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ChatGPTでの財務解析:危険な企業の早期発見への活用(テンプレート付)


はじめに

近年AI技術の進化とともに、ChatGPTを利用しての株式投資のアプローチが注目を浴びています。本アカントでも、ChatGPTを用いた財務分析についていくつか記事を執筆させていただいており、多くのアクセスを頂いています。

特に、自然言語処理では多くの情報を瞬時に処理し認識することが可能であるため、株価の直接予測より、現在の状況、過去の状況を解析することを得意とします。

今回の記事では、これまで経営者の方、投資家の方が行っていた、企業の財務データから異常値を検出し、企業の経営リスクを早期に捉える判断を、ChatGPTを使用して検出する事が可能かを実験しました。

本アカウントについて

本アカウントではChatGPTを経済、株式等に応用する手法を考察、情報共有しています。よろしければ、ほか記事もご参照、アカウントのフォローをいただけますと幸いです。

異常値とは何か?

異常値とは、一般的な範囲から外れる極端に高いまたは低い値のことを指します。財務データにおける異常値は、企業の経営上の問題や将来のリスクを示唆することがあります。例えば、流動比率が突如として大幅に低下した場合、企業の短期的な資金繰りに問題がある可能性が考えられます。

ChatGPTを使った異常値検出の方法

  • データの収集:対象となる企業の過去数年間の財務データを収集します。

  • 質問の定義:ChatGPTに質問する際のテンプレートを作成します。

  • データの提示:収集した財務データをChatGPTに提示します。

  • 分析の実施:ChatGPTによる分析結果を確認し、異常値の有無やその原因を特定します。

ここでも過去の記事と同様に、テンプレートを作成すること、実データを添えることが大切です。実データを添えないと、過去の情報をもとにChatGPTが財務データを創作する事例を確認しています

異常値検出の利点

ChatGPTを用いた異常値検出の利点として以下のようなことが挙げられます

  • 早期リスクの発見: 経営上の問題や将来のリスクを早期に捉えることができる

  • 詳細な分析:大量のデータを迅速に処理することが可能

  • 再現性のある手法: 同じデータと質問を用いることで、一貫した結果を得ることが可能

  • 見落とし防止:人為的な情報の見落としが発生するリスクがなくなる

⚠️注意点

ChatGPTの分析結果は一つの参考情報として考え、実際の投資判断には十分な検証を行った上で実行してください。また、異常値が検出された場合、それが必ずしもリスクを意味するわけではありません。異常値の背景や原因を正確に理解することが必要となります。当アカウント発信の情報に基づいて投資判断を行い、損失が発生した場合でも、当方は一切の責任を負いません。

解析事例:楽天グループ

まず、現在経営状況が悪いことが明らかになっている楽天グループ(E05080)を用いて解析を行ってみます。当該企業はモバイル事業で状況が年々厳しくなっているため、解析に提供するデータ年数を変えて、どのように見解が変わるか確認してみました。

※質問文は有料記事部で販売している都合から、ChatGPTからの回答のみを記載します

質問に用いる実データは下記ツールで取得しました
ChatGPTの学習データは2021年までを対象としており、ChatGPTが楽天の経営状況をデータとして持っている可能性があるため、企業名を伏せる形で質問を行っています。

2022年までのデータ

すでに業績が大幅に悪化している状況は公知になるほどですので、企業の経営の悪化が顕著であり、特に営業利益率や純利益率の低下が投資リスクを示しているとしています。

==OUTPUT==
1. 異常値検出結果項目名:
・売上高営業利益率: 2019年に5.76%、2020年に-6.45%、2021年に-11.58%、2022年に-18.94%と急激な低下。
・売上高純利益率, ROE, ROA: 複数年度に渡り「赤字」と記載。
キャッシュ・コンバージョン・サイクル: 2008年から2012年までの異常に長い日数。
・手元流動性比率: 2022年に29.82月と過去最高。
・当座比率: 2022年に6.45%と極端に低い。
・PER: 2022年に-3.07倍。
・EPS: 複数年度に渡り負の値。


