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Yoshiatcのトリセツ

 今年の夏も3回、計35日間皆さんの合宿に帯同します。3回の合宿のたびに同じ文章をチーム全体にLineで回すのも大変なので、ここに記しておくので、選手の皆さんは(少し長いかもしれませんが)目を通しておいてください。皆さんが気持ちよくこの合宿に参加できるように…。

 


基本的な使い方

 私の立ち位置は「大学から部に派遣されたアスレティックトレーナー」であり、チーム全体(本来はこの合宿に参加している選手だけでなく部員全員、なかなか完全に目を行き渡らせることは難しいですが…)に責任があります。ですので、基本は何かあれば(マメが破れたとか爪が割れた、とかでも遠慮なく)まず私に声をかけてください、可能なかぎりその場で対処します。ただし、何か緊急の要件が発生したときは、このチームに所属する選手の命、あるいは健康を守るために(私からみて)優先順位の低い仕事を後回しにすることがあります。その場合は「朝練習から昼食の間に診せにきてね」とか指示します。場合によっては「朝練習の前(5:15am) にテーピングを…夕食後、就寝までにエクササイズとアイシングを」とか、一日複数回私に顔を見せにくるように指示することもあります、あなたのためです、それには従ってください。

宿舎では2台の治療台、学生アシスタントと2名、あるいは3名で対応します

チームのアスレティックトレーナーという立場

 選手の皆さんがこのチームに合流されるまでにお世話になった「トレーナー」さんと私の仕事のスタンスは少し、いやもしかしたら大きく違っているかもしれません。皆さんの負傷等の状態によっては、5分のケアで済むものもあれば、2時間かかりっきりになる、あるいは選手と外の医療機関に同行している可能性もあります。ですので皆さんになじみのある「1回XX分の枠で(1日n人)施術(マッサージ)」というような仕事は行いません、その部分は今回の合宿では(皆さんの部費から)外部の治療家の先生をお呼びしておられますので、そちらにお任せしています。ごくまれに、「私がいいと言うまで、外部の先生の施術は我慢してね」というコトがあるかもしれませんが、基本、その先生の手助けを活用させていただいております(ですので私の詰めている部屋を「マッサージ部屋」とされるのは少し心外です、それ以外の仕事がほとんどですので)。私としては「そこの合宿・宿舎に私の担当する患者さんが複数人いる」のではなく、「チームがこの合宿で成果を出すために全員を対象として仕事をする」目的でここにいます。

余談1:以前一緒にお仕事をさせていただいたある個人競技(競泳)チームの監督には上記したような私の強いこだわりのせいで困惑させてしまったかもしれません。そことの最初の関わりは、私がある選手をお預かりして、その(ひとりの)選手が大会で結果を出せるように遠征先まで招聘いただき、その流れで翌年からそのチームを引き受けることになったという経緯でした。私もそれまでのそのチームが招いていた「トレーナー」のように「1回XX分の枠で施術」すると思われていたのだと思いますが、当時はうまく説明できませんでした。きっと監督がうまく選手を交通整理してくださっていたのだな、と今になって思います。

練習後、とくに就寝前にできることは限られます…

夜の仕事(笑)について

 私のことを知ってくれている選手はもうすでにご存じだとは思いますが、私は選手が「練習時(試合時)にキレのあるよい動きができる」ことを目指してマッサージ(本来は徒手療法と呼んでますが、皆さんにはマッサージの方がわかりやすいですよね)やストレッチを行ったりします、ようするに「Before」の仕事として、です(消灯時間以降にキレのある動きが欲しい、というのなら、具体的にどんな運動をされるか説明いただければ相談に乗らないこともないですけどね、笑)。練習などで筋などにダメージ受けた後の「After」については皆さんの期待に沿えるような内容ではないことがほとんど、皆さんの言葉でいうと「塩対応」かもしれません。「オレは揉み屋じゃねえ」とわがままを言ってるわけではなく、就寝前に何か凝った施術をしたとしても、睡眠をとって起きたら身体の状態は変わっています、またその時間に筋のダメージを広げるような施術をするよりも、質の高い睡眠・休養によってそれらのダメージがある程度修復されることも期待できます。もし私が必要だと思えば、起床後、早朝練習の前の時間に(4時起きであっても)それらの徒手的療法を行うこともあります(1次合宿ではその必要があったので4時45分から仕事しました、普段チャラけていても、やるときはやります、笑)。そのへんについて「なぜなんだろう?」と思う選手は以下のリンクを読まれることをお勧めします(その疑問はなかなか選手としていい姿勢だと思いますよ…)。

