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短編映画『寄り鯨の声を聴く』の覚書 | #3 音楽のはなし

短編映画『寄り鯨の声を聴く』のオリジナル・サウンドトラックが配信リリースされました。

本作の劇伴は、「たまには船にでも乗ろうか」「ROCK YOU」に引き続き、ioniさんにお願いしました。

宅録作曲家/トラックメーカー ioniさん

ioniさんの最近のお仕事、タンタンとクセになります。

ioniさんとは気付けば長いお付き合いで、音楽と映像という関わり方で、これまで一緒に色々な作品を作ってきました。

勢いで作った映像とか、

ioniさんの楽曲のMVとか、

短編映画の劇伴とか、

ioniさんのリリースする楽曲のジャケ写とか、

2022年度にリリースされたepシリーズ


書き出せばまだまだキリがないですが、どれも思い出深い作品たちです。

これまでの作業の進め方は、作品ごとにその都度その都度試行錯誤しながらも、基本的には全てオンラインでのやりとりで完結していました。

劇伴のイメージを言語化するのはなかなかに難しくて、たとえば「ここのシーンは壮大な感じの音楽がいい」と言っても、その「壮大」の感覚が個々人で違います。既存の楽曲をリファレンスに使ったりしつつ、しかし真に作品に寄り添った音楽はまだこの世にないので、最終的にはなんとかかんとか言葉でイメージを伝えないといけません。

当時のやりとりを見返してみると、めちゃくちゃふわっとした伝え方をしていました。ioniさんはそれらを丁寧に掬い上げ、「これはどうだろうか」「こんな感じだとどうか」と、即座にアイディアを投げ返してくれました。
「そこはああ言ったけど実際に映像に載せてみるとやっぱり違ったかも」みたいなちゃぶ台返しの繰り返しにも嫌な顔ひとつせず!(LINEの向こうではホントはしてたかもしれない)、創意工夫を重ねながら本作の世界観を着実に作り上げていってくれました。

そうして出来上がった劇伴の4つの曲は、ひとつひとつがどれも本作に欠かせないかけがえのないものとなりました。

工藤さくらさん

ただ、編集を進めていく上で、本作の劇伴ではどうしても「声」が必要だと感じました。それは主人公ユーキに寄り添ってくれるような人の温度感がある優しさであり、ストランディングしたクジラからの呼び声であるのだろうと思いました。

ふと、ioniさんの「Winter EP」に収録されている「結び目 (feat. Sakura kudo)」という曲を思い出しました。ioniさんの音楽に、工藤さくらさんがボーカルで携わっています。

それ以外にも、工藤さんご自身でリリースしてる楽曲もいくつか聴いてみました。彼女の柔らかい、けれどわずかに寂しげな震えを帯びた歌声が、「寄り鯨の声を聴く」でやりたかったことにこれ以上ないくらいぴったりだと思いました。

ぜひ彼女に歌をお願いできないだろうかとioniさんに相談したところ、工藤さんにもご快諾いただき、無事実現することができました。

収録の日

後日、ioniさんのお宅で歌の収録をすることになり、その場に立ち合わせていただきました。

余談ですが、ioniさんと工藤さんもこれまでずっとオンラインでのやりとりだったそうで、この日が初めての対面だったそうです。各々みんなで初めましての挨拶をしました。

いざ収録が始まり、工藤さんのハミングの最初の音を聞いた瞬間にもう、本作は成功したと思いました。2人が掛け合いながら収録が進んでいき、「寄り鯨の声を聴く」の世界が着実に息づいていく様子に、見ているだけの僕はただただ感激しっぱなしでした。

ちなみに本作は「歌:工藤さくら」とクレジットされていますが、ioniさんも声を添えてくれています。

ioniさん

お父さんに向けたユーキの言葉に合わせて流れ始めるエンディングは、自分で言うのもお恥ずかしいですが、何度観ても何度観ても心を打ちます。ユーキの晴れた表情、お父さんの優しい声、エリコちゃん達のユーキに対する言葉や仕草の積み重ね、それら物語を形作ってきた映像の全てに、さらに音楽の力を相乗することができたのだろうと思います。

工藤さくらさん

自分ひとりでは決して作り出せない、複数人のクリエイティブが合わさることで新たな表現が生まれる瞬間を実感して、とても楽しい時間でした。

ぜひ、改めて「寄り鯨の声を聴く」のオリジナル・サウンドトラックをご試聴いただけたら幸いです。

本作をご覧になったことのある方はサントラから映画を思い起こしてもらえたら、本作を未見の方は音楽を気に入っていただけたらそこから本作をご鑑賞いただけたら、とても嬉しいです。

短編映画『寄り鯨の声を聴く』

■音楽:ioni
■歌 :工藤さくら

■出演: 穂紫朋子 / 久保田メイ / 山口森広 / 岡崎森馬 / 渡邊雛子
■助監督:緒方一智 / ■録音・サウンドデザイン:Keefar  / ■ヘアメイク:浅井美智恵 / ■衣裳:みやび  / ■美術:佐藤陽子 / ■撮影助手:板垣真幸 / ■VFX:大目貴之 / ■3DCGアーティスト:吉田ヂロウ / ■グラフィックデザイン:須藤史貴 / ■英語字幕:武田晴奈 / ■プロデューサー:井村哲郎 / ■製作:ジーンハート株式会社
■脚本・監督・撮影・編集 :角洋介


「寄り鯨の声を聴く」上映情報


●第4回SAITAMAなんとか映画祭
日時:2024年3月2日(土)~3月3日(日)
場所:RaiBoC Hall レイボックホール

●第9回あわら湯けむり映画祭
日時:2024年3月2日(土)~3月9日(土)

●第2回彩の国市民映画祭
日時:2024年3月10日(日)
場所:けんかつ小ホール(埼玉県県民活動総合センター)

●おおぶ映画祭2024
日時:2024年3月16日(土)~17日(日)
場所:愛三文化会館

●YAMATO FILM FESTIVAL2024
日時:2024年3月17日(日)
場所:大和市文化創造拠点シリウス

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