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スポーツ外傷からの復帰にミラクルはない

 今担当している競技でも、これまで担当してきた競技でも、「外傷の治療」というものがないがしろにされている部分があるのは否定できない。最近気づいたのだけど、それは別に監督・コーチや選手が悪いわけではなくて、そもそも治療する我々の側がないがしろにしているからではないか?
 
 「元NPB球団のトレーナーが投球障害を治します!」

なる広告を先日見かけた、よく見ると1回90分3万円!なる施術代金。この人本当に投球障害分かってるの?本当にプロ野球球団でトレーナーだったの?もし元プロ野球球団のトレーナーで投球障害の事ちゃんとわかってたら、そんな商売してて辛くない?だって、冷静に考えて1回3万円の治療、月に何回受けられる?週に1回でも12万円、それでちゃんと負傷前と同じように投げられるようになるかどうか、はそれまでのトレーナーとしての経験でご存じのはず…。

 基本的に毎日マッサージやストレッチ、日によって、あるいは段階によってはスローイングプログラム、そしてそれを行った後に、投球によって負荷がかかる部位の筋力強化、でアイシングと痛みに対する物理療法、これを中学生や高校生(場合によっては大学生)が遠路はるばる自院に通ってくれるとしても、やはり最低週2回、できるなら週5~6回のセッションを半年から1年というタームで取り組まないと治らないのが投球障害、いやそれ以外のスポーツ外傷でも期間の長さ以外はそうでしょう。

 選手が150km/hのストレートを投げられるようになるまで、あるいは選手が1万mを29分で走れるようになるまで、100mを50秒で泳げるようになるまでどれだけ一つ一つはとても小さな努力を積み重ねてきたのか、負傷して、それがもう一度できるようになるために90分3万円の治療数回で済む、なんてものすごい都合のいい話だと思いませんか?選手や指導者が「ミラクル」を妄想しているならまだ理解できますが、治す側の我々がそんなミラクルを選手や指導者に期待させているのではありませんか?そりゃ、各競技チームが自前でアスレティックトレーナーを置こうとは思わないでしょうよ、外部の先生のところに月1回くらい行けば何とかなるんじゃない、ってなるのも無理はありませんよね。

「じゃあどうすればいいんだよ?」言いたくなる気持ちはわかります。アイデアはありますし、それを何年間か実践もしてきました。よくある「大学教員・研究者の机上の空論」ではありません。もし本気でそれを考えておられるなら相談には乗ります、無料というわけにはいきませんが…。


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