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救急車で運ばれた時の話と思うこと

僕はこれまでの人生で一度だけ救急車で運ばれたことがあるので、その時の話を書こうと思います。
僕がまだ学生で、ちょうど就職活動を始めた頃でした。

発熱と喉の痛み

夏が終わって涼しくなってきた頃、僕は風邪をひきました。
熱も38℃~39℃くらいをウロウロする感じが3日間ほど続いていました。
もともと発熱しやすい体質のようで39℃超えることはそれほど珍しくなかったのですが、その時はとにかく喉が痛くて、固形物を食べられませんでした。

風邪のひき始めのころは、大学院での研究やアルバイトなどもあって、その内治ると思って普段通りに通っていたのですが、
流石に熱が38℃超えるとしんどくなり、家で寝込んでいました。
食べるのがしんどいので、せめて水分だけでもと思って、2Lのアクエリアスを買い込んで飲んでいたのですが、飲み物を飲むのすら痛いという状態でした。
ボーっとする頭で、参加するはずだった就職活動の説明会へのキャンセルの連絡をしたりしていました。

解熱剤

それまでは、風邪をひいたら一日静かに寝ていれば治ることが多かったということと、「発熱は病原菌をやっつけるための体の反応」という聞きかじりの情報から、あまり解熱剤は飲まないようにしていました。
今は体が病原菌と闘っているのだから、ちょっと様子を見ようと。

しかし、さすがに3日間も熱が続いて、スポーツドリンクしか飲まないような日々が続くと心配になってきました。
そして何より39℃を超えて更に熱が上がってきて、身体が辛くて身動きが取れなくなっていきました。

「さすがにこれはマズいかもしれない」と思ってようやく、家に置いてあった解熱鎮痛剤を手に取り、スポーツドリンクで流し込みました。
布団に入ってゲイ雑誌を見ながら30分くらい経ったころ、身体の異変が始まりました。

119番にかける

横になっていたら急に胸が苦しくなる感じがあって、
その後、もの凄い勢いで胸の鼓動が強く早くなりました。
ドクン、ドクンっていう鼓動が、でっかいスピーカーの重低音で身体に振動が伝わってくるときのような、体中に響いている感じでした。
そして、視界がチカチカするような感じがするとともに、どんどん暗くなっていくのです。
部屋の蛍光灯は変わらず煌々とついているのに、視界は白熱灯が切れかかって暗くなったり明るくなったりするようにしながら、どんどん暗くなっていくのです。

今まで感じたことない異常事態に、本能的に「これは死ぬかもしれないヤツだ!」と感じて、迷うことなく携帯電話を取って、119番に電話しました。
僕の性格からすると、具合が悪くなっても119番するのを躊躇してしまうような気がしますが、その時は全く迷いなく「これは救急車呼ばないとダメなやつ!」て思って電話しました。

119番での絶望

119番かけたころから意識が曖昧で、断片的にしかやり取りを覚えていないのですが、救急であることを伝えて、「どうしましたか?」と聞かれたときに、意識が曖昧で呂律が回らない状態で、
「く、くすりの、飲み方を間違えてしまったみたいで、、息が苦しくて、、」というような説明をしました。
その時は、解熱剤を飲んだ後に異常が起こったので、空きっ腹に薬を飲んだのが悪かったのではないかと考えて、と咄嗟にそんな風に応えたのです。

すると電話の向こう側の男性が急に態度が変わって、詳細は覚えていないのですが、説教というか罵倒というか、「お前みたいなやつが、ドウノコウノ」みたいなことを言われて、「仕方ねぇから行ってやるよ!」と言われたんです。

なんで119番にかけてそんなこと言われているのかよく分からなくてパニックになりながら、なんでもいいから来てほしいということで住所をかろうじて伝えたあたりから記憶が無くなりました。

後から考えて気づいたのですが、その頃って、今でいう危険ドラッグが"合法ドラッグ”などと言われて街中の怪しげな雑貨屋で普通に売っているような時代で、そういったドラッグがらみの事件とかが多かった頃だったんです。
なので、若い男性が呂律の回らない感じで「"薬"の飲み方を間違えた」と言ってきたので、救急の電話の人は危険ドラッグを使って電話をかけてきたと勘違いされたのではないかと思います。

ただ、119番の人に罵倒されるという絶望感と、「仕方ねぇから行ってやるよ!」と言われたときに「なんでもいいから助けてください」というような命乞いするような気持ちが強烈に記憶に残っています。

