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ANGERSWING#17

大きなモニターのない、少し古めの電車が落ち着く。
モニターのついてる電車って、子供の頃はちょっと憧れていて、当時は山手線にだけ小さいモニターのついた車両があって、たまたまその電車に出くわすとすごく嬉しくなった気がする。

なんだか今はいらない情報を強制摂取させられている気持ちになる。
フォアグラを作る過程のガチョウのような。「1984」的な世界のような。

都心を貫いている電車に乗ると基本的にはそのモニターから逃れることができないが、郊外に向かう電車に乗れば、昔風な駅名だけが表示される電光掲示板の世界に戻ることができる。

わたし自身はどんな世界を望んでいるのだろう。

情報はないと困る。
って書いたけど本当にそうなのだろうか。

日常茶飯事的に地図を見たり、美味しいお店を調べたり、ニュースを確認したり、手元のスマホでインスタントにやってしまっている。

仕事で使う分には効率化を図るために必要なことかもしれない。
でもプライベートな時間って、そういう情報がどれくらい必要なのだろう。

美味しいお店に辿り着くことも自分の感覚で「あ、このお店美味しそう」を信じて探し出した方がわたし的には楽しそうだし、人生が豊かになってしまいそうな気がする。
とはいえ手元にスマホがあるから、手っ取り早く調べてしまうのだけど。調べることも楽しかったりするからね。

大きなモニターの話に戻ると、朝の通勤の時間、すごく苦しい時間帯に、悠々といらない情報を渡してくることに嫌気がさしているのかもしれない。
いやあ、もちろん朝の憂鬱な時間に大きなモニターから流れてくる情報に癒されてますとか気を紛らわせることができてますって人がいるのだろうけどね。

という文章を書いている最中に外国人のご夫婦に鎌倉行きの電車がどちらかという質問をされた。
すごくたわいもない会話だけど、こうやって人と話すと心の枷みたいなものがすっと消える感じがする。
それって多分、お互いの出力が合ってるというか、相手の欲しい情報をわたしも適切なエネルギーで渡すし、相手もそれを適切なエネルギーでキャッチしてくれようとしてくれているから、会話後になんだか爽やかな時間が流れるのではと思う。

大きなモニターという負荷がかかって、その負荷から解き放たれるような会話がなされたからこそ爽やかな心持ちなのかもしれない。
そう考えると大きなモニターの果たした役割もあった、のか。

いや、でもそもそも朝の苦しい時間帯に負荷になってちゃさあ、厳しいと思うね。現実世界を生きているわけだから。

渡されるだけじゃない、渡されるから渡すをわたしはしたいんだヨ。

<日本劇団協議会主催>
日本の演劇人を育てるプロジェクト
新進劇団育成公演

劇団Q+
『ANGERSWING /
アンガーズウイング・アンガースウィング』
ー家族の庭、その香りは秘密をささやくー

脚本=弓月玲 原案・演出=柳本順也

◎日程
2024年7月3日(水)〜 7月7日(日)

◎劇場
下北沢 駅前劇場

⋱チケット発売⋰
2024 年 5月 1日(水)開始

https://www.gekidan-q.com/

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