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早期発見が肝!腰椎分離症

 成長期のアスリートを悩ます非常に厄介なケガの一つに、腰椎分離症があります。

 腰椎分離症は保存療法(手術ではない治療法)にて、超初期では100%、初期では93.8%が3ヶ月以内に骨癒合(骨がちゃんとくっつくこと)が得られます。

 しかしそれらをすぎて進行期になると、骨癒合率は80.0%と一気に低くなり、骨癒合に要する期間も3ヶ月〜半年以上となってしまいます
 また、終末期まで進行した場合は保存療法による骨癒合は期待できず、治療は痛みに対する対症療法が主体となります。

 これまで関わってきた選手、そして兄弟が腰椎分離症で苦しんでいるのを沢山見てきました。

 腰椎分離症は早期発見がとても重要です!
今回は腰椎分離症の中でも、早期発見に必要なポイントに絞って記させていただきます。
 育成年代のアスリートに関わる全ての方に、この情報を知っていただければ幸いです。

◆簡単な概要

 腰椎分離症とは、成長期に腰椎椎弓の上・下関節突起間部という部分に起こる疲労骨折です。

 日本人では無症状の分離症も含めて5.9%が罹患していると報告されています。成長期の腰椎分離症は全身の疲労骨折で最も多く、なんと全疲労骨折の55.5%を占めています。

 特に多いのが14歳前後スポーツを行っている男子です。この特徴に当てはまる方に体幹の伸展時痛(腰を反った時の痛み)があれば、腰椎分離症を強く疑いましょう!
 これだけでもぜひ覚えて下さい!!

◆特徴的な症状

・安静にしている時の痛みは炎症が強い時期を除いてあまりみられず、身体を動かした時、特に腰部伸展・回旋時(腰を反る・回す)の瞬間的な痛みを訴えることが多いです。

・身体所見としては、伸展位で増強する腰痛ピンポイントで指せる圧痛を認めた場合には腰椎分離症を強く疑うべきです。

・骨折部の近くを神経根が通るため、神経根への炎症の波及によりラセーグ兆候(椎間板ヘルニアかどうかをみる検査)が陽性になることもあります。そのため椎間板ヘルニアと誤診されることもあります。

◆注意点

・成長期の分離症の場合、超初期から進行期にかけては単純X線画像での診断が困難なため、それと疑って診察を行わないと見逃すおそれがあります。また、CT像で変化が現れ始めるのは約1ヶ月後とも言われています(治療経過中の骨癒合評価にCT撮影はとても有用ですが)。

・MRI像では単純X線、CTで分離部の骨折線が明らかになる前の超初期からでも変化を認めるため、上記症状があればMRI像での検査はマストです。早期診断にはMRIです!

・骨折したての初期は激痛を訴えますが、この段階では単純X線像やCT像ではまだ変化がないことが多いです。完全骨折に至ると痛みは軽減するので改善したと勘違いしてしまうことも多いですが、そこで放置すれば終末期へと進行して偽関節になります。

・腰椎の両側が完全分離して偽関節になると、腰椎すべり症へと進行してしまう症例も多く、腰椎分離症の初期のうちに骨癒合を狙った保存療法を開始するべきです!

・腰椎すべり症が進行してしまうと、すべった腰椎が近くの神経根を圧迫してしまうため、腰痛だけでなく下肢痛や痺れなどの神経根症状(椎間板ヘルニアの様な症状)が出やすくなります。
 また、偽関節となった分離部は構造的に不安定となるため、激しいスポーツ活動で分離部にストレスが加わると分離部を包んでいる滑膜が炎症。起こしやすくなります(滑膜炎)。

・成長期の腰椎分離症はすべり症へ移行することがあり、特に骨が未熟であるほど腰椎椎体のすべりが発生・進行しやすいといわれています(成長期には成長軟骨板という身長を伸ばすために必要な軟骨がありますが、ここが力学的に脆いため)。

 上述した症状に当てはまれば、もしレントゲンで映らず腰椎分離症として診断されなくても、「超初期」〜「進行期」の段階である可能性があります。
 繰り返しになりますが、成長期の腰椎分離症は早期診断・早期治療が非常に大切です!
ぜひMRI撮影にて診断をしてくれる医療機関を受診してみてください。

 ちなみに私が施設を使わせて貰っているふじみ野ライフ リハ&トレーニングセンターはこちらの医療機関様と提携しています。
 MRIも備えておりますので、お悩みの際はぜひ受診なさってみてはいかがでしょうか。

ふじみ野整形外科内科骨粗鬆症スポーツクリニック

文献
・脊柱理学療法マネジメント 病態に基づき機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く 第1版
・関節機能解剖学に基づく整形外科運動療法ナビゲーション-上肢・体幹 改訂第2版
・スポーツ理学療法プラクティス 急性期治療とその技法 第1版

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