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思考グセがあなたの人生をつくっている 【不安や怒りを静める心理技術:認知行動療法】

こんにちは、野口嘉則です。

あなたは、「人生はあなたの思考パターンがつくりだしている」って知っていましたか?
今日は、「思考を柔軟にすると、感情や行動のパターンにも変化を起こして人生を変えることができる」という話をしていきたいと思います。

また、今日お話しする「思考の柔軟性」を高めると、落ちこんだときに立ち上がってくるチカラも鍛えられます。
いわゆる「レジリエンス」と呼ばれる、こころの回復力のことですね。

前回の記事では、「レジリエンス」の大切な要素についてくわしくお話をしましたので、そちらも同時に参考にしてみてください。

「レジリエンス:こころの回復力」の記事↓




<感情や行動は自動思考から生まれる>


「不安」や「落ち込み」や「怒り」といった感情パターンってありますよね。
実は、感情パターンは、あなたの思考グセによって作られているんです。
また、行動というのは、そのときの感情から出てきますよね。

つまり、思考グセが感情を作り、感情が行動を生みだしているわけです。

だけど、ほとんどの人は自分の思考グセに気づいていません。

ここで、自分の思考グセを探るエクササイズをしてみましょう。
以下の状況を想像してみてください。

朝、ゴミ捨て場にゴミ出しに行ったとき、
近所の奥さんを見かけました。

あなたは笑顔で「おはようございます」と声をかけますが、その奥さんはこちらを見ることなく家に帰ってしまいました。

その時、どんな感情が出てきますか?


さあ、あなたの場合、どんな気持ちになるでしょうか?

「不安」「腹が立つ」「ゆううつな気分になる」「まったく気にならない」と、人それぞれですよね。

おなじ出来事に出会っても、人それぞれ湧いてくる感情が違うのはなぜだと思いますか?

それは「その出来事の受けとめかたが違うから」なんです。
もっとわかりやすい言葉で言うと、「そのとき、頭の中でつぶやいたセリフが違う」ということです。

先ほどの例で、それぞれの感情に対して頭の中でつぶやいたかもしれない言葉を見てみましょう。

<感情とそのとき頭の中でつぶやいた言葉例>

【不安】を感じた人のつぶやいた言葉


「私、嫌われているんだろうか」
「近所の人と関係が悪くなってやっていけるんだろうか」

【怒り】を感じた人のつぶやいた言葉

「せっかく挨拶してやったのに」
「なんて失礼な人なんだ」

【憂うつ】を感じた人のつぶやいた言葉

「どうせ自分なんて疎まれてるんだ」
「私って受け入れられてないんだ」

それぞれのセリフを、ぜひ頭の中で言ってみてください。
それに応じた感情がわいてくるのも、想像できますよね。

この頭の中でつぶやいた言葉は、頭の中に生じた思考とも言えます。
生じた思考っていうのは、意図せずして自動的に出てきますよね。これを「自動思考」と呼びます。特に、認知行動療法でよく使われる言葉です。

そして、自動思考というのは自分の日ごろの思考グセから自動的に生まれているんです。
その結果、わざわざ不安になりたいわけじゃないのに、不安の感情を作ってしまうことになります。さらに、不安にさいなまれてるときは、やっぱり行動も消極的になりがちですよね。

つまり、自動思考が、自分が意図しない感情や行動パターンを作り出してしまうわけです。


<思考という色メガネ>


そう考えると、思考グセって人生のカギを握ってると思いませんか?

