夜明ユリ

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夜明ユリ

Xアカウント(@yorugaowaru1218)夜明ユリ Xアカウント(marble1218)ユリイカ のふたつです。

マガジン

  • 炭酸ソーダの水荘|交換日記

    • 22本

    世界の終りと平成ノート・ワンダーランド|平成最後の五月雨が降る日、僕らは遺書みたいに濡れて空を見る。これは、僕らが書く交換日記だ。|ツイッターの文章書き達がnoteで描く珠玉のエッセイ集|#交換エッセイ集

最近の記事

ぴかぴか新緑一年生

野生のスミレが居眠りしている ハ長調の陽気な曲に包まれて 学校はゴールデンウィークで休みだから 木洩れ日もうんと伸びやかにしている 無数のひかりの泡 キーンと透き通るひかりの音が鳴り響く ぴかぴかの新緑一年生 勉強も宿題も初めてなんだ 苦手な科目は嵐の日の過ごし方 強風から身を守る勉強かなぁ 4つ葉のクローバー‪になれなかったって 3つ葉のクローバーは悲しげにしている モンシロチョウはそっと励ます 足りないことはすてきなことよって あたまのなかの花畑 わあわあはしゃいでちょい

    • てんとう虫と青いアネモネ

      駅のホームでぽつん、と花が咲いている 母の姿は、青いアネモネ 澄みきったかなしみが身体中に染み込んでいる 帰郷した日にはいつもあたたかな炊き込みご飯 ずっと変わらない味を噛みしめる こころのぶらんこをやさしく揺すってくれる お見送りをしてくれる青いアネモネの ちいさな肩に風が吹いていた わたしの目は視界が震えていて またいつでも来なねと微笑む目尻の 皺は桜色をしていて また春になったらねと精一杯微笑む わたし達の頭上は今にも雨が降り出しそうだった 発車時刻三分前の光と影を胸に

      • よおく見てごらん

        水平線をやさしく結って 国境を飛ぶ空色の手紙 みんな水飛沫みたいに 空中で遊んでいる 夕刻の浅い波間で 海を渡ろうやさしい歌で 海底の魚も踊るくらいにさ まあるいびーどろ そんな星に生まれたよ よおく見てごらん 海の色は何色 お絵描きした指は何色 争いのなか手を洗う水は何色 握手した手は何色 今日の空は何色 道端の花は何色 食べた料理は何色 涙は何色 眠りにつく時の部屋は何色 夜明けの空は何色 恋人の瞳の色は何色 昨日のこころは何色 今日のこころは何色 へいわって何色?

        • swing fish

          薄べったい風が吹いている汗っかきの五月 ジグザグ運転で転げ落ちた夢見がちな魔法使い アイボリーの雲も色褪せず祈っていた あの木陰のシロツメクサが待ちぼうけしている はるか彼方の夢を編んだよ 固結びの悲しみも一緒にね 疲れ顔の君の泪のエンドロールを探していた 同じ名前が流れてきたらきっと叶うはず 届きそうで届かない引っかかった風船 よじ登って取ろうとしたら 飛んでいってしまうみたいに 何処までも 広がってゆく 何処までも 澄んでゆく 彩る青を内側に秘めた この胸に泳ぐ魚を見て

        ぴかぴか新緑一年生

        マガジン

        • 炭酸ソーダの水荘|交換日記
          22本

        記事

          見ず知らずの人に怒り散らすくらいの 傷口が痛みさらす人間のはけ口を 嘲笑する人間の目は虚空で空虚に飛ぶ鳥を 見逃して 鳥の羽ばたきに夢見がちな 少年の硝子玉みたいな眼差しは割れかかって 今にも羽根が生えそうで ちいさな風でも吹っ飛ぶ種子のような春の息には 泪さえも零れないが 爆発ばかりが起こる世界の映像には 泪と赤い血液が流れている人間が 心を攫う春の夜風に追い越されて 桜吹雪の中を歩いて遠くに行きたがる さようならするにはあまりにも暑過ぎる春で 窓からしか眺められない桜の

          カエルのお留守番

          時も忘れてしまいそうなくらい 長い長い雨が降り注いでいます 一匹のちいさなカエルは 睡蓮の葉っぱを雨傘にして お留守番をしていました 辺りは一面睡蓮の花々が しとやかに咲いていて 仄甘い香りがカエルの鼻先に ほんわり漂いました おなかのすいたちいさなカエルは ぐうぐう鳴るおなかの音が恥ずかしくて ケロケロと鳴いて おなかの音をごまかしたりしました とおくへご飯を探しに行った 父さんカエルと母さんカエルは まだまだ帰って来ませんでした 雨雲に覆われた だだっ広い灰色の空

          カエルのお留守番

          糸雨とチェリー

          静かな糸雨 雨音がとおく優しい真夜中へ ようこそいらっしゃい 頭のなかを冷静にさせてくれる ちいさくてやわな魔力に 思わず目をとじる 洗いざらしの夜の町が鈍く光っている 息を潜めて雨音を鼓膜に焼きつける者の 冷めやらぬ深く青い熱情が降っている 首すじから垂れ流れるちいさな海 かなしくってくるしくって チェリー色の目でとおくとおくを見ていた あたしの夢路の果て 静かな糸雨 ささやかな約束は待ちぼうけ 両手をそっと差しだした 指切りげんまんをした小指がそぼ濡れる もうじき夜が

