まず断っておくと、婚活の話ではない。
この記事は、「未婚女性は既婚女性よりも長生きする」という噂をデータ片手にファクトチェックするものだ。

結論だけ確認したい方は目次から「結論」まで飛んで頂きたい。

噂の出所を探る

私は何度か目にした話だが、中には「未婚女性が既婚女性よりも長生きするなんて初耳だ」という方もいらっしゃるかと思う。

上記は大和証券、東洋経済、Newsweekのウェブサイトに掲載されたコラムである。
どの記事でも男性は結婚すると寿命が延び、女性は結婚すると寿命が縮むという趣旨のことを書いている。
詳しくは各記事をご参照頂くとして、下記に大和証券のコラムに記載されていた分かりやすいデータ部分だけ引用する。

寿命のピークという表現は、各性別・婚姻区分別でそれぞれ最多となる年齢区分のことを指しているようだ。
婚姻区分の並びが男女で違うのは何故かとか、言いたいことは幾つか存在するが、まあ概ねこういったデータを元に前述の「女性は結婚すると早死にする」という説が唱えられている。

そして、これらの記事では、この説を唱えるにあたって厚生労働省の公開する2018年の人口動態調査をソースとしている。
厚生労働省のお墨付きというわけだ。データの信憑性については疑う必要はないだろう。

ソースを確認

とはいえ、「生活保護受給者の71.9%が女性」というデマが内閣府の高齢社会白書をソースとして拡散された事例もある。
念のため、自身でも人口動態調査を確認しておこう。
2018年のデータなのも気になるので、可能なら最新のデータも入手したいところだ。

まず、人口動態統計の概況を確認する。
全体を確認したが、配偶関係別年齢別の死亡者数のデータは見当たらなかった。

荒川和久氏の記事を確認すると、人口動態調査を参考にしたとある。人口動態統計の概況ではなく調査結果自体にあたらなければいけなさそうだ。

e-Statに人口動態調査のデータがあるようなので、こちらで検索する。
「配偶関係別」で検索したところ、以下のDBが発見できた。

こちらで2018年のデータを表示し、大和証券のコラムに登場した”死亡時の婚姻状況別に見る寿命のピーク”とやらを確認したところ、差異はなく、並び順はともかく数字に関しては正しいことが確認できた。

データを見る

以下に女性の死亡時の婚姻関係別の死亡数が最多となる年齢階層のデータを再掲する。

そして、同データをグラフ化したものを併載する。

死別女性の方が、未婚女性よりも死亡年齢のピークが後ろに来ていることが分かる。つまり、結婚しないよりも、結婚後に相手を看取る方が長生きするということになる。

また、死亡時に有配偶であるか死別しているかは、相手が死んでいるかどうかに左右される。

男性と女性で有配偶者数は等しいはずだが、グラフにしてみると有配偶状態で死亡している人数は明らかに男性の方が多い。
これは男女の寿命差によるもので、平均寿命が男性の方が5年以上短いため、男性が先に死亡し、遺された女性は死別状態で死亡することになるわけだ。

つまり、未婚女性よりも、既婚女性の方が長生きするとデータは語っていることになる。
元の話と真逆である。

結論

「未婚女性は既婚女性よりも長生きする」とは言えない。
よって前述のコラムにおける主張は誤りである。

余談

死亡者数が最多の年齢区分として提示されたデータを平均寿命と誤解している例を数件確認している。
平均寿命（ここでは平均死亡年齢のこととする）で比較した場合は、

上記の通りであり、女性全体に比べて未婚女性の方が死亡年齢が早いことが分かる。
ただし、若い世代は未婚率が高い（2018年の初婚の妻の年齢のピークは26歳である）ため、若い世代の死亡者は未婚の死亡時年齢の平均を大きく引き下げてしまう。
よって、平均寿命によって未婚の場合と既婚の場合の寿命の長さを適切に比較することは難しい。

本当は2022年のデータでも比較したかったが、ちょっと疲れたので今日はここまでとしたい。
一応最後にグラフだけ置いておくので、各自参照していただきたい。
未婚女性の死亡年齢のピークが後ろにズレているのが確認できるな……。