だけど思考グセって、色メガネみたいなものなんです。

黄色の色メガネをかけていると、世界が黄色に見えますよね。ところが僕たちは、メガネをかけてることをいつの間にか忘れてしまうんです。
黄色のフィルターがかかっていることを忘れたまま「この世界は黄色いものだ」と思いこんじゃうわけです。

色メガネと同じように、僕たちは、思考というフィルターを通して出来事を見ています。そして、フィルター越しに見える世界が現実だと錯覚してるんですね。

それ自体は避けられないことだし、悪いことではありません。
ただ「自分の見ている世界はフィルターがかかっているんだな」と自覚することで、とっても生きやすくなるんです。


<代表的な認知のゆがみの紹介>


色メガネをかけた状態、または自分の思考のフィルターに気づかず、事実をゆがめて見てしまうことを「認知のゆがみ」と言います。
これも、よく認知行動療法で使われる言葉です。社会心理学などでは「認知バイアス」と呼ばれることもあります。

「認知のゆがみ」の中から、代表的なものを10個を紹介します。
自分にあてはまるものがないか考えながら、読んでみてください。

<代表的な認知のゆがみ>

①全か無か思考
「ものごとを見るとき、白か黒か、正しいか間違いか、といった極端な見かたをしてしまう」
(例:1つでもミスがあると仕事全体が失敗したように感じる。 ダイエット中に1度甘いものを食べてしまっただけで、今までの努力がだいなしになったと感じる。 自分の意見に賛成してくれない相手は自分の敵とみなす)

➁一般化のしすぎ
「失敗やイヤな出来事がおきると、それを全てのものごとに当てはめて、いつも必ずこうなるんだと考えてしまう」
(例: 仕事でミスが続いたとき、「自分はいつも失敗するんだ」と思う。 数人の同僚と関係が悪くなったとき、「職場のみんなに嫌われている」と感じる)

早まった結論
「具体的かつ十分な根拠がないのに、結論を出して信じこんでしまう」
(例: 廊下ですれちがった上司にひとことも声をかけられなかったのは、自分が嫌われているからだと思う。 先日ケンカした友人に留守番電話を残したのに、半日たっても折りかえしがないのは、友人が怒っているからだと思う)

べき思考
「自分に対して、あるいは他者に対して、〇〇すべきだという考えをもってしまう」
(例: 「人に嫌われるべきでない」と思っているので、だれかと気まずくなるとすごく不安になる。 「部下は上司には礼儀正しくあるべきだ」と思っているので、自分の部下が挨拶をしてこないとめちゃくちゃ腹が立つ)

自己関連づけ
「良くないことがあると、自分との関連性を裏づける根拠がとぼしくても、自分のせいだと考えてしまう」
(例: 夫のキゲンが悪いと、「なにか自分がまずいことをしたのかもしれない」と考えて、夫のキゲンをとりはじめる。 自分が幹事の飲み会が盛りあがらなかったら、「自分の責任だ」と考えて自責の念にかられる)

部分的焦点づけ
「否定的なことにのみ焦点を合わせてしまい、他のことが見えなくなってしまう」
(例: 髪を切ったら友人みんなが絶賛してくれた中で、1人だけ長いほうが良かったと言っていたので、「自分にショートは似合わない」と思い、切ったことを後悔する。 仕事で80%の高評価をもらったとき、20%の低評価があることが気になって落ちこむ)

プラスの否認
「ものごとの肯定的な面の価値をちょっと割り引いたり否定してしまう」
(例: チームリーダーとしてやった仕事を評価されたにも関わらず、「このぐらいのことは誰でもできるはずだ」と考えて、素直に喜べない。 友達に料理上手だと褒められても、「専業主婦はこれくらいみんなできるものだ」と考えて、褒めことばを受けとれない)

拡大視かくだいし縮小視しゅくしょうし
「自分の失敗や欠点を実際以上におおげさに考え、自分ができたことやいいところは過小評価してしまう」
(例: 自分と他人がおなじような失敗をしても、自分がやった失敗は取りかえしがつかないように感じ、他人がやった失敗は「そのくらいなんとかなる」と思う。 他人はすごい人にみえて、自分はダメな人にみえる)

レッテル貼り
「自分や他者のさまざまな特徴を、一つのレッテルにすり替えてしまう」
(例: 「仕事でなかなか昇進できない自分は負け組だ」と思う。 「自分の提案を採用してくれない上司は石頭だ」と思う)

感情による決めつけ
「客観的な根拠ではなく、自分の感情にもとづいてものごとを判断してしまう」
(例:「なんの希望もないように感じるから、いま抱えている問題はもうどうしようもないんだ」と考える。 「この人と一緒にいるとすごくツラいから、この人はひどい人だ」と考える。)