2. 異常値の原因
2019年以降、売上高営業利益率の急激な低下が見られ、2020年以降は営業赤字が拡大している。これに伴い、純利益も連続して赤字となっており、経営状況が厳しさを増していることが伺える。
キャッシュ・コンバージョン・サイクルや手元流動性比率が高い値を示していることから、資金繰りに関する問題が考えられる。
当座比率の低下やEPSの負の値など、財務健全性が低下していることが指摘される。


3. リスク評価
持続的な収益の低下による経営の悪化
資金繰りの悪化による金融機関からの信用低下
株主価値の低下に伴う株価の下落リスク
影響度: [高]

4. まとめ
[異常値検出の結果とその意味合いに関する総括]
当該企業の過去数年間の財務データをもとに、経営の悪化が顕著に見られる。特に、営業利益率や純利益率が赤字を示している点は、投資のリスクが高まっている可能性を示している。
現在のデータのみを鑑みると、投資を控える、もしくは非常に慎重な判断を行うことを推奨する。
更なる詳細な業界分析や企業の内部事情を把握することで、より的確な投資判断を下すことが可能となる。

[投資判断に対する提案や注意点]
当該企業の近年の業績悪化の背景や原因を十分に調査し、将来のビジネス展望や業界の動向も踏まえた上で、投資判断を行うことが求められる。
その他、企業の資金繰りや流動性の状況、債務負担等も考慮に入れ、総合的な判断を行うことが重要である。

2020年までのデータ

こちらも赤字が2年継続しているため、営業利益率の大幅な低下を懸念点取して挙げ、特に収益性と流動性・資本構造の悪化は中長期的な企業価値の低下を予測しています。

1.異常値検出結果項目名:
・売上高営業利益率: 2020年の-6.45%
・売上高純利益率: 赤字が2020年を含む複数年度で出ている
・ROE: 赤字が2020年を含む複数年度で出ている
・ROA: 赤字が2020年を含む複数年度で出ている
・仕入債務回転期間: 2018年以降のデータ欠損
・キャッシュ・コンバージョン・サイクル: 長期間のデータ欠損
・当座比率: 2020年の10.79%が過去最低
・自己資本比率: 2020年の4.90%が過去最低

2.異常値の原因
・背景の考察 2020年における業績の低下や一部の財務指標の異常は、外部要因や市場の変動、また企業の内部経営の課題に起因する可能性が高い。特に営業利益率や純利益率が大きく低下していることから、企業の収益性が大きく損なわれていることが示唆される。

3.リスク評価
[リスクの内容]: 財務健全性の低下や収益性の悪化
影響度: [高]

4.まとめ 
[異常値検出の結果とその意味合いに関する総括]
2020年度の財務データを中心に、当該企業の収益性と財務健全性に関わる複数の指標で異常値を確認しました。これは、企業の基盤となる経営体質の悪化を示すものと考えられます。特に収益性の大きな低下と流動性、資本構造の悪化は、短期的な経営の課題を超え、中長期的な企業価値の低下を予測させる指標となっています。

[投資判断に対する提案や注意点]
現在の財務データを元にすると、当該企業に対する投資は高リスクと評価されます。企業の経営方針や将来の成長戦略、対外的な環境変動を含めた詳細な情報をもとに再評価することを推奨します。特に、これからの経営改善策や新しい収益源の開拓についての明確な情報が提供されるまでの投資は慎重に検討する必要があるでしょう。

2019年までのデータ

この年は赤字に転落した年に対応します。
営業利益率の大幅な低下を懸念点としてあげており、リスク評価として、将来的な業績悪化や資本効率の低下を示唆するとしています

==OUTPUT==
1. 異常値検出結果項目名:
・売上高営業利益率: 2019年の5.76%は過去10年間で最低の値
・売上高純利益率: 2019年の赤字は過去のデータと比較して異常値
・ROE: 2019年の赤字は過去のデータと比較して異常値
・ROA: 2019年の赤字は過去のデータと比較して異常値