それでは、お互いにとって良い合宿になりますように…


日本って広いんだ、を実感させていただいております

おまけ:何かの間違いでこの投稿にたどり着いた同業者(アスレティックトレーナー)の方へ…

 同業者の皆様、ここから先は少し私が毒を吐きます、そのつもりで、自己責任で読み進めてください、選手の皆さんは(あるいは監督・コーチ・マネージャーさんも)間違いなくもう寝る時間です、このあと凄いボリュームになりそうです、明日の練習に差し支えますので、先は読まなくていいですからね(笑)。

 ところで、競泳とか陸上の現場で良く依頼される「ひとりXX分でお願いします」ですが、これって大きなリスクをはらんでいないですか?たとえば急に何か起きたときに全く対応できなくなる、あるいは何をすべきかの優先順位がおかしくなったり、とか…。私が以前遭遇したケースを以下に紹介します。

 ある年の競泳の大会でした。私はトレーナーを帯同させていないチームの選手たちのために大会主催者から依頼され、公認コンディショニングブースを教え子たちと出展していました。それまでのその活動が認められ、主催者からプールのフロア以外での救護担当としても業務委託を受けた年でした。

コロナ禍で途切れてしまいましたが、なかなかいいブースだったと思います。
当時の教え子たち、どうもありがとう! 

大会初日、ブースの準備ができ、その後はじまった開会式の途中に、早速ある強豪大学のマネージャーが飛び込んできました。「うちの選手が熱中症の疑いで…」との事。「あれ?お宅さんの大学は何人もトレーナーさん、いますよね?」と疑問に思いましたが、言われるままにその大学の控え場所に伺うと…

そこにはなんと4台のマッサージベッドがおかれ、4人の「トレーナー」さんが一所懸命に施術しておられる、そして熱中症疑いの選手はそこに放置されている…ありえない!

 後でわかりましたが、1人60分として、ひとりの「トレーナー」だと1日に8枠から9枠しか取れないので、選手全員が1日1回は施術が受けられるように、複数名の「トレーナー」を擁していた、そして、それぞれの「トレーナー」には選手の割り振りがあって、開会式に熱中症を発症し、放置されていた選手はまだ競技レベルが低くどの「トレーナー」の担当でもなかった、と…(僕にとってはどうでもいい話ですが、最も競技力の高い選手を担当する人が偉い!みたいな空気も…なにそれ。それならウチで一番偉いのはケニア人留学生選手を触らせている学部3年生女子だわ)。

「目の前で苦しんでいる選手を放置して自分の仕事にいそしむ、そんな立場の人を、(アスレティック)トレーナーと呼ぶのやめてくれないかな…」私の心の叫びでした。

それは単に外から呼ばれた治療家で、たまたま同じ会場、同じチーム所属の選手複数名をクライアントに持っている、だけの人が何人かいただけ、ということでしょう?そんな立場の人を「アスレティックトレーナー」と呼ぶのはどうかと思う。ちゃんと処置しないと、目の前で死ぬかも、あるいはその後ずっと後遺症に悩まされるかも、という選手を放置してシャカシャカマッサージしていられるなんて、私には理解できませんでした。もう少し若ければ、

「お前ら何してんねん?今ここで揉んでる場合ちゃうやろ!」

と吠えまくったかもしれません。べつにその選手、そこで今あなたに揉んでもらわなくてもきっとすごいタイム出ますよ、それに、今そこで凄いタイムださなくても全国大会に出られるだろうし、そのときに大活躍すればいいだけの話でしょう?

怒りを通り越して、あきれて何も言えなくなったことを昨日のように覚えています。それまで野球での業務がほとんどで、新しい現場で摩擦を感じていた私に

「それぞれの競技が持つ文化を否定してはいけませんよね」

と競泳が長い同業の方が諭してくださったことがありましたが、この件だけは「文化」と片付けるにはあまりにも…でした。あれからしばらく経ちますが、あの大学のチーム、その後少しは改善されているのでしょうか…。これは治療家側の問題だけではなく、そういう仕組みを作ってしまっているチーム側にも問題ありますよね…

こういう、選手の命あるいは健康を守る、あるいは私たちの働く環境を良くしたい、と思えばいくらでも問題点が浮かび上がるので、ひとまずここでPCを閉じることにします。

あ、今の私の現場ですか?さすがに「監督って、主務の延長ですから…」と言われるだけあって、上手く棲み分けができています。ありがたいことです。


このnoteをご覧くださりありがとうございます。サポートいただけた際には子供たちが安心してスポーツに打ち込める環境づくりに使わせていただく所存です。よろしくお願いいたします。