新しい人生〜警察がやってきた①〜

新居の隣は公園だ。
窓を開けると、目の前にブランコに乗っている子供がいるくらい近い。

隣家が居ない森の中で育った子供達にとって、隣の公園は"自分の家の庭"という感覚だった。いや、本当にそう思っていた。

3才息子は、保育園でここの公園に遊びにきた時、自分の公園だから来ちゃダメー!と言っていたと、先生から聞いて驚いた。

公園という概念がない。敷地や境界線というのも知らないで育つとこうなるのか。
車道と歩道の区別、私有地と公共地の区別、一人で行っても良い行動範囲の概念などを、一から説明して身につけさせる日々が数ヶ月続き、ある程度慣れてきたある夏の夕暮れ時の事。

仕事帰りに買い物をして、娘2と息子2を連れ帰った。車から降りた子供達は、家に入らずまっすぐ公園へ向かった。
私は荷物を家の中へ運び、冷蔵庫に食材をしまったり取り敢えずの片付けをしていた時、開けた窓から子供の泣き声が聞こえたが、ウチの子の声では無かったので片付け終えてから公園へ向かった。

子供の元へ到着した私に、先に遊んでいた子の母親が寄ってきてこう言った。

「この子のお母さんですか?さっき、ウチの子が滑り台で滑ってる時、(おたくの)お姉ちゃんに蹴られて滑り台から落ちたんです」

泣いていたのは2歳くらいの女の子だった。娘2が滑り台の上から子供を蹴り落としたのかと思い、頭が真っ白になった。
すぐに娘2に事情を確認すると、だって、、、と何か納得のいかない顔をしたので、大体の事は合っているんだと理解した。
兎に角謝り、怪我の様子も確認させてもらい2歳児と小学生にも謝った。
相手のお母さんは「今後も公園で会うだろうからお互いに気をつけましょうね」と言う感じで、怪我の手当てをする為に帰っていった。

娘2に詳しい状況を聞くと、もう一人の小学生のお姉ちゃんに後ろから抱かれる様に2歳の子が滑っていたが、滑り終わり部分で減速して止まってしまった。後ろから滑ろうとしていた娘2は、小学生の前に2歳児が居るのを知らずに滑り始めてしまい、徐々に近づくも一向に滑り台から降りない小学生を待てず、背中を蹴ったところ、前に居た2歳児が顔から落ちた。
と言う事だった。

相手によっては、警察沙汰にされる事だと娘2に冗談交じりに話しながら帰宅した。
娘2が他人を怪我させた事のショックと、何かおかしいと言う拭いきれない違和感を感じながら。

翌朝。休日だったので私は溜まった家事を片付けていた。子供達は公園で遊ぶと言って二人で出て行った。昨日の事がフラッシュバックして、なんとか1時間家の中に留めたが、目の前(庭)に公園がある。
行かせないのは無理に近い。
窓を開けているので家の中から公園の様子が見えるし、声も聞こえていた。

少ししたら娘2が強張った表情で玄関に戻ってきて、私を呼んだ。

「昨日のお母さんがね、ママ呼んできてって!」

私の心臓はギュっと縮まった。急いで公園へ出て行った。
昨日滑り台で滑っていた小学生の母親だった。

「昨日の怪我さー、結構酷いみたいで、今病院に行って帰ってくる所だって言うから、ここに来れるか聞いたら来れるって言うからさ、ちょっと待っててくれる?」

この人は何をしたいんだ?疑問だらけの頭を整理しつつ私は質問した。

「お姉ちゃんの背中は大丈夫でしたか?」

後も付いていないし痛くないと言っているので大丈夫だと聞いて安心した。
さて、問題は2歳児の方だが、、、昨日、謝ってお互いにこれからも宜しく的な感じで終わったハズだよね?
なぜ、小学生のお母さんがここに居るんだ??
目の前で起きている現実の整理がつかず混乱した状態で、小学生の子の母親に送られた昨日の2歳児の怪我の状態を写した写メを見せられ、2歳児の母親が、夫に監督不行き届きだと怒られたと聞いた。

確かに傷は結構深く、女の子なのに傷が残ったら可哀想だと思った。
でも、この件は終わったはずですよね、、、?

と言いたい気持ちを抑えつつ。これから起こるであろう事態を予測することに集中した。
謝ったし。私が出来る事としたら、医療費を負担することくらいしか思いつかない。
賠償責任を求められるのかも!?
めっちゃタチの悪い人だったらどうしよう、、、。

この後、2歳児母が登場してどうなるのか?!

新しい人生〜警察がやってきた②〜へつづく

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