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東北一周自転車旅(25)秋田県秋田市〜湯沢市

東北一周自転車旅
第25ステージ
秋田県秋田市〜秋田県湯沢市(5km・鉄道利用)

今朝も天気は大荒れで、自転車旅どころではなくなってしまった。ただし、もう秋田市のユーランドには延泊できない。既に湯沢市の宿を取ってしまっているから、そこまで電車で行くしかない。

10時半頃に露天風呂に入っていると、雨が止み、青空が見えた。風は強いけど、しばらくは雨が降らずに済みそうだ。すぐに着替えて、チェックアウトし、秋田駅に向かって5km走った。

JR奥羽本線の本数は少なく、次の湯沢行きは、13時45分発だった。まだ2時間あるので、ランチにしてから輪行の準備をしよう。一旦秋田駅の地下駐輪場に自転車を預け、駅ビル1階にある「いさばや」へ。ここも人気のお店のようだ。刺身定食を注文。新鮮で、シメサバとホタテが特においしかった。

秋田も魚がおいしい
駅ビルで見つけた謎のフルーツ、ポポー

それから自転車を輪行袋に入れて、無事電車に乗った。その間は、雨が降ったり止んだり。のどかな田園風景が広がった。爆睡していると、大曲や横手を通過した。

JR奥羽本線

ぼくは旅行会社で6年弱働いたのだが、入社当初から海外ツアーの添乗員をやり、最後の1年(2016年)だけは国内ツアーの添乗員をやった。そして最初に随行したツアーが、冬の秋田と山形の旅だった。大曲のビジネスホテルに泊まり、翌日横手で「かまくら祭り」を見た。幻想的だった。そういう思い出があるから、自転車で大曲や横手を再訪できず残念だった。

途中の「後三年」という駅名がおもしろかった。「あと三年?」と思ったけど、読み方は「ごさんねん」だった。この一帯が「後三年の役」の戦場となったらしい。日本史に疎くてわからなかった。

「何があと三年なんだろう」と思ってしまった

やがて15時半過ぎ、湯沢駅に着いた。すると、外は大雨。宿泊する「民宿 美山荘」までは、徒歩10分ほど。明日また湯沢から電車に乗る可能性が高いので、自転車は輪行袋に入れたままにしておきたい(組み立てるのも、また輪行袋に入れるのも面倒だから)。かといって、すべてを背負って700メートルは歩けない。そういうわけで、まず自転車以外の荷物を宿へ運んだ。宿に着いて「ごめんくださーい」と言っても、中に誰もいなかった。「まあ後で説明すればいいや」と玄関に荷物を置かせてもらう。また手ぶらで駅へ戻ってきて、今度は自転車を背負って運んだ。雨風も強かったし、なかなか大変な2往復だった。

自転車を運んでくると、宿のおばちゃんがいた。「きょとん」とした目で見られるが、「すみません、ご不在だったので荷物を置かせてもらいました。2往復する必要があって」「はい・・・。ちょっと出かけててね。じゃあ、こっちの部屋で宿泊者カードを書いて」とことなきを得た。そして雑談しているうちに旅とお話が大好きな方だとわかってきた。

「え、海外添乗員だったの?」
「はい」
「じゃあイタリア詳しい? 今度行くんだけど、教えてくれない?」
「どこへ行くんですか?」
「ボローニャからサンマリノ共和国へ行きたくてね」
「ああ、じゃあ鉄道でリミニへ行って、そこからバスとかですか?」
「そう!」
「ぼくはリミニから自転車でサンマリノ共和国へ行きましたよ」
「えー!? 山の上でしょ? アレ(自転車)で登ったの?」
「ええ、キツかったですが」
「うそー!? 信じられな〜い!」
「バイクレースが好きっておっしゃってましたけど、F1も好きですか?」
「うん」
「アイルトン・セナとか」
「昔好きだった!」
「ボローニャからリミニに向かう途中に、イモラという街があるんですが、」
「あー、イモラサーキットの!」
「そう。そこに、アイルトン・セナの銅像もあるんです。ぼくそこで記念写真撮りました」
「えー、じゃあそこも日程に組み込むか〜。いろいろ教えてくれてありがとう〜」

