大英博物館 北斎-国内の肉筆画の名品とともに-

サントリー美術館で、6月12日まで、大英博物館 北斎 ー国内の肉筆画の名品とともにー が開かれています。(チケット:1,700円)

大英博物館 北斎 ―国内の肉筆画の名品とともに― サントリー美術館 (suntory.co.jp)

案内には、以下のように書かれています。

江戸時代後期を代表する浮世絵師・葛飾北斎(1760~1849)は、世界で最も著名な日本の芸術家の一人です。《冨嶽三十六景》や『北斎漫画』など、一度見たら忘れられないインパクトを持つ作品の数々は、国内外で高い人気を誇っています。
北斎と海外との関係については、モネ、ドガ、ゴッホら印象派およびポスト印象派の画家たちによる北斎への傾倒や、フランスを中心としたジャポニスムへの影響が有名ですが、イギリスにも多くのコレクターや研究者がおり、その愛好の歴史は19世紀まで遡ることができます。なかでも大英博物館には、複数のコレクターから入手した北斎の優品が多数収蔵されており、そのコレクションの質は世界でもトップクラスです。本展では、この大英博物館が所蔵する北斎作品を中心に、国内の肉筆画の名品とともに、北斎の画業の変遷を追います。約70年におよぶ北斎の作画活動のなかでも、とくに還暦を迎えた60歳から、90歳で亡くなるまでの30年間に焦点を当て、数多くの代表作が生み出されていく様子をご紹介します。また、大英博物館に北斎作品を納めたコレクターたちにも注目し、彼らの日本美術愛好の様相を浮き彫りにします。

偶々、東北大学の田中英道先生の本を読んでいた最中でしたので、良いタイミングでした。

フランスを中心としたジャポニズムへの影響を与えた《冨嶽三十六景》の景色がそこにはありました。精緻で微妙な構図、表現、色使い、筆のタッチ...皆さん、引き込まれているのでしょう、一つ一つをじっくりご覧になられていました。

それ以外にも、初めて目にした「弘法大使修法図」などが展示されていました。《冨嶽三十六景》とは全然雰囲気が異なります。田中先生の本の中には、

「最晩年の最大の作品らしいのですが、弘法大使になりきった北斎が、周りにいる鬼のようなお化けの脅迫を祈ることによって耐えていこうとする姿が描かれています」と説明されていました。

また、北斎は、名前を何度も変えています。勝川春朗(美人画:豊満で頬の下もふっくら)➡叢春朗➡俵屋宗理(画風一変/美人画:細面の顔)➡可候➡不染居北斎(下細りほっそりした女性)➡北斎辰政➡ という名前の由来についても展示されていました。ここでは田中先生の説明を引用します。

「酒落せい、阿保くせい」の語呂合わせとして考えたというのが正解だと思う。「酒落せい」というのは、写楽という存在が「しゃらくせい」時代だったということだろう。そして、「阿保くせい」は、「あっ、北斎」の語呂合わせである。北斎は「阿保くせい」にどんな意味を込めたのか。これは、自分そのものの愚直さ、阿保くささといったものに依拠して絵を描いていこうという宣言ではないのか?揶揄的な言い方ではあるが、江戸後期というのは、こういう粋とか通というものが非常に重視された。「粋な生き方」と同時に「通である」ことが、芸術家の生き方にとって大事なのである。

あと、面白い説明として、「師造化」という言葉です。

宗理時代から、北斎は「師造化」という印を使っていた。「師造化」とは、「唯一の師は造化である」ということであり、「造化」とは、宇宙や万物、天地や自然を創造する神のことであり、また自然の摂理や天地宇宙そのものをいう。この言葉は、ダ・ヴィンチが、「美術の師は自然である」と言ったのと同じことである。キリスト教圏に生まれたにもかかわらず、神とはいわずに自然という言葉を使って絵を描いていた。東西の巨匠が異口同音に同じ精神を語っているというのだ...




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