見出し画像

付録(大日本帝国憲法全文)【憲法義解】岩波文庫チャレンジ77/100冊目

こちらの記事で、万が一憲法に興味が湧いてしまった方のために全文を掲載。

・大日本帝国憲法全文及び憲法義解の注釈(一部)
日本国憲法は衆議院ホームページから確認できます

大日本帝国憲法
第1章 天皇
第1条:国体
大日本帝国ハ万世一系ノ天皇之ヲ統治ス

初稿では統治でなくシラス(治す)と記載。ウシハク(領く)に対になる概念、力によるのではなく訓徳に基づいて行う統治、を指す

解説より

第2条:皇位継承
皇位ハ皇室典範ノ定ムル所ニ依リ皇男子孫之ヲ継承ス
第3条:神聖不可侵
天皇ハ神聖ニシテ侵スヘカラス
第4条:元首・統治権
天皇ハ国ノ元首ニシテ統治権ヲ総攬シ此ノ憲法ノ条規ニ依リ之ヲ行フ
第5条:立法権
天皇ハ帝国議会ノ協賛ヲ以テ立法権ヲ行フ
第6条:法律の裁可
天皇ハ法律ヲ裁可シ其ノ公布及執行ヲ命ス
第7条:議会の招集・開閉
天皇ハ帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス
第8条:緊急命令(緊急事態条項)
天皇ハ公共ノ安全ヲ保持シ又ハ其ノ災厄ヲ避クル為緊急ノ必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律ニ代ルヘキ勅令ヲ発ス
此ノ勅令ハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出スヘシ若議会ニ於テ承諾セサルトキハ政府ハ将来ニ向テ其ノ効力ヲ失フコトヲ公布スヘシ

立法権の行用は議会の協賛を経と云へるはその常を示すなり。本条に勅令を以て法律に代ふることを許すは、緊急時機のために除外例を示すなり。

第9条:執行命令
天皇ハ法律ヲ執行スル為ニ又ハ公共ノ安寧秩序ヲ保持シ及臣民ノ幸福ヲ増進スル為ニ必要ナル命令ヲ発シ又ハ発セシム但シ命令ヲ以テ法律ヲ変更スルコトヲ得ス

行政命令は常に用いるところにして、緊急命令は変に処するところなり。

第10条天皇ハ行政各部ノ官制及文武官ノ俸給ヲ定メ及文武官ヲ任免ス但シ此ノ憲法又ハ他ノ法律ニ特例ヲ掲ケタルモノハ各々其ノ条項ニ依ル
第11条天皇ハ陸海軍ヲ統帥ス
第12条天皇ハ陸海軍ノ編制及常備兵額ヲ定ム
第13条天皇ハ戦ヲ宣シ和ヲ講シ及諸般ノ条約ヲ締結ス
第14条天皇ハ戒厳ヲ宣告ス
2 戒厳ノ要件及効力ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第15条天皇ハ爵位勲章及其ノ他ノ栄典ヲ授与ス
第16条天皇ハ大赦特赦減刑及復権ヲ命ス
第17条摂政ヲ置クハ皇室典範ノ定ムル所ニ依ル
2 摂政ハ天皇ノ名ニ於テ大権ヲ行フ

第2章 臣民権利義務
第18条日本臣民タル要件ハ法律ノ定ムル所ニ依ル

選挙被選の権・任官の権の類、これを公権とす。
もっぱら本国人の享有する所としてこれを外国人に許さざるは各国普通の公法なり。

第19条日本臣民ハ法律命令ノ定ムル所ノ資格ニ応シ均ク文武官ニ任セラレ及其ノ他ノ公務ニ就クコトヲ得

外国臣民にこの権利を及ぼさざること知るべきなり。

第20条日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
第21条日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税ノ義務ヲ有ス

