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【植物が出てくる本】『牧野富太郎の恋』長尾剛

いよいよ来週から、朝ドラ(NHK連続テレビ小説)『らんまん』がスタートしますね。キャストや予告映像、主題歌などの情報が続々と発表され、期待が高まります♪
『らんまん』の主人公、槙野万太郎のモデルとなった牧野富太郎に関連する書籍もたくさん出版されていますが、その中から今回は『牧野富太郎の恋』を読んでみました。

『牧野富太郎の恋』長尾剛(2023年:朝日新聞出版)

明治時代の東京府飯田町。母娘で営む小さな菓子屋を度々訪れる、一人の青年がいた。彼こそが、のちに『日本植物の精』と称される牧野富太郎だった。やがて夫婦となった菓子屋の娘、壽衛と富太郎。二人がたどった波乱万丈の人生とは?

以前に紹介した『ボタニカ』も、同じく牧野富太郎を題材とした小説でしたが、この『牧野富太郎の恋』は短めで、物語がポンポンとテンポよく進むため、するすると読み終わることができました。

物語は、壽衛とその母親が営む菓子屋を富太郎が訪れる場面から始まります。その後ストーリーは富太郎の幼少期にさかのぼり、植物と戯れて育った子ども時代から、植物学を志して上京し、東大理学部の植物学教室に出入りを許されるといった、事実に沿ったエピソードをたどって進みます。

『ボタニカ』と比べると、富太郎の破天荒な面はやや抑えめに描かれ、植物学にかける情熱や、真っすぐな思いが強調されているような気がしました。
妻の壽衛が、献身的に、強く賢く富太郎の研究生活を支える姿にもスポットが当てられています。富太郎がそんな壽衛を気遣い思いやる描写もあり、二人が支えあいながらつつましく生活していた様子が、印象的に描かれています。
どうしても『ボタニカ』と比べると、やや美化されているように読めてしまいますが、富太郎の研究には、壽衛がなくてはならない存在だったのだなということが実感できます。

他方、いとこの猶との結婚についてはほとんど触れられておらず、猶は番頭の和之介との結婚の場面でチラッと出てくるに留まっています。

どちらが事実に近いのかはわかりませんが、同じ人物をモデルにしていても、取り上げ方によって物語の印象はずいぶん変わるんだな、と感じました。

『らんまん』では家族構成などの設定もかなり変更されているようなので、また違った感じのお話になるのかな……。放送開始を楽しみに待ちたいと思います♪

※トップ画像は、牧野富太郎が和名をつけたといわれる「ハキダメギク」です(物語には出てきませんが)。


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