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初めてのゲイとの出会いはシュールでドキドキだった

以前こちらの記事で書きましたが、僕がゲイとして活動を開始したのは22歳のころでした。
まずは友達を作ろうと思いましたが、そもそもゲイとどうやって知り合ったら良いか考えました。

出会いの方法

当時はマッチングアプリとかは無く、mixiなどのSNSが流行っていて、mixiでもゲイ向けのコミュニティがあったのですが、
大学の友人とつながっているmixiを使うのはリスクが高いので別の方法を考えました。ゲイ向けのmixiのようなSNSが複数あることを知っていたのですが、それらは招待制なのでゲイの知り合いがいない僕を招待してくれる人がいません。
そこで、招待が不要な似たようなサービスで、そこで知り合った人とするメッセージの回数で課金されるタイプのSNSに登録しました。

登録するとすぐに、同年代の人からメッセージがありました。
胸元から口元までの写真を掲載していて、健康的な褐色の肌が魅力的に感じました。
メッセージをしているうちに、住んでいる場所も近いということがわかり、
「では、今度会ってみませんか?」ということになりました。
彼はバトミントンのサークルに入っているらしく、近くの体育館で一緒にバトミントンをすることにしました。

初めてのゲイとの待ち合わせ

当日待ち合わせ場所に行くと、白いズボンにボーダー柄のポロシャツの胸元をがっつり空けた彼が待っていました。仮に名前をミゲル君とします。
ミゲル君はフィリピン出身の留学生で、なんと同じ大学に通っていることが分かりました。
眼鏡をかけていて真面目そうな雰囲気で、想像していた感じとは若干違うけれど、体育館までの道中で話していると、普通の大学の友人と話しているような雰囲気で、仲良くなれそうだなと嬉しく思いました。

体育館につくと、周囲では数組の親子連れがバトミントンを楽しんでいました。ミゲル君と僕もラケットとシャトルを借りて、コートに入り、ラリーを始めました。

シュールなバトミントン

僕は運動が苦手で、バトミントンも下手くそなのですが、
早速、僕が打った玉が微妙な位置に飛んでいき、ミゲル君はその玉を打ち返そうと体を捻って取りにいき、
「ふぅん♡」と艶めかしい声を出しながら打ち返してきました。

イメージとしては、テニスのシャラポア選手とかが玉を打ち返すときに声を出したりすると思いますが、あれをもっと艶めかしくした感じです。

一瞬「・・ギャグかな?」とツッコミを入れるべきなのか迷いましたが、
見た感じ彼はいたって真剣。
いや、力を入れたらついつい声が出てしまうタイプの人もいるだろうし、笑ったら悪いか。と思って気にしないようにしていたのですが、
僕が下手くそな場所に玉を打ち込むたびに彼は頑張って取りにいって「ふぅん♡」とか「はぁん♡」とか、嬌声ともいえるような声を、しかもだいぶ大音量で発するのです。
妙にツボに入ってしまい。ダメだ、笑ったらいけないと思うほど、笑いそうになってしまう。でもここで「ブフォッww」とかって吹き出したりしたら、絶対に「何がおかしいの?」って不信がられて、気を悪くしてしまうかもしれない。そうだ、バトミントンが楽しくて笑っている感じで、笑いを小出しにして消化していこう。という作戦を思いついた僕は、
「ふふ、、でゅふふ、、へへへ、、でゅふ、、」という感じで薄気味悪い笑い方をして、吹き出すのをこらえながらラリーを続けました。そして、ヘラヘラ笑いながら打つからコントロールがさらに悪くなり、ミゲル君が玉を頑張って取りに行って声を発する頻度が増すというスパイラルに陥りました。

