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ポロックの点と線

ポロックは高評価なアーティストだが、一般観衆の意見はわかれる。

インディアンレッドの地の壁画


「絵はわからない」
「アートはむずかしい」

と言われる原因の一人でもあるでしょう。

ポロックはアクションペインティングと呼ばれる。
その言葉の響きと、作風から、絵の具をたたきつけているようなイメージを受ける。
そう思っている人も多いと思う。

絵具の飛翔、飛び散りに見える。
だけど、その作品をよく見ると、それだけではないことがわかる。

叩きつけられたり、落とされた飛翔ではない、線が多い。

下の写真を見るとよくわかる。

ジャクソン・ポロック


アクションペインティングというよりは、静かにたらしている。

ドリッピ(drip)ングとは「滴らす」
しずくがポチャっと落ちた点とそのハネ。

アクションという意味では、そのハネ、飛翔のイメージが強いですが、実際には点よりも線が主役です。

線はポーリングから生まれます。
ポーとは「流す」
ポー(pour)リングといいます。

点と線から生まれる作品ですね。

福井江太郎先生のライブペインティング を見てて気づいたのですが、大作のペイントは、手首や指でなく、腕、肩、体全体を使って描いてます。

そしてポロックの場合は、刷毛の先から空中を舞ってペイントするわけですから
その軌道なども計算しつつ、カーブをきかせたり、手首を返したりして、線の行き先をコントロールしていたはずです。

また体の使い方に加え、塗料の粘度も大事な要素だったでしょう。
粘度によって、線の伸び、流れ具合が全く違いますから。

つまりポロックは荒っぽくペンキをぶつけただけの画家ではないのです。
時には繊細に、時には大胆に、時にはゆっくり、時には素早く意図的に生み出された線と、偶然に生まれた点。

ポロックを好きにならなくてもいいし、抽象を好きにならなくても生きていけます。
だけどパッと見た一瞬の感情で「これは嫌い」 「絵はわからない」と固定してしまうのは勿体無い。

技法、理論は理解しなくてもいいので、絵をゆっくり見つめてみてはどうでしょう。

彩美画廊 大北良彦

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