2.異常値の原因
・背景の考察
2019年の営業利益率や純利益率、ROE、ROAなどの著しい低下や赤字は、業界内の状況や経営戦略、外部環境の変化などの要因が考えられる。具体的な要因を突き止めるためには、業界の動向や同社の経営報告書、ニュース等の情報を調査する必要がある。
3.リスク評価
・リスクの内容:
2019年の異常値は、将来的な業績の悪化や資本効率の低下を示唆している。
・影響度:高

4.まとめ
[異常値検出の結果とその意味合いに関する総括]
この企業は過去数年にわたって利益の低下や赤字の継続が確認されています。特に営業利益率や純利益率の低下は、業績の悪化を示す重要な指標となります。また、いくつかのデータ欠損も懸念点として挙げられます。


[投資判断に対する提案や注意点]
現段階での投資はリスクが高いと考えられます。特に、経営の健全性や財務の持続可能性を評価する上で重要な指標が複数悪化しているため、投資前に十分なリサーチと分析が必要です。また、今後の業績予想や経営方針の変更など、追加情報の取得をおすすめします。

2018年までのデータ

最後に赤字に転落する1期前の2018年までのデータを用いて解析を行いました。2018年はモバイル事業が始まった年であり、まだこの時点では経営へのインパクトは小さい状況であっため、リスクは中という評価になっています。ただし、新規事業(モバイル)への投資の兆候を財務データから読み取っており、新しい事業への投資のリターンが期待以下となるリスクを注意点として挙げています。

==OUTPUT==
1. 異常値検出結果項目名:
売上高総利益率(粗利益率): 2012年に85.67%と他年と比較して特に高い。
売上高営業利益率: 2016年の10.04%が前後の年と比較して低い。
売上高純利益率: 2008年と2011年に赤字。
ROA: 2008年と2011年に赤字。
たな卸資産回転期間: 2015年の1.33月が突出して高い。
キャッシュ・コンバージョン・サイクル: 2012年の-199.85日が他の年と比較して非常に長い。
手元流動性比率: 2018年の14.98月が他の年と比較して突出している。
売上高成長率: 2013年の29.50%と2017年の20.79%が高い。
営業利益成長率: 2017年の90.22%が非常に高い。

2.異常値の原因
・背景の考察 2012年の売上高総利益率の上昇や2016年の売上高営業利益率の低下など、異常値が散見されるが、これは新しい事業の投資、市場環境の変化、業界内の競合状況などが影響している可能性がある。特に、2011年と2013年の成長率が高いことから、企業が成長フェーズにあったことが伺える。

3. リスク評価
[リスクの内容]
市場環境の変化や競合との競争激化による利益率の低下。
新しい事業への投資のリターンが期待以下となるリスク。
影響度: [中]

4. まとめ
[異常値検出の結果とその意味合いに関する総括]
上記の異常値が検出されましたが、これは企業の成長フェーズや投資戦略、外部環境の変化などが背景にあると推測されます。異常値を単純にネガティブな指標として捉えるのではなく、背後にある要因を深く探る必要があります。

[投資判断に対する提案や注意点]
投資を検討する際には、異常値の背後にある要因や企業の将来的な成長戦略をしっかりと確認することが重要です。特に、利益率の低下やキャッシュフローの悪化など、持続的な業績の低下を示す指標が見られる場合は、投資のリスクが高まる可能性があるため、注意が必要です。


まとめ

ChatGPTを用いた異常値検出は、企業の経営状況評価に有用なツールとなることが、上記の分析結果から示唆されることがわかります。このような自然言語処理AIによる財務分析手法は、投資家にとって貴重な情報源であり、企業の状況評価と投資判断において十分なリサーチと分析を行う際の有益な支援ツールとして活用することが期待できます。

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