もし租税の義務を以てこれを上下相酬の市道なりとし、納税の諾否はもっぱら享くるところの利益と乗除相関る者とせば、人々自らその胸臆に断定して以て年祖を拒むことを得む。租税は国家を保持するためにも設くる者なり。政府の職務に酬ゆるの代価に非ず。

第22条日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ居住及移転ノ自由ヲ有ス
第23条日本臣民ハ法律ニ依ルニ非スシテ逮捕監禁審問処罰ヲ受クルコトナシ
第24条日本臣民ハ法律ニ定メタル裁判官ノ裁判ヲ受クルノ権ヲ奪ハルヽコトナシ
第25条日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外其ノ許諾ナクシテ住所ニ侵入セラレ及捜索セラルヽコトナシ
第26条日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
第27条日本臣民ハ其ノ所有権ヲ侵サルヽコトナシ
2 公益ノ為必要ナル処分ハ法律ノ定ムル所ニ依ル

地券雛形に日本帝国の土地を所有する者は必ずこの券状を有すべし。
これ実に史籍ありて以来各国にその例を見ざる所、中興新政の記念たる者なり。

(昔はよく土地を奪われていた事を踏まえる)

第28条日本臣民ハ安寧秩序ヲ妨ケス及臣民タルノ義務ニ背カサル限ニ於テ信教ノ自由ヲ有ス

本心の自由は人の内部に存する者にして、もとより国法の干渉する区域の外に在り。

第29条日本臣民ハ法律ノ範囲内ニ於テ言論著作印行集会及結社ノ自由ヲ有ス

思想の交通を発達せしめ、かつ以て人文進化のために有益なる資料たらしめざる話。

第30条日本臣民ハ相当ノ敬礼ヲ守リ別ニ定ムル所ノ規程ニ従ヒ請願ヲ為スコトヲ得
第31条本章ニ掲ケタル条規ハ戦時又ハ国家事変ノ場合ニ於テ天皇大権ノ施行ヲ妨クルコトナシ

憲法はなお非常の変局のために非常の例外を掲ぐることを怠らず。けだし国家の最大目的はその存立を保持するにあり。(中略)これすなわち元首の権利なるのみならず、またその最大義務たり。

第32条本章ニ掲ケタル条規ハ陸海軍ノ法令又ハ紀律ニ牴触セサルモノニ限リ軍人ニ準行ス

第3章 帝国議会
第33条帝国議会ハ貴族院衆議院ノ両院ヲ以テ成立ス

一院制を取れる者は皆その流禍を免れざることを証明(フランス、1791年及び1848年、スペイン1812年憲法)

