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青森の旅(5)津軽鉄道「走れメロス号」で太宰治の故郷へ

旅の最終日。帰りの飛行機は20時25分発なので、たっぷり観光に使える。今日は念願の津軽鉄道に乗るのである。

朝9時に黒竹さんに鍵を返却し、浅虫温泉の古民家「石木邸」をチェックアウト。

まず車で五所川原へ向かった。一般道で行ったため少し時間がかかって10時30分着。でも途中の景色はとても良かった。「こめ米ロード」という、左右に広大な田んぼが広がる気持ちの良い道を走った。左側には岩木山がよく見えて、改めてこの山の素晴らしさを感じた。

なんとなく、鹿児島の人にとっての桜島と、似ている気がした。外から来たぼくが数日この山を眺めただけで不思議なものを感じるのだから、青森の人々にとってはきっと精神的な支えになっている山なのではないか。

津軽鉄道に乗る前に、駅近くにある「立佞武多の館(たちねぷたのやかた)」を見学することに。青森では「ねぶた」と言うが、五所川原では「たちねぷた」と言う。

30分程度でサッと見て駅へ向かおうと思っていたのだが、入った瞬間、度肝を抜かれた。

た、高い!

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青森市のねぶたが横長なのに対し、五所川原の立佞武多は縦長である。しかしこれが想像を遥かに超える高さだった。

なんと22メートル。よくこんなものを作ったものだ。細部まで美しい。これはゆっくり眺めたいと思い、電車を一本遅らせることにした。

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五所川原では明治時代に立佞武多の隆盛を極めたが、電線の普及とともに、背の低いねぷたとなった。しかし、平成になって当時の写真と台座の図面が発見されたのきっかけに、「立佞武多」復活の機運が高まり、1996年に市民有志が高さ22メートルの巨大ねぷたを復元。その2年後の1998年から、祭り名を「五所川原立佞武多」として、約90年ぶりに復活させた。当時の新聞記事と合わせてこのエピソードを知ると、グッとくるものがあった。

そして実際の祭りの映像を見て、なぜだか泣きそうになった。お囃子、踊り、人々の熱気。祭りはいい。やはりこれは一度、生でねぶたを観に来ないとダメだなあと思った。

ランチは「立佞武多の館」のすぐ横にある「めし処 笑福」で「ランチうな重」(1200円)を。これが非常においしかった。おかずも絶品でお得感があった。

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駅前の駐車場に車を停め、津軽鉄道の「津軽五所川原駅」へ。

津軽鉄道といえば冬の「ストーブ列車」が有名だが、夏は「風鈴列車」が運行される。ホームに向かう通路、そして電車内では風鈴の涼やかな音が響いていた。

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「走れメロス号」に乗って、太宰治の生家がある金木駅まで約20分乗った。車窓から広がる田園風景と青空、そして岩木山がまた素晴らしかった。冬の一面の雪景色も風情があるだろうが、夏も良い。

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金木駅に着いて、しばらく歩くと太宰治記念館「斜陽館」があった。立派な建物だ。

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この家で太宰治が生まれ、13歳まで過ごしたという。太宰治の父・津島源右衛門は県内の長者番付で4位になるなど、青森屈指の富豪だったようだ。この680坪の豪邸(庭園を合わせ)を見ると、それも納得できる。2階には見事な洋間もあった。

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太宰治が愛用したマントを着て記念撮影。

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斜陽館の向かいに立つ物産館の名は、「産直メロス」。産地からの運送が遅れたらドライバーの親友の命が危なそうなだけに、鮮度は保証できそうだ。

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りんごジュースを買った。種類がたくさんあって楽しい。

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近くの菓子店「松しま」で、金木名物の「甘露梅」を食べた。餡入りの餅を赤紫蘇で包み、砂糖をまぶした上品な和菓子。

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その後、「太宰治疎開の家 旧津島家新座敷」へ。ここは太平洋戦争の末期、太宰治が戦禍を逃れて疎開した家。斜陽館から徒歩3分くらいの場所に立っていた。彼はここで執筆活動に励み、『パンドラの匣』をはじめ数々の作品を書いた。

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ぼくが津軽鉄道に乗って金木を訪ねてみたかったのは、昨年読んだ沢木耕太郎の紀行エッセイ『旅のつばくろ』の影響である。彼が金木で斜陽館やこの家を訪ねた話が載っていた。太宰治が原稿を書いていた部屋には原稿用紙の置かれた机と座布団があり、そこに座ると文章がうまくなると言われている。しかし、案内人の方が沢木耕太郎だと気付かず、「もしかしたら上手な文章が書けるようになるかもしれないから、とその座布団に座ることを勧めてくれた」というエピソードがおもしろかった。

ぼくもその部屋で記念撮影。作家になれますように。

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太宰治は39歳の若さで亡くなった。そのことをぼくは知らなかった。そして解説を聞きながらさらに反省したのは、ぼくが彼の作品をほとんど読んでいないことだ。『走れメロス』しか知らない。『人間失格』も『斜陽』も、まだ読めていない。ここを訪ねて彼の生涯や内面に興味を持てたから、これから色々な作品を読んでみようと思う。

再び津軽鉄道で五所川原へ戻り、最後に車で「道の駅なみおか アップルヒル」に立ち寄る。アップルパイを買った。一升瓶のりんごジュースも買いたかったが、さすがに断念。1.8リットル700円でも送料で1400円かかるのがなんだかバカバカしい。レンタカーを返却し、青森空港へ。昨晩、無事に帰着した。充実した5日間だった。青森は良いところだ。

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黒竹さん、磯野さん、近さんはじめ、青森市役所「新しい働き方推進室」の皆様にはたいへんお世話になりました。滞在中はありがとうございました!

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