でも、意識が曖昧な状態だったし、その時の記録などないので、本当にそんなこと言われたのかも怪しいかもしれませんが。。119番の人ってそんなこと言ったりするんですかね。僕が朦朧とした意識の中で見た悪夢だったのかもしれません。

救急車で運ばれる

外のサイレンの音で目が覚めると、何故か僕は玄関でドアに頭を向けて倒れていました。
妙に頭は冴えていて「あ、救急車本当に来たんだ。なんか大事になってしまった。寝たら意外と元気になってるし…」と思いつつ、身支度しようと思うのですが、力が入らず立ち上がることができません。
そうこうしていると、救急救命士の方が部屋に入ってきて、「大丈夫ですか!?」と体を起こしてくれました。
119番では絶望を感じましたが、救命士の人に体を起こしてもらった時に「めっちゃ優しい。天使だ」と思ったのを覚えています。

病院に行くなら財布と保険証がいると思い、
「ちょっと待ってください」と伝えて部屋に探しに行ったのですが、
まともに立つことができなくて、部屋の中でバッタンバッタンと何度も倒れてしまい、床に置いてたペットボトルを倒れ、積んでたゲイ雑誌がぶちまかれ、もともと散らかっていた部屋がより一層カオスな状態になりました。
保険証が見つからず、生まれたばかりの小鹿のように立つこともままならず、部屋をグチャグチャにしていると、救命士さんが部屋に入ってきました。
「あ、ほけんしょうを、、」と言いながらゲイ雑誌の上に倒れている僕を、救命士さんはギョッとした表情で見ながら「そういうのは後でいいので」と言って肩を抱えて起こしてくれて、救急車まで運んでくれました。
そんな状態でも、「ゲイ雑誌見られてしまった…」というところを心配していました。

そして救急車の中で、何やら病院に対して救命士の方が伝えているのを聞きながら意識を失ったのでした。

病院での治療

気づくと病院で点滴を受けていました。
医師がやってきて「解熱剤と栄養を点滴しています」「栄養失調みたいなものです」と。

「え?栄養失調…」と一瞬理解が追い付かなかったのですが、
確かにスポーツドリンク以外に3日間ほど口にしていなかったし、栄養失調になってもおかしくないなと。
この飽食の時代などと言われる日本において、栄養失調で救急車呼ぶとか…と恥ずかしくなりました。

そして、点滴が終わるころにはみるみる元気になって普通に歩けるようになりました。さっきまでの状態が嘘のように。
そして病院から秋晴れの空の下に放り出された僕は、「ここは一体どこだろう…」と思いながら、とりあえずポケットに入ってた小銭で公衆電話からタクシーを呼んで家まで帰ったのでした。

熱がある時も食べるのは大事

凄い当たり前のことですが、病気で弱っているときこそ、ちゃんと食べないとダメだなと思いました。
よくアニメとかで「風邪の時はちゃんと食べないと!」とか言って母親とかがお粥とか食べさせてくれる場面とかありますが、アレは本当にその通りだと。
喉が痛くて食べられないのであれば、解熱鎮痛剤を飲んで、のどの痛みを抑えて食べることの方が優先だったと思いました。

後日、研究室で「栄養失調で救急車で運ばれた!」と笑い話として話していましたが、あのまま救急車を呼ばずに倒れていたら、本当に命に関わっていたのではないかと思います。
助けて下さった救命士や病院の方々にはとても感謝しています。

コミュニケーションの難しさ

119番もいたずら電話とかもあるでしょうし、間違って伝わらないように、伝え方が大事だな、と思いました。
一方で、命の危機という時だとパニックになって要領を得ない説明になってしまうことも多いと思うので、その辺りは119番の方もプロフェッショナルとしてスキルを磨かれているのではないかと思います。

以前、山形の大学生の方が119番をした後に、救急車が出動せずに亡くなった事件がありました。
凄く難しい問題なのだと思いますが、コミュニケーションの行き違いで命が失われるケースが無くなることを祈っております。
電話だけだと伝わりにくい部分もあるし、ビデオ通話とかでの通報にも対応されたりするといいんじゃないかと思いました。もしかすると、僕が知らないだけで、それは既に実現しているかもしれませんが。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
季節の変わり目で最近寒くなってきましたので、お体にはお気をつけてください。


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