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彼女に振られたので山暮らししようかと思う。#14

まとめ

一生そばにいたいと思っていた女性に振られた。
その時は、身ぐるみを剥がれて石畳の夜の路地に放り出されたような気分だった。
これからどうやって生きていこうか。
途方にくれた迷い人のために夜道を照らしてくれたのが、「山暮らししたい!」という、それはそれはシンプルでささやかな願望だった。

あー、短い夢だったなぁ……。


当初noteを始めた時は、ど素人が山暮らしをするという奮闘記を書き留めておくというのが目的で、それはそれは壮大な物語になるはずであった。
それがまさか、準備編で完結(?)してしまうとは……。
人生はいつだって予想外のことが起こる。
恋を失い、次は夢を失った。神様はヨッシャマンに対して少しばかりスパルタなのではないだろうか。
しかし、私は「いかなる逆境でも打開策が思い付く」というチート能力を授かっているので、そこは感謝しておく。
今は特に何も思い付かないが、そのうちに何か降りてくるだろう。

一言で今の状況をまとめると、持ち家を売って山暮らしするつもりでいたが、離れて暮らしている娘が帰ってきたいというので身動きがとれなくなってしまった。と、まぁそんな感じ。
もちろん、娘とまた暮らせるというのは本当に嬉しい。生きててよかったーと思うほど嬉しい。同時に山暮らしにお預けをくらって落胆しているのもまた正直なところ。人は、相反する感情を同時にもつことができる実に器用な生物だと言える。

山暮らしをあきらめたわけではない。
延期である。娘が自立なり結婚なりするまでの。

しかしながら現時点ではそれは「絵に描いた餅」であって、どうせ絵に描いた餅ならそれを文章にしたって別に苦情はこないだろう。
夢の供養として、その「山暮らし」という餅はどんな味だったのかを夢想してみよう。
そんなものに興味ないという方は………我慢して読んでもらいたい。

私には建築的なスキルは全くない。
ゆえに、ひとまずはブルーシートを我が家と呼ばなくてはならないだろう。その簡易的なテントで生活をしながらツリーハウスを建てる。
朝目が覚めると、今日すべきことが明確にある。それは屋根を作ることかもしれないし、水を引いてくることかもしれない。なんて素晴らしいだろう。
私しか知らない湧き水でコーヒーをいれ、夜はドラム缶風呂に入る。
ぱちぱちという焚き火のはぜる音を聞きながらnoteに投稿するのだろう。
雨音をBGMに本を読む日もある。
果物の木を植え、適当に色んな種をまく。
鶏を放し飼いにして、新鮮な卵をわけてもらう。
家が完成したら、今度は道場を作ろう。
そこは無料で、健康になりたい老若男女が代わる代わるやってきて一緒に稽古をし、米やら野菜やらを持ってきてくれる。私は卵を産まなくなった鶏や雄鶏をさばき、時間のある人はそこで昼食をとっていく。わいわい。
午後はたきぎを集めたり、薪を割ったり、狩りをすることもある。
YouTubeも始めよう。動画を観た、不登校の子供たちが遊びにきてくれたら嬉しい。ただ学校に行きたくなくて引きこもっている子なら山にくるといい。1週間か2週間か泊まっていけば充電になるだろう。
やがて、「ぽつんと一軒家」に取り上げられる。その放送をみた、都会と人間関係に疲れた美女がやってきて私たちは結ばれる。

そんな餅を私は夢見ていた。

こんなにすぐお暇するとは私自身も思わなかったが、これにてシリーズは完結である。
ここまで読んでくれた奇特な方々には心から感謝です。ありがとうございました。

        おわり





さて、次は何を書くかな……。


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