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良いことだけを想定したくない

少し前にこんな記事を書いた。

私にしてはわりと反響があり、Twitterでも多くの方にコメントをいただいて嬉しかった。

内容はざっくり言うと下記の通り。

①「作家になる」と豪語しながら年に50枚しか書いていない同級生を見て、「それしか書けなかったら本当に作家になっちゃったときに困るのでは?」と思った。
②友人に「願いが叶った前提で行動すると叶いやすくなる」と言われて、物書きになったつもりで生活していたら、webメディアから執筆依頼が来た。


私がこの記事で言いたかったのは、

よく聞く「夢が叶った前提で行動するといい」言説は、ただ叶うと思い込むことではなく、「いざ夢が叶っちゃったときに困らない自分でいる」ことなのでは?

……ということだ。

人生、何が起こるかわからない。なんらかの奇跡が起きて、明日いきなり夢が叶うかもしれない。

そのとき、私は対応できるだろうか? 対応できないと、せっかくのチャンスを逃してしまう。

そういったことについて書きたかったのだけど、まったくの言葉足らずだった。

結果的に「良い未来を想像することが大切! 願えば叶うよ!」と読んだ方もいたみたいで申し訳ない。私の筆力不足によって誤解を招いてしまった。

私が言いたかったのは、むしろ逆だ。

「良いこと」と同じくらい「悪いこと」も想定したほうがいいだろうし、願うだけでは叶わないと思う。

◇◇◇

夢が叶うことは嬉しいこととされているし、ポジティブな文脈で語られることが多い。

だけど、あなたは「明日夢が叶う」ところをリアルに想像したことがあるだろうか?

もしもなかったら、今すぐに想像してみてほしい。できるだけ具体的に。

100%嬉しいことしか浮かばないだろうか?

ちょっと大変なことも浮かばないだろうか?

私でいえば、明日いきなり長編小説の執筆依頼が来たら、嬉しいけどちょっと迷う。今の私の筆力を考えると、まだ無理な気がするからだ。

私はそういう、夢が叶うことの「嬉しい」以外の側面について考えることが多くて、先の記事でもそういったことを書きたかった。

私は昔から「夢が叶う=ハッピーエンド」という図式を信じていない。

叶ってからも人生は続くわけで、叶ったからこそ生じる苦労もたくさんあると思う。

◇◇◇

この記事にも書いたけど、何かを始めるときに「いいことばかりを想像する」ことがない。

未来には「良いこと」もあれば「悪いこと」もあるだろう、というのが私の考え方だ。
だから、新しいことを始めるときはいつだって、「良いこと」と「悪いこと」の両方を想定する。一方で姉は「良いことしか起こらないって思いなよ」と言う。
実際、「悪いこと」が起こる可能性は0ではない。その可能性に目をつぶり、「良いこと」だけを想像するのがポジティブなのだろうか? 辛辣な言い方になってしまうが、それは想像力の欠如とも言えるのではないか?


ライターになりたいと思ったとき、私はTwitterでたくさんのライターの方々をフォローした。

そして、色々なライターさんの色々なつぶやきを目にした。

締め切り地獄。無責任なクライアント。反りの合わない編集者。安いギャラ。炎上。企画の頓挫。

そういったネガティブな情報もたくさん目にした。中には「ぼろ雑巾みたいに扱われた」と書いている人もいた。

そういう情報を仕入れるたびに、安心した。

良い面だけを見て始めたことは、だいたい期待はずれでがっかりするからだ。

何かを始めるとき、私は「期待しすぎてしまうこと」が怖い。

すぐに売れるはず。
人気が出るはず。
褒められるはず。
嫌なことは起こらないはず。

勝手にそんな期待をして、期待通りにいかなくて落ちこむことが怖い。今までの人生で、何度もそういうことを繰り返してきた。

だから何ごとも、「いいことしか起こらない☆」ではなく、

「嫌なこともあるだろうけど、そのときはなんとか乗り越えよう」

という気持ちで臨む。

今まだライター業で食えていないことも、困窮していることも、想定の範囲内だ。「すぐに食えるようになるはず」なんて楽観視はそもそもしていない(それでもしんどくなるけどね)。

「悪い未来を想像したらそういう現実を引き寄せるから、良い未来を想像しよう」といった言説をたまに耳にする。

だけどそれって、「良い未来」ではなく「自分に都合のいい未来」では?

自分に都合のいいことばかりを想像していたら、だいたいにおいてがっかりするのではないだろうか。

◇◇◇

それに、私は「願うだけでは叶わない」と思っている。

前述の「作家になると豪語しながら年に50枚しか書いていない同級生」は、常に売れっ子作家になった自分を想像していた。出す作品がすべて文壇で高く評価される前提でいた。

イメージトレーニングだけなら充分できていた。

だけど、そんな都合のいい未来は訪れなかった。

願うのは、徒競走の「位置について」のようなものだ。「用意」して「ドン!」で走り出さなければ、絶対に叶わない。

走り出したところでゴールできるとは限らないし、ゴールできても希望通りの順位とは限らない。

……なんて身も蓋もないんだろう!

◇◇◇

願うだけじゃ叶わないし、願って行動しても、絶対に叶うという保証はない。

それでも、願わずにはいられないし、行動するしかない。

保証がないのにやるしかないなんて、本当に身も蓋もない。モチベーションを保てなくなることもある。

でも、しかたないじゃないか。他にやりようがないんだから。

今の私には夢がある。

それは、cakesの連載「小屋ガール通信」が人気になって書籍化してドラマ化されて、若手スタッフ役を菅田くん・神木くん・染谷くんが演じることだ(念のため断っておくと、そんな眼福の年は一度だってなかった)。

叶ったつもりで行動を続ければ、その夢が叶うのか否か。

実験してみようと思う。



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