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2018年の個人的な映画ベストテン

2018年の個人的な映画ベストテンをnoteに書いてみます。わりと観てもいいと思うやつだよ!

▪️10. シェイプ・オブ・ウォーター(監督:ギレルモ・デル・トロ)

ギジェのエモさが爆発した傑作。異種間愛というそこそこポピュラーなテーマなのに、細部まで行き届いた美術とドギツめの描写力でガッチリ唯一無二な映画になってる。『パンズ・ラビリンス』の切なさゴアふたたび。

主役のサリー・ホーキンス(パディントンのお母さん)も、カタキ役のマイケル・シャノン(新ゾッド将軍)も、「なんで? なんでそこまで?」という部分で、分かる気もしつつ分からない、クリーチャー性を帯びているのがすごくいいです。マイケル・シャノンはいま一番クリーチャーライクな顔ヂカラがあるハリウッド俳優。


▪️9. デトロイト(監督:キャスリン・ビグロー)

トランプ以降のアメリカで、撮られるべくして撮られた感のある映画。1967年のデトロイト暴動の中で起きた、白人警官による無実の黒人拷問殺人「アルジェ・モーテル事件」のイヤ〜な部分を煮詰めて見せてくれます。

『なんちゃって家族』では愛すべきバカ童貞だったウィル・ポールターが、レイシズムを暴走させる若手白人警官を熱演、というかもう彼の顔が脳裏にこびりついちゃうドス黒さ。もう『なんちゃって家族』で笑えないよ!(でも面白いので観るといいです)

しかし元ネタのひとつであろうスタンフォード監獄実験(※各自自習)の信憑性が2018年のいま崩れちゃう偶然もなかなかゆかいです。


▪️8. タクシー運転手(監督:チャン・フン)

こちらも実話ベースの韓国映画。1980年の韓国民主化運動の中で起きた光州事件を、いちタクシー運転手の視点から描きます。主演はみんな大好きソン・ガンホ兄貴。

落差の描き方が実に上手い映画で、特に一旦光州から逃げたガンホが隣町でのどかなお祭りに遭遇する、その距離感が絶妙。あの後、車を停めたガンホの顔。そして決断。素晴らしい人間くささ。

韓国といえばもはや文化的にもほぼ先進国と言っていいと思うんですけど、わずか40年弱前には軍が市民に水平射撃してた国だというショッキングさもありますね。『パッドマン』が21世紀のインドの実話だという驚きに近い。


▪️7. 万引き家族(監督:是枝裕和)

おれが褒めなくても世界が褒めてるカンヌ受賞作。

キャストが全員満点以上を見せてくれる映画って、そうそうないすよ。個人的に松岡茉優さんがスーパー大好きなんですけど、是枝組でもバッチリでしたね。『ちはやふる』の若宮詩織役ほど萌え狂う魅力ではないですけど。あの役、大好きです。


▪️6. 孤狼の血(監督:白石和彌)

今年は大活躍の白石和彌監督作。年内公開なんと3本、待機中もすでに2本の獅子奮迅ぶり、もはや第二の三池崇史とも言えそうな早撮り。『止められるか、俺たちを』も良かったです。

『孤狼の血』は、 正しく東映実録路線の後継者であり、70年代の三角マークが担った不良性感度を役所広司さんが体現している傑作。

そして現代らしく、ミステリ要素による物語の牽引力もあって。今年の邦画最高作クラス。始まって早々に竹野内豊さんの大友勝利オマージュアクティングが繰り出された時点でもう勝ちを確信しました。

役所さん桃李さん竹野内さんだけでなく、ハートに刺さりまくる阿部純子さん、志賀勝化が著しい音尾琢真さん、70年代ニューフェイス感満載の田中偉登さん、ヤクザ映画皆勤賞の黒石高大さん、ピーキー極妻が完璧な町田マリーさん、21世紀の拓ボンこと駿河太郎さんなど脇も最高。

音尾琢真さんは『止められるか、俺たちを』の赤塚不二夫役も満点だったので、白石和彌組をキッカケに大いに飛躍できるのではないかと思っています。


▪️5. 犬ヶ島(監督:ウェス・アンダーソン)

画ヅラコントロール魔人、ウェス・アンダーソンによるストップモーションアニメの傑作。全編水平視点(たまに垂直見下ろし)から撮る画面構成は、ミニチュア実写で作った横スクロールのゲームのよう。アート。アート&キッチュ。『ファンタスティックMr.FOX』で選んだ方向性の到達点。

