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桐島洋子先生のこと

シングルマザーの先駆者

憧れのシングルマザー

桐島洋子先生とは、講演会に3回行ったこと。
中目黒のご自宅の森羅塾に一度お伺いしたこと。
あとは、ひたすら著書を読み続けてきただけのただの読者です。

でもとても私が呼び捨てにできるような存在ではないので、洋子先生とお呼びします。

この本など、何度繰り返し読んだことでしょう。
自分自身がシングルマザーになるまでも知ってはいたと思うのですが、なってからは、もうひたすらに目標でした。

あんな風にかっこいい、素敵な職業をもち、恋をして、しかも子育てを楽しみながら世界を駆け巡るんだ…。

みじめになりがちな、うなだれがちな、弱音を吐きがちな、頼りないシングルマザーであった私は、洋子先生の本を読んでは自分を鼓舞し、視線を上げ、またなんとかよたよたと歩きだすことの繰り返しでした。

洋子先生は昭和12年生まれなので、私の父と同い年、私があの世代のひとはこんなもの・・と思う既成概念を思いっきり蹴とばすご活躍ぶりでした。
本当に、母親でありながら働くことを、満身創痍になりながら切り拓いて下さった方だと思います。

子育てが終わっても、40代の、50代の、60代の…と常にお手本で居続けて下さっていました。

あんな風にかっこよく、優雅に、上品に、勇敢に生きたい。
いつもそう思っていました。

人生は年をとるほど面白くなる

そう、この言葉を座右の銘のように思いながら、私は自分自身の後半の人生を歩き始めていました。

先生ほど波乱万丈ではないけれど、わたしなりの波をなんとかやり過ごしながら、その波を楽しむ境地を洋子先生に学んでいましたから、洋子先生が書いていらっしゃる通り、前半より後半の方が面白くてしかたないです!というような気持ちでした。

先駆者として、洋子先生はつねに星のようにわたしを先導してくださる。
それを北極星のように仰ぎ見ながら、自分の位置を微調整しながら歩けば、足を踏み外すこともないだろう…ぐらいに思っていました。

それが、昨年お子さんであるかれんさん、ノエルさん、ローランドさんとの共著というかたちでこんな著書が出版されました。

穏やかな表情での家族写真ですが、なんと洋子先生はアルツハイマー型認知症であるという、お子さんたちからの告白でした。

まさか…です。
最初はニュースで見て、著書を購読して確認し、それでも信じられないというか、信じたくないというか。

よりによって洋子先生が、認知症とは一番程遠いご人格であるように思い、そして、あんなに健康な健全な、美意識の高い生活を送っていらしたはずなのになぜ・・と。

なぜ?どうして?
もちろん、ご家族が一番そう思われたでしょうし、納得するまでにも時間がかかり、またそれを公表されるということはとても勇気のいることだったと思います。

わたしは去年、この本を読んでからずっとずっとどうして?と考えてきた気がします。

思うようにならない人生を生きること

今日、桐島かれんさんのFacebookで、洋子先生とひ孫さんのご様子、洋子先生とご一緒にクリスマスツリーの飾りつけをされるご様子がご投稿されました。

洋子先生はとても穏やかな笑顔でした。

ご投稿へのコメントには、洋子先生への感謝とかれんさんがこのお写真を公開してくださったことへの感謝の言葉が溢れていました。

私も、本当に本当にありがとうございますとお伝えしたいです。

天才指圧師である増永静人先生ががんで早逝されたこと。
健康で美しい生活をお送りだった洋子先生がアルツハイマー型認知症になられたこと。

わたしにとっては、このふたつのことは根っこで繋がっています。

ひとに人生や生活に指南ができるほどのひとは、健康で長寿であるはずであるという思いこみ。

たばこを吸っていたから肺がんになる…は納得のしようがあるけれど、たばこも吸わず、お酒も飲まないのに、がんになるのは腑に落ちない…というような思いこみ。

色々なリスク要因をどんどん排除していけば、どんどん健康で長寿になるであろうという思いこみ。

自分の臨床の患者さんでも、「私はこんなに健康的な生活を送り、悪いといわれることは一切していないのに、どうしてこんなに体調不良がつづくのか?」と問われたときに、答えられないもどかしさ。

それらはすべて通底しているのでしょう。

洋子先生は、ご自身の現身でもって、「私に頼ってばかりいないで、自分の頭で考えなさい」と仰っているのかもしれません。

長生きすることと同じくらい早逝することにも価値があるのかもしれない。

認知症になることとならないことは、同じだけの意味なのかもしれない。

そして、価値があるとか意味があるということに私は重きを置きすぎているのかもしれません。

もし人の助けを借りないと生活できないような状態になってしまった時には、まず子どもたちに頼るつもりでいます。
もちろん、当分そうならないよう、食事には気をつけ、できるだけよく歩き、いつまでも好奇心を忘れずに楽しく元気に暮らしていきたいと思っています。多くは望みませんが、これからも美しいものや好きな人たちに囲まれていられたら幸せですね。

あなたの思うように生きればいいのよ 桐島洋子

これは、79歳の時の洋子先生のお言葉ですが、いまのこの状態を予測されていたのかと思うほどに、いまはお子さまたちのサポートを受けつつ、お子さま以外の方のサポートも受けながらお暮しのようです。

洋子先生はきっと、美しいものや好きな人たちに囲まれて、今も変わらずお幸せだろうと思えて、私も幸せな気分になる一文です。

結論はありませんが、これからの生き方も死に方もきっと自分の思い通りにはならない、でも、それでも幸せではいられるんだと洋子先生が教えて下さっていると私は思っています。




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