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軽石を食み、浴槽に臥す【コロナ5日目】


・9/24 9時起床。昨日よりは喉の痛みも少し治まった。ただ、気圧の関係なのか、なかなか起き上がれない。

・ゴミ置き場にゴミを出しに行こうと思ったが、鍵を開けた瞬間、外に人の気配を感じる。ドアスコープから覗いてみると、大家さんがなにやら隣の部屋を開けているのが見える。そちらのお隣さんは空室だったはず。内見の予定でもあるのかな?そのまま静かにドアの鍵を閉め、ゴミ捨ては諦めた。

・コロナに感染すると、否応なしに数日間の自宅待機になってしまうが、本当に自宅から一歩も出ないで忠実に待機期間を守っている人はどれくらいいるのだろうか。もちろん、ゴミ捨てもせず、だ。ゴミ捨て、買い物、犬の散歩…いろいろな事情はあれど、意外とみんな一度くらいはこうやって外に出ているかもしれないな。私は今回は未遂に終わったけど。

・朝ごはんは、ベーコンエッグトーストと、牛乳とグラノーラ。
あれ、味がしない…?ベーコンエッグトーストはうっかり味付けを忘れたので仕方ないとして、グラノーラが、食感だけの食事になっている。頭の中にザクザクとした軽快な音が響くだけで、聴覚と視覚の食事だ。カラフルな軽石を食べているみたい。

・慌ててはちみつを舐めてみると、ちゃんと味がした。味の濃いものならちゃんとわかるみたい。少しホッとする。

・午後、お医者さんからの電話があって、足りなくなった分のお薬を届けてもらった。てっきりウーバーとか、薬剤師さんとか、看護師さんが来ると思っていたら、なんとお医者さんがネルシャツにチノパンという出で立ちで登場。ご本人が来るんかーい!と心の中で盛大にツッコみ、玄関先で薬を受け取る。そんなに大きな病院というわけでもないのに、仕事の合間を見て来て下さったのだろうか…薬だから第三者に任せられないにしても、まさかのご本人登場に驚きを隠せない。つくづく、大変なお仕事だ。今回は薬の種類が倍に増えていた。うがい薬やトローチも入っている。ありがたい。

・夕方になると、さらに雲行きが怪しくなり、遠くで雷鳴が聞こえる。雷恐怖症の私は、慌ててスマホとイヤホンを手に、三点ユニットバスに籠る。家の中で唯一、外につながるドアも、窓もない部屋だ。できるだけ雷から気をそらせるように、イヤホンで音楽を聴きながら、お天気アプリで雷予報とにらめっこする。最初のうちは便座に腰かけていたが、どうにも落ち着かず、浴槽の縁に座って30分を過ごす。

・空調もないのでだんだん暑く、息苦しくなってくる。そろそろいいか…?と恐る恐る風呂場を出てベッドに戻る。しかし雷はなかなか去ってくれそうになかった。眠くなってきたけど、雷鳴で起こされるのはまっぴらだ。仕方なくもう一度お風呂場に戻る。さて、しばらく雷は収まりそうにない。最低でもあと30分は出られない。心身ともに疲れてきた。どうするか…。ところどころに水滴の残る空の浴槽を一瞥する。

・空の浴槽に座り込む。一人暮らし用の浴槽は小さくて、脚なんて全然伸ばせないし、横幅も狭い。浴槽の中で背中と膝を丸めながら、小さい頃に歴史の教科書で見た、古代の屈葬の写真を思い出した。あるいは、危険なものから逃れるためのそれはさながら防空壕のようでもあった。持ってきたバスタオルを足元に掛けてぐったりしていると、眠気が襲う。このまま寝てやり過ごそう。

・窮屈な体勢に何度か目が覚めて、その度にもぞもぞと身体を動かして、できるだけ落ち着く姿勢を探しては、また眠る。お湯の張っていない浴槽で眠るのは初めての経験だ。また30分が経ち、限界を感じて、風呂場をあとにする。まだ遠くで雷鳴が聞こえたが、さすがに疲れてベッドで夜まで爆睡した。

・何もできない一日だった。明日こそ。


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