ダフネ・デュ・モーリア「恋人」

 本作は、鳥、という短編集に収められている短編です。当作者は、ヒッチコックに映画化された『鳥』というパニックサスペンス映画の原作で有名ですが、その作風はあまりサスペンスサスペンスしていないように思います。少なくとも、この短編においては、ハラハラするような展開はあるものの、わりと淡々と綴られている印象で、ドラマティックな演出はありません。しかしながら、それを補って余りある衝撃と憐憫とある種の清々しさがこの作品にはあると思います。

 主人公はふらりと映画館を訪れた若い男です。若さゆえにお金の余裕はないものの、手に職があり、周囲の人脈にも恵まれています。そんな男は、これまた若者ゆえの惚れっぽさにより、映画館の受付嬢に軽い好意をもっています。そして、自宅へ向かうバスで偶然彼女と乗り合わせた彼は、彼女と離れるのが惜しくなり、自宅の最寄りのバス停でも降りず彼女と場末の終点まで向かいますが……。

 ネタバレになってしまうのがこわいので、あまり書くべきではないかもしれませんが純粋にラブロマンスを求める方には不向きな内容だと思います。ここから結構急展開します。ジャンルが不明です。
僕的には最高の青春小説なんですけど、なんとなく同意を得られることは少ないような気がします。

 青春小説じゃないかもだけど、きっと面白いから、気になった方はぜひぜひ。

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