第34条貴族院ハ貴族院令ノ定ムル所ニ依リ皇族華族及勅任セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第35条衆議院ハ選挙法ノ定ムル所ニ依リ公選セラレタル議員ヲ以テ組織ス
第36条何人モ同時ニ両議院ノ議員タルコトヲ得ス
第37条凡テ法律ハ帝国議会ノ協賛ヲ経ルヲ要ス
第38条両議院ハ政府ノ提出スル法律案ヲ議決シ及各々法律案ヲ提出スルコトヲ得
第39条両議院ノ一ニ於テ否決シタル法律案ハ同会期中ニ於テ再ヒ提出スルコトヲ得ス
第40条両議院ハ法律又ハ其ノ他ノ事件ニ付キ各々其ノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ得但シ其ノ採納ヲ得サルモノハ同会期中ニ於テ再ヒ建議スルコトヲ得ス
第41条帝国議会ハ毎年之ヲ召集ス
第42条帝国議会ハ三箇月ヲ以テ会期トス必要アル場合ニ於テハ勅命ヲ以テ之ヲ延長スルコトアルヘシ
第43条臨時緊急ノ必要アル場合ニ於テ常会ノ外臨時会ヲ召集スヘシ
2 臨時会ノ会期ヲ定ムルハ勅命ニ依ル
第44条帝国議会ノ開会閉会会期ノ延長及停会ハ両院同時ニ之ヲ行フヘシ
2 衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ貴族院ハ同時ニ停会セラルヘシ
第45条衆議院解散ヲ命セラレタルトキハ勅令ヲ以テ新ニ議員ヲ選挙セシメ解散ノ日ヨリ五箇月以内ニ之ヲ召集スヘシ
第46条両議院ハ各々其ノ総議員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開キ議決ヲ為ス事ヲ得ス
第47条両議院ノ議事ハ過半数ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第48条両議院ノ会議ハ公開ス但シ政府ノ要求又ハ其ノ院ノ決議ニ依リ秘密会ト為スコトヲ得
第49条両議院ハ各々天皇ニ上奏スルコトヲ得
第50条両議院ハ臣民ヨリ呈出スル請願書ヲ受クルコトヲ得
第51条両議院ハ此ノ憲法及議院法ニ掲クルモノヽ外内部ノ整理ニ必要ナル諸規則ヲ定ムルコトヲ得
第52条両議院ノ議員ハ議院ニ於テ発言シタル意見及表決ニ付院外ニ於テ責ヲ負フコトナシ但シ議員自ラ其ノ言論ヲ演説刊行筆記又ハ其ノ他ノ方法ヲ以テ公布シタルトキハ一般ノ法律ニ依リ処分セラルヘシ
第53条両議院ノ議員ハ現行犯罪又ハ内乱外患ニ関ル罪ヲ除ク外会期中其ノ院ノ許諾ナクシテ逮捕セラルヽコトナシ
第54条国務大臣及政府委員ハ何時タリトモ各議院ニ出席シ及発言スルコトヲ得

第4章 国務大臣及枢密顧問
第55条国務各大臣ハ天皇ヲ輔弼シ其ノ責ニ任ス
2 凡テ法律勅令其ノ他国務ニ関ル詔勅ハ国務大臣ノ副署ヲ要ス

大政の責に任ずる者、正当なる軌道に由らしめんとするにあり。もしその道を誤るときは、君命を藉口して以て、その責を逃れることを得ざるなり。
もし大臣にして責に任ずるの義なからしめば、法律はいたずらに空文たるに帰せむとす。

第56条枢密顧問ハ枢密院官制ノ定ムル所ニ依リ天皇ノ諮詢ニ応ヘ重要ノ国務ヲ審議ス

内閣大臣は内外の局にあたり、敏給捷活を以て事機に応ず。而して優裕静暇、思を潜め、慮を凝し、これを今古に考へ、これを学理に照し、永図を疇画し、制作に従事する。

第5章 司法
第57条司法権ハ天皇ノ名ニ於テ法律ニ依リ裁判所之ヲ行フ
2 裁判所ノ構成ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

行政は法律を執行しまたは公共の安寧秩序を保持し人民の幸福を増進するため

第58条裁判官ハ法律ニ定メタル資格ヲ具フル者ヲ以テ之ニ任ス
2 裁判官ハ刑法ノ宣告又ハ懲戒ノ処分ニ由ルノ外其ノ職ヲ免セラルヽコトナシ
3 懲戒ノ条規ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第59条裁判ノ対審判決ハ之ヲ公開ス但シ安寧秩序又ハ風俗ヲ害スルノ虞アルトキハ法律ニ依リ又ハ裁判所ノ決議ヲ以テ対審ノ公開ヲ停ムルコトヲ得
第60条特別裁判所ノ管轄ニ属スヘキモノハ別ニ法律ヲ以テ之ヲ定ム
第61条行政官庁ノ違法処分ニ由リ権利ヲ傷害セラレタリトスルノ訴訟ニシテ別ニ法律ヲ以テ定メタル行政裁判所ノ裁判ニ属スヘキモノハ司法裁判所ニ於テ受理スルノ限ニ在ラス

