見出し画像

花が燃える頃

あの花が燃える頃
賛美歌は森へ帰ったよ
あるのはセピア色の乾涸びた木洩れ日だけ
時間も溶けて消えていくのは何故かな
ここは湿気った六月も終わりの長閑な町
プールみたいなアスファルトを泳ぐ
錆びたローカル線が雨を食べて
のらりくらり余所見している
夜のシャボン玉が賑やかなのは知っている
ちいさな町にもお祭り騒ぎはある
金魚になった夜もあったっけ
あの花が燃える頃
わたしの言葉はどんどん衰えて
必ずちいさなみずたまりになる
子供たちはビー玉も折り紙も遊ばなくなって
避けて通るただのちいさなみずたまり
ねぇ覚えている?

風が吹くところ
桜並木道を自転車で下った
ピンクまみれのフラッシュとか
空想風船をひたすら夕暮れに飛ばしたりとか
生意気でごめんねって謝った
夜明けの信号機の下とか
死んだ魚に毛布を掛けてあげた真夜中とかさ
色々あったじゃん

花が燃える音を聴いている
目尻の皺が少し桜色
爪も髪も白くなっちゃうの
いつかね

賛美歌は森へ帰ったよ
あの花が燃える頃

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?