以上、認知のゆがみで代表的なものを10種類ご紹介しました。
こころ当たりがたくさんあったとしても大丈夫です。比較的多くの人にみられる認知のゆがみ10種なので、それが普通だと思ってください。

大切なのは、この認知のゆがみに振りまわされるのではなく、どうやって思考を柔軟にしていけばいいのかということです。


<サイコロ思考で人生で変わる>


それでは、さっそく思考を柔軟にする具体的な方法をお伝えしますね。

まず、紙でもスマホでもいいので、自分の考えかたをどこかに書きだせるようにしてください。
自分の考えを目に見えるようにして、自分の認知のゆがみに気づくことが最初のステップです。

そして、「書きだした自分のその考えかたや見かたが全てではない」ということを客観的に認識してください。

次に、他の考えかたや他のものの見かたを、思いつくかぎり挙げてみます。「ものごとには最低でも6つの側面(見かた)がある」という考えをサイコロ思考といいますが、サイコロ思考をやってみてほしいんです。
今の自分の見かた以外に、少なくとも他5つの見かたを検証していきます。

ちょっと例をあげてみましょうかね。

A子さんは、職場の上司に対して腹をたてています。
上司は、A子さんが仕事でちょっとミスをするとすぐに怒るんです。

上司の顔をみるだけで最悪な気分になるA子さん。
そんな最悪な気持ちを生みだしている彼女の思考はこれです。

「あの人は私を目のカタキにしている。おかげで私は仕事も人生も最悪。あの上司は最低だ」



【サイコロ思考で5つ他の考えをあげる】

「期待してくれているからこそ、叱るんだ」
「上司は精神的に未熟だからすぐ怒るんだ」
「怒りっぽい人への対処法を身につけるいいトレーニングになる」
「合わないなら転職したっていい」
「仕事以外の面で人生を楽しめばいいや」

どうでしょう? 他の考えかたって探してみると意外と見つかるものなんですよね。

サイコロ思考で最低5つ以上の考えをあげたあとは、その中からもっとも役に立ちそうな考えかたを採用してみてください。
そうすると、シンプルに思考が柔軟になってくるんです。

思考が柔軟になり考えかたが変わると、感情も変わります。
感情が変わると、行動が変わります。
そうすると、行動によって作られていく人生自体までもを変えていくことができるんですね。

また、より本格的に思考の柔軟化をしたい場合は、認知行動療法の中の「認知再構成法にんちさいこうせいほう」という最強のツールがあります。
これについても、いずれ僕のコンテンツでじっくり取り上げたいと思います。


<まとめ>


今日は、僕たちは、ものごとをありのままに見ることはできないというお話をしました。
紹介したケースのなかには、結構あるあるも多かったんじゃないでしょうか?
でも、「認知のゆがみ」だらけでも大丈夫。僕たち人間、それが普通なんです。大切なのは、認知のゆがみを自覚することです。

今日お伝えしたサイコロ思考は、シンプルかつ非常に強力なツールです。
思考を柔軟にして人生を変えていくために、ぜひやってみてください。

<まとめ>

・日頃の思考グセが感情や行動を生みだす
・思考というフィルターを通して世の中を見ている
・気づかずフィルター越しに世の中を見ること=認知のゆがみ
・代表的な10の認知のゆがみは多くの人がもっている
・紙にサイコロ思考を書きだして思考を柔軟にする
・思考が変わると感情や行動が変わり、人生が変わる

僕のnoteでは、読めば読むほど「自己肯定感が高まり」「人間理解が深まり」「人間力が養われる」コンテンツをお届けしています。

これからも確実に自己実現へ向けて進みたい方、ぜひフォローをしてたくさんのヒントを受け取ってくださいね!

次回は、「自己イメージが飛躍的にアップする」話をします。
あなたは、自分という人間をどのくらい素晴らしい存在だと感じていますか? トランスパーソナル心理学やユング心理学の話を交えながら、人間観のパラダイムシフトが起きるような話をします。
ぜひ、お楽しみに!


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