嬌声を発する男性と、薄気味悪くヘラヘラ笑う男性の二人がバトミントンをしているという状態になり、そのシュールな状態がまたおかしく感じてしまい、
あぁ、ダメだ笑いが止まらない、そしてミゲル君もますます声が大きくなっている。どうしよう、これって周りから見たら絶対変だよね、、
と、そっと隣の親子に目をやると、お母さんが明らかにドン引きした顔してこちらをチラチラと見ている。子供がコッチを見ようとするのをお母さんが制止している。
初めてのゲイとの出会いで、あまり周囲から視線を浴びるようなことをしたくなかった僕は、恥ずかしくなり、でも笑いも止められず、一方ミゲル君は相変わらず絶好調で声を上げていて、なんともシュールなバトミントンを続けたのでした。

バトミントンでひと汗かいた後、ファミレスに行って、これからの就職とか進学のこととかをお互い話して、たまに「ゲイの友達は他にいるの?」とか聞く以外は、本当に普通の大学の友達と話すような会話をしていました。

そして、そろそろ帰ろうか、となったときに、ミゲル君が「家まで送っていくよ」と言い出しました。
「お互い徒歩だし、まだ夕方だし、送ってもらわなくても大丈夫だよ。」と断ってみても、「大丈夫、送っていくから」と言って聞いてくれない。
友達に家まで送ってもらうという経験が無い僕は、理由がわからないながら、もう少し話したいのかな、と思って一緒に僕の住むアパートに向けて歩きました。道中、ミゲル君は来年就職が決まっており、この町を離れるという話を聞きました。せっかく友達になれそうなのに、あまり一緒に遊べないことを残念に思いました。

アパート前の攻防

アパートの前について、「今日はありがとう!また遊ぼうね」と言って帰ろうとすると、ミゲル君が、「ケンゾーの家に行って、"ゆっくりしたい"」と言い出しました。

当時僕が住んでいた部屋は、4畳半のアパートで、部屋は足の踏み場もないくらい散らかりまくっていて、ゴミ屋敷一歩手前のような状態だったので、
「ごめん、部屋が散らかっているから、また今度遊びに来て」というと、「大丈夫、気にしないから」と。
いやいや、こっちが気にするんだよ!と思いながら、「本当に足の踏み場も無いし、狭いし、申し訳ないから」と言うも、「大丈夫。一緒に片付けしよう」と。

えぇ・・・、なんでそんなに家来たがるんだ?と不思議に思い、ようやく、ひょっとして"ゆっくりしたい"というのは、部屋でキスとかそういうことをしたい、ということなんか?と思い至りました。
ミゲル君は話しやすいし好意を持っていたので、全然嫌な感じはしないけど、まだゲイとして活動し始めたばかりの僕には心の準備が全くできておらず、どこまで何をするんだという恐怖もありつつ、何よりもあの汚部屋を見られたら絶対に嫌われて、友達としての関係も終わる、という確信があったので、
「ごめん、本当に無理なんだ。また今度ね」と言って、断固拒否の姿勢を示しました。そんな僕の態度を見て、ミゲル君は「そっか。急に無理言ってごめんね」と肩を落とし帰っていたのでした。

部屋に帰った僕は、なんか悪いことをしてしまったような気がしつつも、家まで送ってもらって、部屋の前で押し問答するって、男女の恋愛ドラマ見たいで面白いな。と、初めてのゲイとの出会いを恋愛ドラマに重ねて、ドキドキしながら寝たのでした。
(ただ、これが男女で、男性が部屋に入ろうと粘ってくるシチュエーションって、女性側からしたら、かなり恐怖じゃないかな、と思いますね。)

その後、ミゲル君とは少しメールのやり取りをしましたが、
結局また会うことも無く、連絡も途絶えてしました。あの時、僕の部屋が散らかっていなくて、ミゲル君を家に上げていたら、たぶん、僕のその後のゲイライフも全然違ったものになっていたんじゃないかな、と思います。

ゲイとして活動し始めの頃って、どんな人と出会って、どういう友人が出来るかで、その後の人生が大きな影響を与える気がします。
僕にとって初めてのゲイであるミゲル君との出会いは、シュールで面白いことがいっぱいあって、今では良い思い出になっております。










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