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空を見上げて

 子どものころ、小学校のグランドに寝転がってよく空を見上げた。
 吸い込まれそうな青空を見つめていると、空の深くへ吸い込まれるというより落っこちてどこかへ行ってしまいそうな気持になった。そして、自分はどこからやってきてどこへ向かっているのか、いずれはこの世界からいなくなるのか。それはいつなのか。そんなことを考えていると頭がおかしくなりそうで、おかしくなる寸前で空を見つめるのをやめた。
 あれから50年。最近は空を見つめても子どものころのような気分にはならない。視力が弱ってピントが甘くなったのか、青空を見つめても、吸い込まれもしないし、どうにかなりそうな気持ちにもならない。しかし、年とともに鈍感力が増しているのは悪いことばかりではない。先のことをくよくよせずに今を楽しむ力もついてきた。コロナは怖いが、そのうち何とかなるだろう。外で酒も飲めるよ。なんて特に根拠もなく思う。楽観的すぎるだろうか。
 ところで、今の小学校には、グランドに寝転がって空に吸い込まれそうだ、なんて考える小学生はいるだろうか。少なくとも私の散歩コースの近所の小学校では見かけたことはない。
 仮に見かけても声はかけない。にやりとしながら通り過ぎるだろうね。

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