果敢な『攻め』は鉄壁の『守り』があってこそ。

ここ数年は会社の事業が安定してきたからか、クライアントワーク以外でもいろいろなことにチャレンジができるようになってきました。

数年前までは基盤が若干脆弱だったため、まずはしっかりとした足場固めをしなければいけなかったので手堅い施策を中心にやっていましたが、ようやく『攻守のバランス』がとれてきたなぁと実感しています。
※弊社役員3名の性格や得意領域が異なるので絶妙な『攻守のバランス』がとれているということもあります。

事業には『攻め』がもちろん大事ですが、それができるのは安心して動ける基盤の『守り』がしっかりしているからこそ、です。攻め続けて疲弊したときに守りが脆弱だと一気に総崩れになり、立て直すこともままなりません。

ここでいう『守り』はキャッシュであったり、販路(クライアント)であったり、固定収益であったり、人材であったり、組織であったり、ということになります。ここがしっかりしてこその『攻め』の活動です。

D2Cdotはプロダクトアウトの発想は極力しないようにしているため、特に固定の『売り物』をもちません。『売り物』をもってしまうと、その商材を売ることが目的(Goal)になってしまい、クライアントの課題解決に必ずしも必要ではない提案をしてしまいかねないからです。
このため、特に現時点では独自に商品開発なども行っていないので、先行投資といえるような『攻め』の活動の大半は人材採用&教育になっています。
※弊社の規模で1年に30名弱も採用しているのは立派な『攻め』だと思っています。
もちろん、その事前には一定の規模拡大が見込めるように販路ごとの『攻め(営業/提案活動)』が発生していることは言わずもがな、です。

事業活動でもっとも費用がかかるのは人件費ですね。30名弱も1年で増えると相当な年間の固定費増になります。
※退職者もいるので純増というわけではないですが。
ただ、それを行ってもなお成長できるという確信があるので実行をすることができています。それも『守り』がしっかりしているおかげです。


『守り』を創りあげていくうえでは『事業のポートフォリオ』を大事にして戦略を立てたり随時チェックを行っています。聞いている限り、意外とここをおろそかにしている会社が多いようなので、ちょっと環境に変化が訪れると総崩れになって会社が傾くということをたびたび目にします。

僕がD2Cdotを経営しているうえでリスクヘッジのためにも(いたって普通なのですが)みているチェックポイント(主に数字回り)を共有することで、経営者やマネージャーの皆様にとってもなにかしらの参考になってくれると良いなと思います。
※細かい数字などは企業秘密なので言えません。すいません。

P/L、B/S、キャッシュフロー等ももちろん適宜チェックをしますが、それ以外(若干その内容も含まれる)のチェック要素を書き出してみました。チェック項目が多すぎたりしてしまうと分析すること自体が目的になってしまったり、面倒になって続かなそうなので、ざっくり大枠を見れる程度のものにしています。

■『流動案件』と『固定運用案件』の比率:
 ⇒企業活動のためには毎月固定の販管費を払う必要があるため、それをまかなうために固定収益が絶必になります。このため『固定運用案件』が全体の比率のどれくらい占めているかは常にチェックします。
※もちろん多ければ多いほど良いのですが、運用案件だけだと事業としては単調なものになりがちなので両方のバランスには気を使っています。

固定収益が多ければもちろん採用にもアグレッシブにいけます。いくら業績がよくても流動案件が多ければ再現性のない数字ということでちょっと攻めに転じるには躊躇します。

■クライアントの『販路』『業種』『特性』と『依存度』:
 ⇒クライアントの業種は複数あった方が良いです。どこかひとつの業種に偏ってしまうとその業界になにかあった際に一気に傾く可能性があります。
※・・とはいえどこか一業種だけに専門特化して突き抜けるやり方もあるとは思いますのでD2Cdotはその方向性ではない、ということで。

これはクライアントごとに対するシェア率にも同じことがいえます。
どこか特定のクライアントの依存度が高いと、そこからの受注が滞ってしまったらどうにもならなくなってしまいます。依存度については1社ごと、上位10社などで全体の何%の売上/売総を占めているかをみます。

