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エピソード83 提灯小僧

83提灯小僧

提灯小僧は、宮城県に伝わる妖怪。その名の通り、
手に提灯を持った少年の姿の妖怪である。
容姿は人間年齢で12、13歳ほどの少年のようだが、
顔は真っ赤で、しばしばホオズキの実の色にたとえ
られる。

雨の夜道を人が歩いていると、後ろからこの提灯小僧
が現れて人を追い越し、やがて立ち止まって後ろを振
り返り、その人の方をじっと見つめる。
追い越された人が不審に思いつつ提灯小僧の前を通り
過ぎて歩き続けると、また提灯小僧はその人を追い越
し、立ち止まる。
この行為を繰り返すのみで、特に人間に危害を加える
ことはなく、繰り返しの挙句には消え去ってしまう。


83提灯小僧 オリジナルストーリー

仙台の城下町を侍が提灯を持って歩いていた。
今夜は雨がシトシト降り侍は少し急ぎ足になっていた

侍:
お奉行の話が長くて、すっかり遅くなってしまった。
雨が雪になる前に急いで帰ろう。

侍はさらに足を速めて歩いていると、前の方にも提灯
の灯りが見えた。
しかも立ち止まっているようだ。
よく見ると提灯を持っているのは12、3歳の男の
子供のようだ。

なんでこんな雨の晩に子供が傘もささず立っているの
か不思議に思えたが、侍は気味が悪いので急ぎ足で通
り過ぎた。
すると今度は小僧が後ろからやってきて追い越して行
った。

侍:
なんだあの子供!さっきまで立ち止まっていたのに、
どうして俺が追い越したら急に追いかけてきたんだ?
訳わからない。

すると、さっきの提灯を持った小僧はまた立ち止まっ
て、侍を待っているようだ。
侍も気味が悪いが相手は子供なので、ムッとして少し
小走りで小僧の前を通り過ぎた。

侍は後ろが気になりちょっと振り返ると、提灯小僧は
さらにさっきより早足で追ってくる、そしていつの間
にか侍を追い越していった。
そしてまた止まっていた。

侍:
な、何なんだあいつ!子供相手にムキになるのも大人
げないが、俺も年に一度の城の速足競争では三年連続
一位なのだ、この名誉のためにも負けるわけにはいか
ない!

侍は今度は提灯を投げ捨て、袴をまくり上げ、草履を
持って駆け出した。
そして提灯小僧の横で、、どうだと言わんばかりにニ
ヤリと笑って通り過ぎた。

今度こそはと侍が後ろを振り返ると、提灯小僧はさら
に早い速度で追いかけてくる、しかも余裕があるのか
微笑んでいる。

よく見ると小僧の足元の下駄には車輪のようなものが
ついていて、それで滑るように進んできた。
そして侍を追い越す時、侍の回りをぐるりと一周し通
り過ぎて行った。

侍:
な、なんだあの履物は!あんなの見たことないぞ!
くそ~あんなの相手では駆け足では勝てない。

侍は立ち止まって息を整えた。
ふと横を見るとたまたまそこには旅籠(はたご)が
あり、馬がつながれていた。

侍:
なんと言う偶然!これは神様が俺に勝てとチャンスを
与えてくれたに違いない!どなたかは存ぜぬがしばし
借りるぞ、勝ったら必ず返しに来るからな。

そう言うと、侍は馬の手綱を持つと馬に飛び乗り走り
出した。
馬はすごい速さで走って行き、提灯小僧の横を通り過
ぎた。
勝利を確信した侍はあっかんべーをしていた。

侍はニヤニヤしながら後ろを振り向くと、な、なんと
提灯小僧は提灯を持ったままニコニコ笑顔ですごいス
ピードで追いかけてくる!

よく見ると提灯小僧は何か板のようなモノに乗ってい
る。
それがすごいスピードで馬に追いつき追い越した。
侍はあまりにもびっくりしすぎて馬から落ちてしまっ
た。

小僧:
大丈夫ですか?ケガしてませんか?ごめんなさい、
いたずらして驚かせてしまって。
これは反重力ホバーボードと言って未来の乗り物なん
だ。
この提灯も自発電LEDといって濡れても関係なくず
っと光っているんです。
本当に驚かせてすいませんでした。

でも僕のことは忘れてくださいね。

提灯小僧は黒メガネをかけると提灯を昼間の太陽のよ
うに光らせると、侍の前から消えていた。  

我に返った侍は城から出た後の記憶が消えていた。

それから半年後、侍は恒例の速足競争に出ていた。
侍はニヤリと笑った。侍は車輪のついた下駄を履い
ていた。

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