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大学教育

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大学教育に関わるテーマについて考えたり、学んだことを書いた記事をまとめています。
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記事一覧

アメリカにおけるFDについてのメモ

アメリカの教育開発者ネットワーク The Professional and Organizational Development (POD) Network in Higher Education は「FD(Faculty Development)」よりも「ED(Educational Development)」という言葉を使用している。このEDは、以下のような内容だと説明されている。

物理学者の誕生日:12/11~12/15

12月11日:マックス・ボルン(1882~1970) 12月11日はマックス・ボルン博士(1882~1970)が生まれた日。ドイツの理論物理学者。量子力学における波動関数の確率解釈の研究によって1954年のノーベル物理学賞を受賞。 彼はオッペンハイマー博士などの後進も多く輩出した。 12月12日:・・・ 後で追加するかも。。。 12月13日:フィリップ・アンダーソン(1923~2020) 12月13日はフィリップ・アンダーソン博士(1923~2020)が生まれた日

日本におけるFD小史についてのメモ

今回のnote記事では、教育政策に着目しながら、日本におけるファカルティ・デベロップメント(以下、FD)の広がりと課題について目を向けたい。 初めて本格的にFDについて取り上げた政策文書は1997年の『高等教育の一層の改善について(答申)』とされている。その翌年には、『21世紀の大学像と今後の改革方策について-競争的環境の中で個性が輝く大学-(答申)』が出され、それを反映する形で、大学設置基準が改訂され、FDが「努力義務」化された。 その後、『新時代の大学院教育 -国際的

ファカルティ・デベロップメント(FD)とは何か?についてのメモ

例えば、「我が国の高等教育の将来像」答申では、ファカルティ・デベロップメント(以下、FD)について、以下のように説明されている。 また、『大学のFD Q&A』では以下のように説明されている。 FDの内容は、各大学の状況や個性に依存するため、標準化・均質化できない面がある。ただし、その概観をつかむための分類や基準に関する知見は積み上げられている。 『大学・短大でFDに携わる人のためのFDマップと利用ガイドライン』(←PDF)では、個々の教員による授業・教授法(ミクロ・レベ

アクティブラーニングの陥穽に関するメモ

教育の世界で「アクティブラーニング」という言葉を耳にする機会が増えている。最近、小針誠『アクティブラーニング:学校教育の理想と現実』という新書を読んだ。アクティブラーニングに懐疑的な著者が、その歴史、そして、現場から湧き出ている課題について書いている。 さて、アクティブラーニングとは何だろうか。それに関する説明には、例えば、以下のようなものがある。 この説明では、アクティブラーニングには〈認知プロセスの外化〉が含まれていることが言及されている。アクティブラーニングは、(ざ

アクティブラーニングに関するメモ

「アクティブラーニング」は、大学の大衆化に伴って、高等教育において取り上げられ、初等・中等教育へも広がっている。今や、教育の現場にいれば、よく耳にする単語に一つになっている。 教育政策がどれほど教育現場へ影響を与えるのかを、アクティブラーニングを通して、強く感じる。 アクティブラーニングとは何か。ここでは二つの説明を取り上げよう。 教師が一方向的に何かを伝えるのではなく、学生が何か(書く・話す・発表する)をしながら、その講義で獲得すべき能力を醸成する営みがアクティブラー

物理学徒はどのような人材か ~参照基準を参考に~

大学の数は増え、大学生の数も増えている。それに伴い、「量」は増えたが「質」はどうなのか、という議論が続いてる。2008年に文部科学省中央教育審議会が出した答申「学士課程教育の構築に向けて」では、大学における教育内容や学修評価を通した「質」の管理が指摘された。そこでは例えば、授業時間外の学修を含めた単位制の徹底などが議論されている。 2010年には日本学術会議から「大学教育の分野別質保証の在り方について(←pdfファイル)」が発表され、各分野の「参照基準」が策定されることにな

大学における合理的配慮に関するメモ

九州大学に勤めていた頃、合理的配慮に関するセミナーを企画したり、関連セミナーに参加したりしていた。今回のnote記事はそれらで学んだことに関するメモだ。 合理的配慮(reasonable accommodation)の広がりは、2006年の「障害者権利条約」で取り上げられた「障害の社会モデル」に端を発する。これは障害の原因は、個人の機能障害や能力障害ではなく、「社会的障壁」の存在にあるという考え方である。 そして、社会的障壁を除去するための適当な変更や調整(=合理的配慮)

言い伝えだった学習ピラミッド

学習指導要領や大学教育(特に初年次教育)において「アクティブラーニング」「能動的な学習」「主体的な学び」「深い学び」といった言葉が良く使われる。そして、それらと共に登場する図に「学習ピラミッド(Learning Pyramid)」がある。その図については以下の文献[1,2]が参考になる。 [1] 松下佳代「『主体的な学び』の原点 -学習論の視座から-」大学教育学会誌 31 (1) p14-p18 (2009) [2] 山本富美子「明快で論理的な談話に見られる具体化・抽象化

分野を越えた「ビッグヒストリー」の大学教育における可能性

私たちは歴史を学ぶ。昔の日本には侍がいたこと、石器で狩りをしていた時代があること、恐竜がいたこと、太陽ができて地球ができたこと、ビッグバンから宇宙が始まったこと。 138億年におよぶ壮大な歴史を自然科学・人文科学を融合した視点で紐解いていく試みが「ビッグヒストリー」だ。 『ビッグヒストリー入門』では、以下のようにも説明されている。 この試みは、あのビル・ゲイツ氏を感激させ、彼の支援によって知名度をぐんと上げたそうだ。 上述の『ビッグヒストリー入門』や以下の『ビッグヒス

プレゼンテーションは"Sell yourself"

研究の過程では、学会はもちろん、その他の研究会や日常的な研究ミーティングなど、プレゼンテーションをする機会が(意外と)多い。以下では研究におけるプレゼンテーションを「研究プレゼン」として話を進める。 以前、遺伝学研究所の広海健氏による研究プレゼンのセミナーを聴講したことがある。その中でも特に「研究プレゼンと論文は何が違うのか?」という話が印象的だった。ここに備忘録として記しておく。 研究プレゼンと論文は何が違うのか?それすなわち、もたらす効果が違うとのことだった。このこと

第6回大学教育イノベーションフォーラム「若手からみた大学教育とFD・SDの未来」への参加から考えたこと

2021年10月28日(金)にオンラインで開催された第6回大学教育イノベーションフォーラム「若手からみた大学教育とFD・SDの未来」を視聴した。この会は全国各地の教育関係共同利用拠点(大学の職員の組織的な研修等の実施機関)が加盟している大学教育イノベーション日本が主催しているものだ。 参加直後にTwitterにもメモを書いたのだが、大変興味深い会でいろいろと考えさせられた。ので、改めて、このnoteにも当該フォーラムへの参加から考えたことを綴りたいと思う。 さて、今回のフ