『流動』と『固定』をバランスよく受注できるクライアントはありがたいですね。たとえばブランドサイトで固定収益を得つつ、定期的にそれに付随するプロモーションのサイト制作などの受注をもらえるようなパターンです。
※固定収益があると社内のリソースをそのクライアント用に確保することができますし。

『販路』も大事ですね。直接クライアントと取引しているのか、代理店を経由して受注しているのか。どちらも違った特徴があり、メリット/デメリットもあります。販路の比率もバランスよく分散できるように調整しています。

■利益率:
 ⇒利益率は高いにこしたことはないのですが、ある一定以上は超えないようにしています。高すぎると余白がなくなってしまうし、外部パートナーとのつきあいがなくなってしまうと独学だけでやっていくにはいずれ行き詰ってしまうからです。このため、基準となる利益率を設定しておき、それを超える場合は売上拡大の方向に活動の比重をおいて利益率をちょっと下げる動きにしていき、再度リスタートさせるようにしています。

■キャッシュ:
 ⇒なにかがあったときのために数カ月間は販管費を支払えるキャッシュはストックしておきます。クライアントによっては支払いサイトが異なるので、その辺も考慮したうえで適正な金額を算出しておきます。

■前年比:
 ⇒計画比を気にするのは当たり前ですが、前年(できれば2~3年前まで)との比較は随時行います。今年度起きている現象は昨年も起きていたのか、起きているならば今後の傾向は予想できるし、起きていなければさらに遡って似たような傾向の年はなかったかをみます。そのうえで今後の活動を検討するという感じです。

もちろん、企業は成長し続けなければいけないものなので、傾向以外にきちんと成長できているかをみるうえでも前年比はみます。
※手持ちの予実管理表にはどの月になにがあったかトピックスも記載しており、数字だけみて異常値があった場合にはなぜそうなったのかをいつでも確認できるようにしています。

成長をみるうえでの前年比は『%』と『額』の両方でみます。100万の20%成長といわれても額でみれば20万でしかなく、1億の20%成長とはまったく意味合いが違ってきます。一定の金額にいくまでは前年との差額でみて、規模がでてきたら%でもみるようにします。

■案件の種類:
 ⇒受注実績の案件の種類の比率をみます。「サイト制作」「アプリ制作」「事務局」「イベント」「動画制作」・・などなどのシェア率を把握することで、最近の傾向と今後どこを伸ばすべきかを考えます。
明らかにシェアが上がってきてコンスタントに受注ができてきている領域においては専門知識をもった人材の採用を検討したり、独立した部を新設することも検討します。

■ひとりあたりの生産性:
 ⇒社員ひとりあたりの「売上」「売総」「営業利益」もチェックします。こちらも前年と比較して向上しているかどうかをみます。
気をつけなければいけないのは(まだ戦力とはいえない)入社すぐの社員や休職や出向している社員のカウントを考慮する必要があること。単純な人数割りでやらずに実態を把握したうえで検討しています。

また、増員した社員の職種によってもひとりあたり単価は変化します。利益を生みやすいエンジニアを採用すれば売総や営業利益は上がるでしょうが、コーポレートの人材採用だと逆に下がります。しかしどちらも会社にとっては必要な人材なので、ひとりあたり単価が上がった/下がったことに敏感に反応するのではなく、どういう要因でどうなったかをみるのが大事だと思います。


他にもいろいろとありますが、ひとまずはこんなところで。
上記以外にも四半期、半期、通年でチェックする内容などもあります。
また、定量だけではなく定性においてもチェックポイントはありますが、それはまたどこかの機会で記載したいと思います。

いつもどおりですが、上記は弊社においての考え方とチェック内容なので、もちろん他の会社にはその企業ならではのチェック項目があると思います。

テキストに書くとけっこう普通なことばかりなのですが、これを頭にいれてクセのように毎週/毎月チェックするのはなかなか大変だと思いますので、あまりやったことのない方がいたらぜひ手始めにいくつかだけでも始めていただければと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?