そんなこんなで、チェックイン時に30分近く話し込んでしまった。

濡れた靴を乾かす

近くにおいしそうな和菓子屋さんがあるようだったので、部屋に荷物を置いてから行ってみた。「やな田」というお店。

「豆板餅」という塩大福、さつまいもとカボチャと生クリームが入った「おさつ大福」、フルーツスティックを購入。「自転車で東京から来ました」と言ったら、「わざわざうちのお店に」と喜んでくれて、このお店の名物だという、酒粕を使った「蒸しカステラ」をプレゼントしてくれた。身体を張っていると良いことがある。

親切な「やな田」の女将さん

「酒粕を使っているんですね〜。湯沢に両関酒造さんってありますよね」
「ええ、この酒粕は両関酒造さんのものなんです」
「本当ですか!? ぼく、昔添乗員していたんですけど、その際に両関酒造さんを訪ねて酒蔵見学させてもらったんです」
「あら〜、それはそれは」

なんでも話しかけてみるものだ。思わぬ形で経験が結びつくと嬉しい。

宿に戻ってきて、おばちゃんに「『自転車で来ました』って言ったら、和菓子ひとつプレゼントしてくれました!」と喜んで報告したら、「良かったわね〜。インスタントのだけど、コーヒー飲む〜?」と、おばちゃんもコーヒーをプレゼントしてくれた。なんでも話しかけてみるものだ(笑)

どれもおいしかった。薄皮の餅が最高

しばらく宿で作業をしたあと、夕食へ出かけた。近くの「こだま食堂」というお店。見た目は平凡なのだけど、テレビ取材もたびたび訪れる有名店のようで、たくさんのサインが飾ってあった。量が多いことでも知られ、おばちゃんにも「ハーフにしたほうがいいよ」と念を押された。

ここではラーメンやチャーハンなどの基本メニューに全てハーフサイズがある。しかし、そのハーフサイズで普通の店の1人前に近い量が出てくるのだ。ぼくは坦々麺のハーフとチャーハンのハーフを注文。食べ応えがあって、計900円。これは人気店なのも頷ける。

こだま食堂

帰り道にスーパーで明日の朝ごはんとリンゴジュースを買って帰ってきた。青森の王林のジュースを見つけてラッキーだった。

夜、部屋で作業していると、知らない番号から電話がかかってきた。誰だろう?

「もしもし」
「もしもし? 中村さんですか?」
「はい」
「今どちらですか? まだ着きませんか?」
「え?」
「小町荘ですよ」
「え・・・あれ・・・」

なんということだ。。。

泊まる宿、間違えてたーーー!!!!

オワタ・・・

ぼくは今に至るまで「美山荘」を予約したものだと思っていたのだけど、実際に予約したのは同じ湯沢市でも、ここから13km離れた「小町荘」だったのだ。美山荘は宿の候補のひとつで、Googleマップ上でお気に入りの星マークをつけてしまったがために、今朝すっかりここに泊まるものだと思い込んでしまったようだ。予約したのは2日前で、記憶が曖昧になっていた。

さすがに今から移動はできない。小町荘のおじさんには正直に事情を説明し、「本当に申し訳ございませんでした」と深く謝罪した。

こんな大失態をしでかすなんて、自分でも特大のショックだった。あまりに疲れていたようだ。

「今どちらですか? まだ着きませんか?」という電話口の声を聞いた瞬間からの3秒間は、トラウマになりそうだ。ここ数年味わったことのない、心臓が飛び出てきそうなほどの衝撃だった。最初はこんな情けない話、書かずに墓場まで持ち込もうかとも悩んだけれど、案外こういう出来事があとあと大切な思い出になるんじゃないかと思い直して、やっぱり書いておくことにした。

それにしても、なぜこの民宿のおばちゃんは何の疑問も抱かずぼくを泊めたのだろう。最初にひと言「予約してましたか?」と聞いてくれればその時点で気付いたはずなのに、「猫はこっちに6匹、母屋に4匹。たくさん遊んであげてね〜」って、あれは予約客への対応そのものだったじゃないか。

たくさん遊んであげた

<今日のお金>
駐輪場 100円
ランチ 1320円
電車賃 1520円
宿代 5000円
夕食 900円
スーパー 430円

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