使いますが、「今」の時代に入社してくる「仕事で成功したい」と思っているお若い方々は、自分自身の力で「成長しよう」という意識が「昔」よりも高く求められる時代だと思います
 
例えば「昔」は若手にプレゼンを任せる前日、先輩が「さて夕飯食べに行って、戻ってきたら明日のプレゼンの練習しよう。さっと牛丼でいい?」なんてことができたのです。で、牛丼食べた後に会社に戻って先輩が手取り足取りプレゼンを見てくれました。つまり、会社の力が協力してくれるから自分で意識しなくても成長し易かったのです。
 
一方で「今」の若手さんは、上の例でいうと牛丼食べに行く頃には帰らなければいけないのですよね。
下手したらプレゼン資料も途中までしかできてなくて「先輩すいません、明日までの資料、完成しませんでした。若手はもう帰らないといけない時間です」「おう、後は俺がやっとくよ、早く帰りな。お疲れー」なんてやり取りが普通に起きています。資料を完成、添削してもらう経験すら積めない。
 
その人の成長、会社戦力の育成、という観点からは考えさせられます。が、働き過ぎによる不幸、質の悪い管理職の暴走を防ぐ一助にはなっています。
 
教育の専門家ではありませんが、最近20年間は各々の個性を認め、以前よりも競争を排除する方向の教育が行われてきたように見受けられます。
それによって、得られるものがあると考えてのことなのでしょうから、一概に批判はできませんが、社会人となると、特にビジネスの世界ではどうしても勝ち負けが付きまとうんですよね。
少年ジャンプじゃないですが、努力、友情、勝利のノリは持ち続けた方がいいと思います。
 
先人たちが「働くことは正義」と日本の武器である「人の力」をフル稼働して日本は焼け野原から経済大国となりました。
しかし、同時にそれは「人」の自由を制約する側面も持っており、過労死等の辛い問題も引き起こすこととなりました。
今、日本社会は成熟してきており、個人の価値観・幸せを尊重する方向に進もうとしています。
言うならば目指すものが「競争力ランキング上位」から「幸福度ランキング上位」狙いへと変わろうとしているのです。
「競争力ランキング」が落ちたからって、手に入れようとしているものがあるのです。
そんなに悲観することはないと思うのですよ。
 
〇まあ、そこそこだった元部長の思うこと:
できれば強くて豊かな国であって欲しいですよね。国力が余りに低くなると皆が貧しくなってしまいますし、国内向けの会社も潰れて、失業者が増えて、困窮に起因する犯罪も増えて、、、、良いことないです。
なので「競争力ランキング上位」のまま「幸福度ランキング」も上げたいところです。
上記、牛丼の例の解決策としては①効率を上げるか、②人手を増やす、かがまずは思いつく解決策ですが、①は急には難しい、②はコストがかかって会社が沈没してしまうかもしれません。

働き方に関しては自分のスタンスを選べる環境というのが望ましいです。
定時になりましたが働きたい人はどうぞ、帰りたい人はどうぞ、と。これをするにはどうしたらいいか、永遠のテーマなようで、近づいている会社もあると思います。

外から見て個人的に知る限りですが、外資系企業の幾つかには、それを実現しかけている会社があるように見受けられます。
ある程度の解雇(クビ)という日本人には不慣れな仕打ちが伴いますが、頑張りたい人は頑張ると報われる部署(お給料、昇進の面で)、ほどほどにやりたい人が行く部署(でも仕事はきっちりやる前提)、どっちにしてもフィットしない人はバイバイ(解雇)という感じの企業が幾つかあります。
社員に「この会社にいたい」と思われるために、そもそもの待遇(報酬、休暇等)が魅力的という、体力のある会社さんが多いのは現実です。
そういう会社へのキャリアアップを目指して「今いる場所で力をつけて移る」、というのもいい手だと思います。そういう会社は実力と人柄は気にしますが、学歴とか余計な事は気にしないので、頑張って力を付けた人は採用され易い印象です。
 
理想の仕事、働き方、職場環境の模索、また改めて考えます。

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