          糸雨とチェリー

          クオンの実

          白い墓の傍らでひっそり クオンの実を食べた 互いの心臓を明け渡すように ふたりきり分け合って食べた ヒカリの鳩たちが そぞろに誘われて飛んでやって来たので 星の破片ほどの クオンの実をあげた ヒカリの鳩たちは 羽根を脱ぎ捨てて 人の形になったり 鱗が生えて魚になったりした ふたりは長い長い間冷えきった唇を重ね合った ずっとずっとはなればなれだったから しだいにふたりのからだは ひとつの木となり クオンの実をたわわに実らせた とおい昔に繋がっていたであろう星座が消えた 星の

          クオンの実

          草原

          過去に書いた自作の詩を朗読しています。 よかったら聞いてください。

          WEEK END

          自作の詩を朗読しました。 よかったら聞いてください。

          孤島のピアノ

          孤島に忘れ去られたピアノがある 音色はバラ色で些かやわな棘があった 黒鍵に乗った鴎が一羽 羽のないおはなしをする やっと見つけてくれたから ピアノは嬉しがって鳴いた 悲しいことにわたしは ピアノがうまく弾けない ただ指を静かに置いて ひとつひとつの鍵盤を順番に奏でた ピアノはずっとわたしの指を見ていた ピアノはからだで感じていたのだ わたしの指の感触を 息をしている ピアノもわたしも それから一緒に眠ったり 落陽を眺めたり 夜明けの空の下でたくさん ピアノのからだを触

          孤島のピアノ

          One

          夕暮れ近く 誰もいない遊園地 観覧車とメリーゴーランドだけ 廻っている ここに住もうよって 君は笑っている よろこんでと 手を握る アンティークローズの花束かざして 真夜中の彗星の尾っぽ追いかけた ラム酒のチョコレート食べたあと キスをした夜明けの雷音 アロワナ雲泳いでいた 渇いた喉で何処まで走ろう からっ風に吹かれながら 絡まない赤い毛糸転がしながら クモの巣が踊っている嵐の日に ブレーカーの落ちた部屋で 抱きしめ合う透明なからだ 愛してるも言えないくらいの力強さで

          花が燃える頃

          あの花が燃える頃 賛美歌は森へ帰ったよ あるのはセピア色の乾涸びた木洩れ日だけ 時間も溶けて消えていくのは何故かな ここは湿気った六月も終わりの長閑な町 プールみたいなアスファルトを泳ぐ 錆びたローカル線が雨を食べて のらりくらり余所見している 夜のシャボン玉が賑やかなのは知っている ちいさな町にもお祭り騒ぎはある 金魚になった夜もあったっけ あの花が燃える頃 わたしの言葉はどんどん衰えて 必ずちいさなみずたまりになる 子供たちはビー玉も折り紙も遊ばなくなって 避けて通るただ

          花が燃える頃

          BLUE GARDEN

          夜の庭には 青い花が咲いている 凍える声が聞こえたら きっと雨のブルーガーデン 血脈の音が踊る 星屑が降れば青い花達は クジラになる夢を夢見たりするんだ 街灯紳士が紅いバラを 差し出したくてうずうずしている しびれを切らした三日月が 灯りにキスをした かなしみは賛美歌へ 海が夕陽に照らされて泣きたくなった もう居なくなってしまった君の歌は 水底のオルゴールになってる だから魚達は毎日大暴れ 狂い咲きした向日葵みたいな少女 笑顔の下のなみだを隠して そのなみだが輝き出した

          光の熟した涙

          光の熟した涙で前が見えない 冬の南風はやっぱりどこかあたたかい 枯れ草の音楽を抱きしめながら 辺りはうっすらみずいろの空 レモネードの陽射し肩に引っ掛けて眺めていた さようならの合図は突然吹いてきて 一羽のカラスはまるで あなたの空気を纏っていて 僕がタバコを吸い終わると 静かに羽ばたいて行った 僕はすぐに忘れてしまう この世界は最初から粉々の透明な ダイヤモンドワールドだってことを いつだってキラキラしていて いつだって 粉々なんだ 春になったらさ 四葉のクローバー探

          光の熟した涙

          さみしがり屋の編み物

          まるまった背中で まあるい老眼をかけている 豊麗な陽射しが燦々と降り注ぐ 植物だらけ部屋の隅 ちょこん、と椅子に腰をかけて さみしがり屋は編み物をしている ひと編み ひと編み 柔らかな毛糸の花模様を編んでいる ひと編み ひと編み 彼女の日々のこころが編み込まれてゆく さみしさや愛おしさ なみだや不安 少しの怒りや皮肉さ ゆっくりゆっくり編み込まれてゆく彼女の想い わたしは彼女の 毛糸で編み込まれた孤独で優しい花畑へ 行ってみたいと思う きっとそこには 夢のような花が咲き なみ

          さみしがり屋の編み物