新しい人生〜警察がやってきた②〜

そうこうしている内に2歳児を連れた母親が現れた。
昨日の表情とは別人の様だった。明らかに怒っている。
母親から伝えられた事は、傷が思ったより深く、完治するまで1ヶ月ほどかかり、暫くは毎週通院する必要がある事と、傷跡が残るかもしれないと言う内容だった。

私は底の見えない恐怖に襲われていた。
相手に何を求められても応えられる様に、賠償責任保険がある!それを使おう!
お母さん達に待っててもらって、一度家に戻り証券を探した。
保障内容を確認する為だった。

帰宅している間に、私は娘2にしでかした事の大きさを説明すると、怖くなった娘2は泣き出した。

保険が使える様だったので、公園に戻って2歳児母にその事を伝えたが、まだ怒っている。
小学生の母がしゃしゃり出てくる。

「こんな状況になってるのにさ、子ども連れて来て謝らせないってどうなの?」

昨日謝ったよね?本人からも謝らせたよね?あなたたちの気が済まないから、もう一度6歳の怖がって泣いている娘を連れて来て謝らせろと言うのか?冗談じゃない。

「本人は家で泣いているので連れてこれません」

とハッキリ断った。

彼女は何に腹を立てているのか?さっぱり分からなかった。
娘の顔(眉毛の辺り)に大きな傷が出来たから可愛そうと思うのは親として当たり前で、私も心が痛んだ。その件に関しては本当に申し訳ない事をしたと何度も謝った。
だが、その怪我の全責任を私に向けるのは違うんじゃないか?
と言う所と、2歳児母が何に対して怒っているのかがハッキリしなかった事で、私は対応のしようが無く困っていた。

兎に角私が出来る最大の誠意として、損害賠償責任保険があるので、今回の事に関して掛かった治療費などは、全てこちらに任せてくださいと言う私に、2歳児母は怒りの限界が来た様に話し始めた。

怒りのポイントは以下の通り
・2歳児を怪我させたにもかかわらず、怪我をさせる様な子(娘2)を監督せずに翌日にまた同じ事(付き添いしていない)をしている無責任さ。
・怪我をさせた事を大した事と思っていない様に感じて腹立たしい。
・お金で解決しようとしている事。悪いと思っていない事の表れだ。
・(あなたが悪いのに)私は夫に監督不行届きだと怒られた。

こんな内容だった。
私にも言い分はたっっくさんあったが(当時、あなた滑り台の側には居ないでお母さん同士離れたベンチでおしゃべりしてたよね?子供が泣いて駆け寄ったって言ったよね?そもそも、ウチの子が蹴ったのは小学生で、背中が痛くない程度の力だった。それで2歳児が顔を怪我したのは滑り台から降りる時に上手く降りれなくて顔から転んだ訳で、娘2が2歳児を蹴って転ばせた訳ではない。結局親は誰も見ていなかったんだからそこは平等じゃね?それに娘2は日常的に暴力的な事をする子ではない!)で、彼女の怒りを聞いてあげて、謝る事しかできなかった。

その場で連絡先を交換して、翌日菓子折り持って自宅へ謝りに行きましたよ。
ものすんごく疲弊していた私。胃が痛くて食欲無くなるし、生体エネルギーどんどん減少してみるみる老け込んだ顔になっていった。
一人で敵陣に乗り込む気力も体力も生きる力も無く消えてしまいそうだった私は、兄として友人に同行してもらった。ホント有難い!なんて良い人だ。

一番恐れていた相手の旦那さん。
拍子抜けするほど普通の人で、温厚だった!感情的になっているのは母親だけだった。
何はともあれ、三つ指ついて謝った。
旦那さんの論点は、お金で解決しようと思っていたかどうか。
とんでもない!謝罪で済む事ではないと感じて、私が出来得る最大限の誠意だったと説明すると、すんなり分かってくれた。

帰宅して、みるみる生体エネルギーが湧いてきた私は実年齢相当の顔に戻った。
その日の夕方、二人組の警察官が訪ねてきた。
私の名前を確認し、以前公園で起きた事故の件で相手の方から警察に事故の報告が来ていたので、相手の方にも事情を聞かないといけないので、実際に公園に行って話を聞かせてもらえるか?と言う内容だった。

娘2は自分を捕まえに来たと思い、私にしがみついて恐怖で泣き出した。
一人の警官が娘2と話をして事実確認をしている間、私はもう一人の男性警官と話した。

被害届は出ていないので、これから何かある訳ではないので安心して下さいと言う事。
但し、相手が被害届を今後出す可能性もある。そうなると警察は児童相談所に報告しなければならず、後が大変な事になるので兎に角相手方の感情を逆撫でしない様に。
自宅から公園が見えるので、放棄しているとは言えないが、変質者などもいるので気をつけてと言う事。
いろんな人がいる。子供の事となると余計。今回の事はそんなに大きな事件ではないのでこれからは気を付けてと言う事を、公園で親同士が話す様な世間話し的な感じで話して帰って行った。

数週間後、保険会社から解決したと言う報告の手紙が届いた。

その後、何度か当事者同士公園で顔を合わせる事があった。その度、2歳児母は、2歳児をうちの子達から離れる様に促した。まるで危険人物から我が子を守る様に。
私は毎日公園へ行くのが恐怖で、早く冬になって欲しいと願った。

保険会社からの手紙を受け取って、そんな日々をいつまで続けるんだ?と考えた時、私は私の責任で子育てをしようと肚を決めた。
誰かに怪我をさせるリスクもあるが、我が子が怪我をするリスクだってあるし、事件に巻き込まれるリスクだって当然ある。
様々なリスクと隣り合わせなのが”生きる事”なのではないか。どんな人にも通用する子育ての考え方なんて無いんだ。

子供が迷惑をかける事があれば本当に申し訳ないと思うし、悲しくなる。親が付いていれば大事に至らないで済む事だってあるだろう。でも、子供に付き添ってあげられるのはいつまで?大人になったって他人に迷惑を掛ける事もある。誰にも迷惑を掛けないで大人になるなんて無理だし、そこになんの意味があるのだろう?生きるって、他人と関わり合うことでしょ?
私の子育て理論は誰に理解してもらうつもりも無い。私と子供たちが築いてきた信頼関係の形なのだから。

以上で、シリーズ終了となります!
長い文章にお付き合い頂きありがとうございました💖

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