美術や舞台設定のオリジナリティも素晴らしくて、分かっててやってるズレ日本描写がホントにかわいらしくていいです。「メガ崎市」とかの言語センス、最高じゃないですか。

主人公も犬も、しっかりしたフィギュアを部屋に飾りたい。抑えの効いたいいデザインです。


▪️4. 若おかみは小学生!(監督:高坂希太郎)

今年一番のサプライズ。誰がどう見ても子供向け、下手すると「誰が見るんだ?」枠のアニメなのに、観た後は相手構わずオススメして回りたくなるんだから、高坂希太郎監督には心底参らされました。

手描きなのに3DCGと見紛うほど破綻なく丸顔アニメキャラを描き切るデッサン力、手間を思うとゾッとするレイアウト、そしてズドンとオトナに刺さる物語。マジ作家性に溢れててすごい。アニメ作品で、これ見よがしにせずに季節の移り変わりを表現してるものって、たいがい良い作品だと思っていますけど、これもホントそう。

あとディテールの描写もとんでもなくて、ポルシェオーナーの方が劇中のポルシェ描写を検証したブログとか見ると片鱗を知ることができます(https://t.co/e25CHVMolf)。さすがは『茄子 アンダルシアの夏』で自転車マニアを唸らせまくった高坂監督。


▪️3. 君の名前で僕を呼んで(監督:ルカ・グァダニーノ

2018年の最重要テーマのひとつ、セクシュアリズムの多様性を描きつつも、いかにもなメッセージ性を排したステキ映画。ジャンルに偏りがありそうに見えて、実は普遍力がある物語。これ観て自分が涙するとは思ってもみなかったです。映画としての作りもうまい。こんなにヨーロピアンなのに、よくオスカー作品賞にノミネートされたなーと思います。

憧れとして、なりたい自分としての年上の相手。かつてあったかもしれない、無限の未来を持っていたはずの少年期の相手。お互いに自己投影したうえでの「君は僕だと言ってくれ」。『太陽がいっぱい』にも通じる自己同一化の愛を、ひと夏の物語にパッケージする巧さ。今年最高の恋愛映画ですよね。


▪️2. 悪女 AKUJO(監督:チョン・ビョンギル)

韓国アクション映画、ピンのピン。アクションシーンの撮影が最高すぎて脳が追いついていかないくらいすごいです。すごいofすごい。なんでこんな絵を撮ろうと考えたのかも理解できない。すごい。ストーリーはだいたいでいい。しかも主演女優キム・オクビンさんが超絶きれいなスタイル。すごい。2億点。

韓国アクションなので、バイオレントだしエグ味強いし誰にでもオススメできるとは言えないんですけど、観てるだけで脳汁出るのでホントに楽しいですよ。こういうのはデカいスクリーンで観たいですよね。美人で殺人マシンとか最高じゃないですか。

持論のひとつ「クルマのボンネットに人が乗る映画にハズレなし」を更新する映画でもあります。


▪️1. レディ・プレイヤー1(監督:スティーブン・スピルバーグ)

映画の中には、出来がいいとかいう以前に、パーソナルな部分に刺さってしまう作品というのがありますよね。おれにとってはこれがそれです。あまり一般的な感想ではないと思いますが、大泣き。嗚咽ですよ。こんなに泣いたのは何年振りかというくらい。

元ネタ云々とかは正直スパイスでしかなくて、もっとストーリーの軸の部分で極めてパーソナルな琴線に触れました。

途中まではわりと普通に観てたんですけど、話の軸が現実側の少年たちにフォーカスしてから、ああこれはオトナのためのジュブナイル物語なんだな、と涙が伝いまして。そこからツツーッと流れっぱなし。

で、主人公ウェイドと、世界の作者ハリデーが話すシーンで、ハリデーが最後に、

"Thank you for playing my game."

って言ったときに、自分にとって大事な友人知人、作り手のみなさんの顔がブワーッて浮かんだんですよ。そこで何かを越えました。そこからエンドロール終わるまで、もう大泣き。

すごーくありがたいことに、おれの周りには何人ものジェームズ・ハリデーがいたんです。そういう意味で、すげーパーソナルな映画として刺さりすぎました。みなさん、たくさんのものを生み出してくれてありがとう。

あと物語としても原作の『ゲームウォーズ』よりスリムで面白いのではないかと。そこはさすがスピルバーグ。


以上です。あと、ベストテン入りではないけど良かったなーというやつ。

ちはやふる 結び、デッドプール2、ボヘミアン・ラプソディ、ボーダーライン:ソルジャーズデイ、フロリダプロジェクト、犯罪都市、カメラを止めるな!、など

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