見出し画像

朝のこと【詩】

朝目が覚めると
私はさっさと暖房をつけて
また布団に潜ってしまう
まだ2月にもなっていないから
桜はまだ先なのかと
ひとり愚痴をこぼす
窓の向こうには薄はりグラスのように
さっぱりとした空があり
足をすべらせれば
そのまま宙へ落ちていきそうだな
テレビでは知らない誰かの
知らない犯罪や不祥事を
知らないアナウンサーが
訳知り顔で読み上げ
スマホでは無機質な文字列が
情報の切れ端を配る
なんとなく世の中を分かった気になるが
世界の謎は一向に解明できないままだ
温かいお茶でも飲みたいな
コップを出したところで
でももうこんな時間か
湯を沸かすより
仕事着をカバンに詰めなきゃ
どたばた
どたばた
ばたん
乱暴に玄関の扉が閉じて
舞ったほこりが静かに
朝日にちらつく
台所には役割を果たせなかった
コップが
ひとつ



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?