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チームにアスレティックトレーナーという存在を根付かせるための3つのポイント

 日本人のNATA-ATC資格取得者が現れて40年が過ぎ、日本スポーツ協会やJATACなどの国内での認定制度が誕生してから20年以上の月日が流れ、アスレティックトレーナーという名称はある程度(アメリカ国内と同じくらいには)認知度を得ていると思われる2019年ではある。しかしながら、それが職業として確立されているか?と問われると、残念ながら未だに本邦は20年前のアメリカの状態からですら程遠い。

 その原因は「アスレティックトレーナーとは何をする人ぞ?」という部分があまりにも曖昧過ぎるからであり、当該国内資格を有する人たちの間でも何をする人なのか理解しきれていないのではないか?と思われる事例に多々遭遇する。では、米国に留学しATC資格を取得した人はどうなの?というと、日本国内で有効な医療資格を持たない人はとくに、コンプライアンス上の問題が気になって、本来アメリカで積んできた経験を活かすことができない状態におかれているのが現状だ。

 私自身も、お手伝いして10年目になる中学生の硬式野球チームでは「強化」担当のトレーニングアドバイザー(アメリカならNSCA-CSCSの資格を持つ方が受け持つであろう)という立場から始まり、2年目でようやくチーム全体の健康管理を受け持ついわゆるATC的な立場を作り出すことができた。また、ある大学のスポーツチームにおいては「ケア(と称したマッサージ)」をしてくれる人、という立場から少しづつではあるが、本来のチームを預かるアスレティックトレーナーとしての業務に近づけている最中でもある。もちろんこの2例はどちらかというと成功例であって、そこに全く届かず徒労に終わった例は数多く存在する。

 全米アスレティックトレーナー協会(National Athletic Trainers’ Association: NATA)が定義するアスレティックトレーナー(以下AT)の業務は以下の6つのドメイン(領域)に分かれている。

1. 外傷・障害予防
2. 外傷・障害の認知と評価
3. 応急処置
4. 治療、アスレティックリハビリテーション、リコンディショニング
5. スポーツ医学サポート組織の運営
6. 職業の発展、職務に対する責任をもつこと

上記6項目のうち、5番目の「スポーツ医学サポート組織の運営」を競技スポーツの現場に理解してもらい、単なる(上記1に相当する)「トレーニング指導担当」あるいは(上記4に相当する)「ケア担当」ではないチームのATとしての立場をどう確立してゆけばよいのか、をここでは書き残したい。「自分はトレーニングを担当する専門家の中のさらに専門家だ!」とか「マッサージやケアこそが俺の輝くステージだ!」という方はここから先は読む必要はない(ただしご自身をアスレティックトレーナーだと名乗らないでいただきたいものだが…)。もしチームのアスレティックトレーナーとして何をすべきか、そのためにはどうすればその地位を確立できるか、を日々考えている方にこそ読んでいただきたい。

 もちろん、この記事は私が留学を終えて15年の試行錯誤の中からうまくいったケースにおける特にポイントとなった要素を記すので、タダで、というわけにはいかない。前置きに比べてこの先の文字数もこれまでの有料記事に比べて少ないと感じるだろう。でも、こちらも商売敵を増やすかもしれない企業秘密を出そうというのだから、そこはご理解いただきたい。

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