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モラトリアムじゃないです

少し前に、このnoteを読んで共感した。

マッサージの仕事というのは、何かと誤解をもたれやすい職業。「それって大丈夫な仕事なん?」「エロいマッサージなん?」と聞かれた回数は3桁で収まるのだろうか。

わかるなぁ。

私は一昨年まで山小屋スタッフだったけど、山小屋もなにかと誤解や偏見を持たれやすい。

山小屋業界の実情を知ることもなく、それどころかお客として山小屋に泊まったことすらないのに、「こうなんでしょ」と浅はかな決めつけをしてくる人がけっこういた(特にちょっと上の世代に多い)。

「山小屋バイトなんて責任のないお気楽な仕事で、しょせんはモラトリアムでしょ?」

相手の言葉からそんな見下しを感じ取るたび、心の中で反論する。

モラトリアムじゃないです。この仕事を30年以上続けている人も、この仕事で家族を養っている人も、この仕事に誇りを持っている人も、たくさんいます。

山小屋の何を知ってるんですか?

山小屋なめんな。


この「山小屋なめんな」というテーマは、ずっと書きたいと思っていたものだ。

しかし、cakesで連載している「小屋ガール通信」には、あえてこのテーマは書かなかった。

「私は書きたいけど、読者さんは読みたくないだろうな」と思ったからだ。

cakesは、通勤電車の中で読む人も、家事の合間に読む人も、クタクタの一日の終わりに読む人もいるだろう。そんなとき、「職業をバカにされてムカついたエピソード」を読みたいだろうか?

読者が「小屋ガール通信」に求めるものって、「職業差別、反対!」の問題提起ではなく、ちょっとやさしい気持ちになれる娯楽じゃないだろうか。

ちなみに、私がこの考えを持つに至ったのはcakesの担当編集氏の影響が大きい。担当氏との対話によって少しずつ、読者ファーストの視点を持てるようになった。

そんな理由で、「小屋ガール通信」では意識的に、山小屋の楽しい面だけを切り取ってきた。

しかし、そのせいで、読んだ方に山小屋の仕事を軽んじられてしまうことがあった。

私の発信のせいで山小屋スタッフという職業が軽んじられたら、仲間や同業者に申し訳ない。

どうにかして、「山小屋なめんな」というテーマを書いておかなければ……。

というわけで、切り口を変えてポジティブな文脈で書いた。

ぜひ読み比べてほしいのだけど、同じ感情でも、切り口を変えることで文章の手ざわりはガラリと変わる。

このnoteは「職業に偏見を持たれることへの怒り」に、上のcakesの記事は「職業に誇りを抱くこと」にフォーカスして書いている。

読後感はまったく違うはずだ。


これからも、仕事では読者が読みたいことを、noteでは私が書きたいことを書いていこうと思う。

自分のために書く場所がないと、私は息ができないから。

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