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Embodiment: 写真と身体の一体化

長崎県出身の職人兼アーティスト、今回の写真展で「Embodiment」というテーマを掲げ、作品を展示します。

この展示のテーマは身体性と暗黙知であり、アナログプリントの技法であるCyanotypeを用いて制作しました。さらに、プリントの上に飴細工を施し、身体と写真の境界を曖昧にすることで一体化するような表現を追求しました。

身体性とは、体感覚的である美しさと空間の人間化を表す概念としています。これを表現するためには、写真の質感や質量、そして、プリントした写真空間の人間化を活かすこと。Cyanotypeとは、鉄塩の化学反応を利用した非銀塩写真の一種であり、青色の発色が特徴です。アナログプリントによって作り出される写真の物質感や質量、面影、余韻、を活かし、身体性を表現することに注力しました。

また、暗黙知とはバーバルな言語では表現できない、ノンバーバルな叡智のことです。職人の手の皺や道具の摩擦、傷、汚れ、錆、型や形、雰囲気、音、触り心地、薫り、味、痛み、などは、この暗黙知を表現するのに最適な対象です。これらの表現を写真に昇華することで、観る人に暗黙知を感じ取ってもらえるようにしました。

そして、この作品に特徴的なのが、プリントの上に飴細工を施したことです。飴細工は、いたって衝動的であり直感的な方法で表現しました。飴玉の口の中でじわじわと溶けていき、どこからが飴で、どこからが体なのかの境界がなくなる感覚を再現することで、写真を身体に取り込むような感覚、つまり一体化を表現しており無意識下にある本質に触れています。

写真の物理性に焦点を当て、プリントの質感、重量、物質性を強調しました。 同時に、言葉だけでは表現できない非言語的な叡智、暗黙知の表現を目指しました。 職人の手の皺、道具の傷、サビ、カタチやフォルム、雰囲気、音、触り心地、薫り、味、など、写真を通して、意識下にある知恵を感じてもらうことです。

口の中でゆっくりと溶けていくキャンディーの彫刻は、身体と写真の境界線を曖昧にすることで、この具現化(Embodiment)の感覚に貢献しています。 このような直感的な表現は、まるで写真が身体に吸収されたかのように、作品と一体になったような感覚を呼び起こします

作品と一体となったような感覚と感動は、眠れる森の美女を眠りから解凍する王子の感動にも似ています。

技術の進歩によって身体性の概念を拡張してきたと思いますが、今こそ、私がこの展覧会で表現したかった身体性の本質に立ち返るということです。




個展前のアンケートにご回答いただいた方には、美しいネガ写真をお送りしてます。アンケートは日時を事前に伺うものです。


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