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自明の破局をむかえる朱殷い海を渡り

自明の破局をむかえる朱殷あかぐろい海を渡り 
渚をこえ強まる風沙が沙丘をうごかし 
刻刻と貌をかえる荒地の際を漂う群蝶 
殻殻と崩落し迷蝶が行きまどう廢墟群 
深まる夜に燦めく蝶道の帶を腰にまき
ひと足毎に広がる波紋を辿る先に靜む 
祭船を解體し彼が組みあげる野外舞台 
立ちのぼる篝火の火粉が月を朱く粧い 
海鳴が幾度か乾沙に沁み始まる律動は
識閾を越境し音をたて橋懸はしがかりを先導する 
ぜる焚木、風の奥にたちあがる長弓音

息をつぎ音階を移行する低音提琴の背
に人が立ちその左右にも到着する人人 
小さな者も夕に三脚みつあしの者も掌をかさね 
瘠せこけている者も咽ぶ者も支えあい 
傷つきやすい者もその隣席に座る者も 
篠笛の調子に合せ目を瞑り、太鼓一打 
それぞれの心錘に刻まれる聲をあつめ 
やがてたちあがる生きることを悦ぶ命
の合唱は風を突き水平線の彼岸に在る 
彼らを心よく呼びよせ聲をつくした者
から壇を降り先の中斷点から歩きだす 
それは修羅をこえる寛恕か因果の剣か 
燃えあがるかがりびが半球の残響を増幅する

水際の聲が軌道の二度目の修復を告げ
再び朝の世界に黄道は伸長し鷗は啼く





                 (九行の無言歌をえる)

〔原注〕
・九行の無言歌:読み手が自由に書きたし、読みあげ、本詩集を閉じてください。

【23D02AN】
*画像はImage Creatorにて筆者作製。画像と本文に特別の関係はありません。なお、AI生成画像を無条件に支持するものではありません。

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