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『ゆれる人魚』観た。

記事の中ほどから映画の内容を喋ります。
その時は合図するので、都合の良いところまでお読みください。

夏休みの間にある本を読んだんですよ。

その本は美しいだけじゃあなくって、醜い、というよりは見にくい、目を逸らしたくなるような内容で、でも読みました。

そのときの読了感、というか読書体験全体の構造が、過食嘔吐に近かったなぁと思うのです。不快さと情報量を我慢して我慢して、最後に吐くとか読み切るとかの快さでチャンチャン、はいおしまい。という感覚が。

過食嘔吐やろうと思ったことあります? 無いかな、私は中学校の時に過食嘔吐をしたくなって、今でも覚えている、スマートフォンもパソコンも何も持ってなかったから、図書館のパソコンで「過食嘔吐 やり方」って調べたんですよ。
律儀ですよねこの時の自分、やりかたなんてもう字面からわかりそうなものだけど、一応ちゃんと調べたんですよね。

それで今でもそうなのかな、その過食嘔吐のことを説明してる公式サイトみたいなものをGoogleが教えてくれたから、それをクリックして。

そうしたらホームページにでかでかとマーライオンが出てきたんですね。

なんかそれで色んな思いがこみ上げて、一番は「いやしょうもな」っていう感情、二番目は「シンガポールに訴えられない?」という感じで、それで。
惰性で何個か記事読んで、やめました。何か適当に本でも借りて帰ったんじゃないかな。

それで本題ですが、今さっき、本当に数分前に映画を観終わって、今、過食嘔吐の気分です。映画における過食嘔吐。

苦しかったです。観るの。
映像や歌は美しいし、色んなことを考えたし、この映画は素晴らしいと評価はできるけど、苦しかったのは否定できない。あぁでも終わりまで本当に美しかった。
そもそもこの映画を観ようと思ったのが「美しいものが観たい」っていうもので、それは見事に解決されたわけです。本当に美しかった。何回言うねんって感じですよね。はい。

この映画、あんまり台詞の印象が残らなくて、音と歌と映像、この要素が凄く大きかったなぁと思います。今頭の中に渦巻いている映像とか断片が全部そう。付け加えるなら血と肉と水。
そう、しっかり書いてあるけどR15なので観るとき気を付けてくださいね。

未だに映画の感想の書き方がいまいちよくわかってないけど、そうですね、観よっかな~って思ってる友人に意見を求められたとしたら、

「観て後悔はしなかったけど人は選ぶ、でもマジで美しいしなんなら何かしらのフェチに目覚める可能性ある」
「あっでもR15だしジャンルはホラーだからもし何かしらの地雷があるなら気を付けてね、でもこのR15シーンは作品において必要だったよ」

って言うと思います。
なお、「やけにビビらせるし人死ぬけど結局アレは作品において必要だったん? って考えると微妙」なショッキング演出が地雷な人間の言葉です。

さて、どうしても書きたいので、ある登場人物の話をします。

これ以降、映画の内容を含みます。



この映画の中で一番好きな登場人物がいます。
私はあまりおぼえがよくないのと、この映画自体があまり人に名前を名乗らせないような感じがしたので、名前はわからないのですが。

映画冒頭、人魚たちにバンド仲間が誘われているのを見て悲鳴を上げた、あの女性です。ボーカルで、髪がふわふわするようなパーマをかけて、煙草の似合う、あのひとです。

好きでした。報われなくて。

この映画の中でよく映し出された女の人ってたいてい報われてない気がします。
ゴールデンは姉を失うし、シルバーは想い人と結ばれるために尾まで切ったのに泡になるし、ついでに言えば泡にした男の奥さんもマジ報われない。
私は奥さんの初登場シーンでちょっとシルバーの面影を感じてしまったので、勝手に報われなさ度を上げてますけれども。

その中でも私のイチオシの彼女は、失ったものがちょっと特殊かなぁと思っています。母性です。

ふたりの人魚を抱き、乳房を吸わせて、自らも姉妹と同じ尾を揺らす、そういう空想を男に愛撫されながらするシーンがありました。
それ以前もそれ以降も何回か想起させるシーンがありましたが、まぁとにかく姉妹に対して母性を抱いている、ように、見えます。

ゴールデンが姉の仇ともいえる男の喉を噛みちぎり、人間どもを睨みながら水辺に駆け寄る。
そのとき、最後にゴールデンに手を伸ばしたのは彼女でした。

それを観た時の己の感情がもう、ウワ~~! でした。

普通に、ゴールデンはその伸ばされた手を気にも止めないわけです。本当に何も気にしてない。見つめることも払うこともしていない。
ただ口から仇の血を垂らしながら、水辺に向かっているだけです。

白っぽいドレスを着た彼女の腕は、ゴールデンを抱きしめようとしていたんじゃないかと思ったんです。根拠とかないのでマジで直感ですが、抱いて、守ろうと、してたのではないかと思ったのです。

その手が、払われたのではなく、ただ無視されたのが、報われなさ度ナンバーワンです。

多分、純粋な母性だけではなくて、あんなに美しい人魚らの母親になることで、自分はそれを超える美しさを持ちたい、珍しい存在になりたい、みたいな、歪んだ暖かみだったように思います。

なので私は彼女が好きです。一番人魚に寄り添った心を持っているのに一番人間なので。

彼女が歌ってる歌全部好きでした。
人魚には劣っていたのかもしれないけれど。

以上。



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