第6章 会計
第62条新ニ租税ヲ課シ及税率ヲ変更スルハ法律ヲ以テ之ヲ定ムヘシ
2 但シ報償ニ属スル行政上ノ手数料及其ノ他ノ収納金ハ前項ノ限ニ在ラス
3 国債ヲ起シ及予算ニ定メタルモノヲ除ク外国庫ノ負担トナルヘキ契約ヲ為スハ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ
第63条現行ノ租税ハ更ニ法律ヲ以テ之ヲ改メサル限ハ旧ニ依リ之ヲ徴収ス
第64条国家ノ歳出歳入ハ毎年予算ヲ以テ帝国議会ノ協賛ヲ経ヘシ
2 予算ノ款項ニ超過シ又ハ予算ノ外ニ生シタル支出アルトキハ後日帝国議会ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第65条予算ハ前ニ衆議院ニ提出スヘシ

予算を議するは政府の財務と国民の生計とを対照し、両々顧応し豊倹の程度を得せしむるを要す、ために衆議院に最先の特権を付したり。

第66条皇室経費ハ現在ノ定額ニ依リ毎年国庫ヨリ之ヲ支出シ将来増額ヲ要スル場合ヲ除ク外帝国議会ノ協賛ヲ要セス

増額を要するにあたりなほ議会の協賛を要するは、その臣民に負担せしむる租税と密接なる関係を有する。

第67条憲法上ノ大権ニ基ツケル既定ノ歳出及法律ノ結果ニ由リ又ハ法律上政府ノ義務ニ属スル歳出ハ政府ノ同意ナクシテ帝国議会之ヲ廃除シ又ハ削減スルコトヲ得ス
第68条特別ノ須要ニ因リ政府ハ予メ年限ヲ定メ継続費トシテ帝国議会ノ協賛ヲ求ムルコトヲ得
第69条避クヘカラサル予算ノ不足ヲ補フ為ニ又ハ予算ノ外ニ生シタル必要ノ費用ニ充ツル為ニ予備費ヲ設クヘシ
第70条公共ノ安全ヲ保持スル為緊急ノ需用アル場合ニ於テ内外ノ情形ニ因リ政府ハ帝国議会ヲ召集スルコト能ハサルトキハ勅令ニ依リ財政上必要ノ処分ヲ為スコトヲ得
2 前項ノ場合ニ於テハ次ノ会期ニ於テ帝国議会ニ提出シ其ノ承諾ヲ求ムルヲ要ス
第71条帝国議会ニ於テ予算ヲ議定セス又ハ予算成立ニ至ラサルトキハ政府ハ前年度ノ予算ヲ施行スヘシ

1877年北米合衆国において、国会陸軍の予算を議定することを遷延したるがために、3月の間兵士の給養を欠くことを致せり。わが国体の元より取るべきところに非るなり。

第72条国家ノ歳出歳入ノ決算ハ会計検査院之ヲ検査確定シ政府ハ其ノ検査報告ト倶ニ之ヲ帝国議会ニ提出スヘシ
2 会計検査院ノ組織及職権ハ法律ヲ以テ之ヲ定ム

第7章 補則
第73条将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
2 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノニ以上出席スルニ非サレハ議事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス
第74条皇室典範ノ改正ハ帝国議会ノ議ヲ経ルヲ要セス
2 皇室典範ヲ以テ此ノ憲法ノ条規ヲ変更スルコトヲ得ス
第75条憲法及皇室典範ハ摂政ヲ置クノ間之ヲ変更スルコトヲ得ス

摂政を置くは国の変局にしてその常に非ざるなり。

第76条法律規則命令又ハ何等ノ名称ヲ用ヰタルニ拘ラス此ノ憲法ニ矛盾セサル現行ノ法令ハ総テ遵由ノ効力ヲ有ス
2 歳出上政府ノ義務ニ係ル現在ノ契約又ハ命令ハ総テ第六十七条ノ例ニ依ル



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?